S&P500(アメリカ株)は毎年7%とか10%上昇しない当たり前の事実~1970年から2018年の過去49年間のS&P500のパフォーマンスから分かること【平均だけ見ると本質が見えない】

アメリカ株は、過去の歴史を振り返るとずっと右肩上がりで上昇してきました。

ジェレミー・シーゲル教授の「株式投資の未来」やハワード・マークスの著作にも、過去のデータを見ればアメリカ株は年率7%とか10%とかといったパフォーマンスで成長してきたとの記述があります。

今回は、ダウ・ジョーンズ・インデックスが出しているアメリカの代表的な指数であるS&P500を対象に、実際に1970年から2018年の過去49年の年別リターンを、配当を含まない場合と配当を含む場合に分けて調べてまとめてみました。

S&P500はニューヨーク証券取引所やナスダックに上場している銘柄からアメリカを代表する選ばれた500銘柄の株価を基に算出される株価指標です。

最高の投資家であるウォーレン・バフェットが、バフェットの妻に対して自分の死後は資産の90%をS&P500に連動するインデックスファンドに投資し、残りの10%を債券に投資するよう推奨していることが示すように、合理的に考えると大多数の個人投資家にとっては何も考えずに毎月積み立て投資でS&P500に連動するインデックスを買っていれば最もパフォーマンスが高くなる確率が高いです。

各種のサイトによってS&P500の各年のリターンの数字が異なる場合もあったのでどれが正確性が担保されている数字なのかはっきりとはわかりませんでしたが、年ごとのパフォーマンスの数字は英語版WikipediaのS&P500の解説ページに挙がっている数字をソースにしています。

それでは、1970年から2018年までのアメリカ株S&P500種の各年の配当なし・配当ありの場合のアニュアルリターンのデータを並べます。

なお後で見やすいようにグラフ化もします。

S&P500の過去49年のパフォーマンスデータ(1970年~2018年)

  西暦 配当含まない 配当含む
1970 0.1% 4.0%
1971 10.8% 14.3%
1972 15.6% 19.0%
1973 -17.4% -14.7%
1974 -29.7% -26.5%
1975 31.6% 37.2%
1976 19.2% 23.8%
1977 -11.5% -7.2%
1978 1.1% 6.6%
1979 12.3% 18.4%
1980 25.8% 32.5%
1981 -9.7% -4.9%
1982 14.8% 21.6%
1983 17.3% 22.6%
1984 1.4% 6.3%
1985 26.3% 31.7%
1986 14.6% 18.7%
1987 2.0% 5.3%
1988 12.4% 16.6%
1989 27.3% 31.7%
1990 -6.6% -3.1%
1991 26.3% 30.5%
1992 4.5% 7.6%
1993 7.1% 10.1%
1994 -1.5% 1.3%
1995 34.1% 37.6%
1996 20.3% 23.0%
1997 31.0% 33.4%
1998 26.7% 28.6%
1999 19.5% 21.0%
2000 -10.1% -9.1%
2001 -13.0% -11.9%
2002 -23.4% -22.1%
2003 26.4% 28.7%
2004 9.0% 10.9%
2005 3.0% 4.9%
2006 13.6% 15.8%
2007 3.5% 5.5%
2008 -38.5% -37.0%
2009 23.5% 26.5%
2010 12.8% 15.1%
2011 0.0% 2.1%
2012 13.4% 16.0%
2013 29.6% 32.4%
2014 11.4% 13.7%
2015 -0.7% 1.4%
2016 9.5% 12.0%
2017 19.4% 21.8%
2018 -6.4% -4.4%
年平均成長率 6.98% 10.22%

続いて、視覚化したグラフです。

グラフには、配当を含まない場合・配当含む場合それぞれについて年平均成長率を出し、年平均成長率の直線を横に入れています。

過去49年のS&P500の年平均成長率は下のような数字になります。

  • 配当を含まない場合:6.98%
  • 配当を含む場合:10.22%

なお、大きくかい離はしていないと思いますがこの数字も100%正しいと保証できませんので、目安として捉えてください。

グラフでは配当を含まない場合の年平均成長率は青色マーカー、配当を含む場合の年平均成長率は赤色マーカーで示しています。

年平均成長率は、単純に年ごとのリターン率の数値をすべて合計して年数で割った平均値の値とは異なります。

年平均成長率(Compound annual growth rate, CAGR)は、特定の期間における成長率から、1年当たりの成長率として算出した幾何平均の値です。

