ハローキティ初のハリウッド映画化決定にみる一抹の不安 強欲なハリウッド企業【サンリオ】 

3月6日に、サンリオがハローキティ初となるハリウッド映画化の発表をしました。

製作会社は、ワーナーブラザーズ傘下のニューシネマ・ライン・シネマ社、配給はワーナーブラザーズが実施するとのこと。

ワーナーブラザーズはハリウッドの超大手の映画会社で、マトリックスとかハリーポッターなどを配給している会社です。

僕が株主であるアメリカ最大手の通信会社AT&Tの子会社でもあります。つまり僕が株主である会社です。えっへん。

製作先のニューシネマ・ライン・シネマ社は、「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の製作に関与していた会社とのこと。

これだけ聞くと、期待が膨らみますね。

その期待を背景に、サンリオの株価も大きく上昇しています。

しかしながら、僕はこの手のニュースを聞くとどうも大きな不安を感じます。

どうするのだろうか爆死したハリウッド版ドラゴンボールみたいな映画ができて黒歴史になってしまったら。

真面目な日本企業が強欲なアメリカハリウッド企業に搾取され飯のタネにされてしまうのが1番心配です。

販促的な意味では一定の効果は期待できるでしょうし、成功すればサンリオにお金も入るでしょう。

ただ、旨みのあるところはアメリカ企業に絞り取られ、残りかすの僅かな利益しかサンリオに入らない契約を結ばされているのではないかと老婆心ながら(お前はいったい何なんだ)日本人として懸念しております。

ビジネス的なことを言えば、映画化の発表はされましたが、当然ですが明日すぐに映画が公開されるわけではありません。

まだ開発中で公開時期は未定ということなので、公開は2年後かもしれませんし5年後になるかもしれません。あるいは、製作がとん挫して映画化中止となるやもしれません。

そういう意味では、期待だけでサンリオ株は上昇しているだけなので、ここで売るというのも合理的な判断かと思料します。

ハリウッド業界の大手企業と契約書の交渉をした経験のある稀有な人なら共感してくれることと思いますが、具体的な企業名は伏せますがハリウッドの超大手の企業というのは、とても強欲です。

というかアメリカ巨大企業はみんな日本人の発想を超えた強欲さをもっています。

以下、僕はまったく当事者ではありませんので具体的なやり取りは一切知らないという前提で、一般的にコンテンツを用いて他社が映画を製作・配給するときのビジネススキームにそって書いていきます。

今回サンリオがワーナーブラザーズと締結する契約は、サンリオが版権を有する「ハローキティ」を用いて映画の製作・配給をすることを許諾するという、「ライセンス契約書」となります。

用語的には、権利を許諾するサンリオが「ライセンサー」、権利の許諾を受けるワーナーが「ライセンシー」になります。

想定するに、ワーナーブラザーズから、ワーナーブラザーズ側に一方的に有利な(つまりサンリオに一方的に不利な)数十ページもする読むだけで3日かかるような英文契約書がサンリオ側に提示されたはずです。いつものパターンです。

契約書で、サンリオが「監修権」を勝ち取ることができたのか興味があります。

小難しい話をしますが、通常ライセンス契約書では、版権を許諾する側が版権の許諾を受ける側に対して「監修権」という権利を持つのが通常です。

例えば、ドラえもんの版権を管理している会社が、おもちゃメーカーに対して、「ドラえもんを使って玩具を作って販売してよい」という権利を許諾する契約を結ぶときは、版権をもっている会社(ライセンサー)が、おもちゃを作る会社(ライセンシー)に対して、作ったおもちゃにどのようにドラえもんが使われているかを製品として販売する前に見せてくれと、そして、版権社がこれで商品として出してよいとOKしなければ商品として世に出してはいけない。版権社がドラえもんの使い方について修正要求したときはそれに従っておもちゃの仕様を修正しなければいけないといったように、権利者が許諾したコンテンツの使われ方や仕様を決定できる権限を持つのが一般的です。

これは考えてみればそらそうよという話で、企業は自分が権利を持っているコンテンツに対してそのコンテンツのイメージやブランド価値を守る必要があります。

ポケモンを使った映画を製作することを許諾して、それが暴力的な内容であったり成人向けの内容であったりと、権利者が許容できない形態でのコンテンツの使用が勝手になされないように、権利者が自己のコンテンツの使われ方をコントロールするのです。

このコントロールの核となるのが、契約書上の権利としての「監修権・承認権」になるわけです。

逆にいえば、コンテンツの許諾を受けた会社側から見ると、いちいち権利者の許諾を得る手間が面倒だったり、不承認となったときの仕様変更にコストが発生するなど、あまりに強い監修権は排除したい力学が働きます。

この監修権をキティの映画に当てはめると、ワーナーがキティを使用してつくった映画内容について口を出し、3DCG化したキティがあまりにイメージからかけ離れていたり、実写化したキティから可愛さがなくなっていた場合には、サンリオがワーナー側に、もっとキティの描写をこうこう変更してくれと言うことのできる権利になります。

サンリオが監修権をもっていないと、アメリカ人が独自に考えたキティが勝手に映画に登場することを防ぐことができません。そう、ドラゴンボールの実写映画のように。

おそらくドラゴンボールのハリウッド映画は、日本の版権元(集英社?)が製作会社・配給会社に対して監修権を確保できていなかったものと思われます(完全に個人の予想です)。そのため、あのような酷い内容に日本側から誰もストップをかけることができなかったのではないか。

そして今回、サンリオはワーナーから映画内容やキティの使用の仕方に関する監修権を獲得できていないのではと予想します。

なぜか。ハリウッド大企業様が日本企業ごときに監修権を認めるわけはないからです。ハリウッドから権利を勝ち取るのは、並大抵のことでは不可能なのです。

俺がつくりたいように映画つくって俺がやりたいようにプロモーション活動して、俺がやりたいように映画キティの関連グッズつくるから、文句言うな。あ、でも協議にだけは応じてやるよ。広告販促費にたくさんお金使ったから、この金額はあなたに支払うロイヤルティの金額から差し引いとくよ、支払いのときにかかってくる税金分はもちろんあなたが負担してね。

対価のロイヤルティの計算方法も、間違いなくワーナー側に有利に計算できるような契約内容になっているんだろうな。(以上完全に部外者の個人の見解です)。

ハリウッド大企業にいいように日本企業がやられている事例を見ているし聞いているので、どうしても懸念のが大きいです。

ポケモンも今度ハリウッドで映画化され「名探偵ピカチュウ」が公開されるみたいですが、任天堂(正確にはポケモン社だっけ?)がハリウッド企業から「監修権」を勝ち取れているのか、気になります。任天堂でも勝ち取れないなら、どこも勝ち取れなくなってしまいます。

日本のアニメやコンテンツをもっと世界に広めたいというのであれば、アメリカの大手配給会社に日本のコンテンツ会社がいかに不利な契約書を結ばされているか、公取委なのかどこの役所なのか知りませんが、日本の大企業による日本の中小企業の搾取を見せしめ的に取り締まるのではなくて、アメリカ大企業による日本企業の搾取に目を向けないと、利益がアメリカ企業に盗られてしまいますよ。

え?役人は英文契約書読めないから契約書の内容がそもそもわからないだって?

そんなときは僕が1通10万円から業務委託受けますのでご依頼くださいませ。

関連記事

アメリカ大企業が提示する契約書に弱肉強食の米国型資本主義の思想をみる

アメリカ大企業の利益率が異常に高いのは取引先を搾取しているから