JTの株価が再度3000円割れ。ギリアド・サイエンシズとの国内ライセンス契約解消に向けて協議開始

日本たばこ産業(JT)の株価が、また3000円を割れました。今年2月の決算が悪く売り込まれ、その後ずっと低迷しています。

3000円で配当利回りが5%なので、数字のきりもよく手を出したくなる価格です(もう出していますが)。

(出典:SBI証券HP)

JTの1年チャートです。今は2800円から3200円のレンジ相場の様相です。

このニュースが原因で株価が大きく下落したというわけではありませんが、医薬事業でギリアド・サイエンシズ社と締結しているライセンス契約の解消に向けて協議を始めるとの公表がありました。

ギリアドは、以前時の人ならぬ「時の株」となったくらい華々しい上昇を続けたアメリカ大手製薬会社で、絶頂期からは大分株価は下落してしましましたが現在ではそこそこの高配当株となっています。

ギリアドはHIVの抗ウィルス剤開発を得意とする会社で、JTはギリアドの開発した抗HIV薬を日本国内において独占的に商業化する独占ライセンス契約を結んでいます。この契約による医薬事業の収益は大きいです。

アメリカ大手製薬会社のライセンス契約書ってすごそうですね。ボリュームもすごいのでしょうが、自分の向学のために契約書の内容を見てみたいです。

今回は、まだ契約の解消(中途解約)に向けた協議を始めたということなので、契約の中途解約に両者が現時点で合意したわけではありません。契約解約に向けた協議を始めるということに合意しただけです。
当たり前ですが、当初契約書で決めた契約期間を途中でギリアドが放棄すれば契約違反となりJTから損害賠償請求される可能性がありますので、ギリアドはJTの自発的な合意がなければ契約の中途解約などできません。

JTは契約期間満了前の契約終了について自己に不利だと判断すれば契約期間の満了前での契約終了に合意しなければよいだけなので、一方的にJTに不利な条件で契約の中途解除合意は為されないのではと予想します。

報道にもありましたが、かなりの補償金をもらうことになるのでしょう。

JTは、たばこ事業一本足打法からの脱却を狙い、事業の多角化を目指してきました。飲料事業、加工食品事業、医薬事業とたばこ以外の柱をつくろうとしていましたが、結局どれもぱっとせず、たばこ事業で稼いだお金を投資して赤字事業を存続させるという結果になっていました。

飲料事業はその最たる例で、ルーツ・桃の天然水という認知度の高いブランドがありましたが、コカ・コーラ、サントリー、キリン、アサヒと競争する力はなく売上だけは高いものの見事なまでの赤字事業でした。サントリーに飲料事業部門を事業譲渡したのは記憶に新しいです。

結局、たばこ事業よりも儲かる事業をつくるのは極めて困難なので、投資家としては無駄な事業に投資しないで早くたばこ一本足打法に戻してくれよとなります。

他の事業で赤字になるんだったら、配当や自社株買いで株主還元してくれたほうがよっぽどいいですからね。

JTの医薬事業の売上と営業利益の推移

(出典:Answers News HP

2017年の医薬事業の売上は1047億、営業利益は241億の黒字なので、高い利益の出る体制になっています。なお参考までに2017年のJTのたばこ事業の営業利益は5400億円ですので、医薬事業の利益貢献割合が低い状況は変わっていません。

今でこそ医薬事業は黒字ですが、1987年に医薬事業に参入以来2015年まで、2008年を除いて全て営業損失を出していました。

そのため、たばこ事業ではなく医薬事業の話題で少しでもJTの株価に影響が生じると、医薬事業の出世っぷりと投資家の変貌ぶり、医薬事業への期待の高さに時代の変わりを感じてしまいます



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