1970年から2018年までの年別リターンの数字を単純に足して49で割り算して算出した数字ではなく、1970年のS&P500の数字が毎年何%成長していくと2018年終値のS&P500の値になるのかといった観点で算出される数字です。

1970年から2018年の49年間の範囲内という限定付きですが、このグラフからは以下のことがわかります。

  1. 年率リターンがプラスかマイナスかで分けると、プラスの年がマイナスの年よりも圧倒的に多い
  2. 年率リターンが年平均成長率である7%(配当なし)・10%(配当あり)に近い数字になることは極めて稀
  3. トランプラリーの株価の上昇具合は特に異常ではなく正常
  4. 2年連続してマイナスのパフォーマンスになるのは稀
  5. 最高年率リターンは1995年の34.1%(配当なし)・37.6%(配当あり)
  6. 最低年率リターンは2008年の-38.5%(配当なし)・-37.0%(配当あり)

以下、それぞれ詳しく見ていきたいと思います。

1: S&P500はリターンがプラスになる年のほうがマイナスになる年よりも圧倒的に多い

これはグラフをみると一目瞭然です。単純にプラスかマイナスか見れば、リターンがプラスになる年のほうがマイナスになる年よりも多いです。

過去49年間では以下のようになります。

リターンプラスの年 リターンマイナスの年
配当含まない場合 37回 12回
配当含む場合 39回 10回

率で言うと、その年にS&P500が上昇する確率は、配当を含まない場合だと75.5%配当を含む場合だと79.5%にまでなります。

配当込みで考えると、勝率8割という大変高い数字になります。

もちろん実際の上昇率・下落率を見る必要はありますが、この数字だけ見るとひたすらロングが正解に思えてきます。

2: S&P500の実際の年率リターンは年平均成長率から激しくかい離する

もう一度グラフを載せます。

年平均成長率のマーカー線と、実際の各年の上昇率・下落率を比べてみてください。

まったく平均値と実際の動きは合致しないという事実がわかります。

各年の実際の年率リターンは、年平均成長率である7%(配当含まず)・10%(配当含む)に近い数字になることのほうが稀で、かなり激しく平均値から逸脱します。

一言でいえば、上がる時は平均を大きく上回って激しく上がるし下がる時はもっと激しく下がるということです。

これはハワード・マークス著の「市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学」にも記載がありますが、文脈は異なるものの彼の表現を一部借りれば、株価のパフォーマンスは振り子の中心点(平均値)を維持できることはほとんどなく、どちらかの極に近い位置にいる時間のほうが長いということです。

例えば、S&P500の年平均成長率7%(配当なし)から平均乖離率20%まで広げたレンジは、5.6%~8.4%になりますが、この平均±20%のレンジにリターンが収まった年は、なんと49年間で1993年(7.1%)の1回しかありません。

平均乖離率50%まで広げた3.5%~10.5%のレンジで広げて見ても、このレンジに収まった年は5回のみです。

株価の具体的な変動をみるときに長期で算出した平均値を持ち出すのはもはや無意味です。

単年で見るとパフォーマンスは平均値から大きく上下した数字になるという事実は、知識としてあらかじめ知っておくと相場を見る上で役立つものになるかなと思います。

S&P500に限らず、日本株、中国株、個別株、他の金融商品についても同様の事実はおそらく該当し、年平均成長率と各年の実際の成長率のかい離は激しいのだろうと推測されます。

平均値だけ見ても実際の株価の動きを正しく捉えることはできません。

平均値にそって穏やかに株価が上昇していくことはないということです。

株価は大きなアップダウンがあるほうが当たり前の世界です。

ダウ理論の波も同じですね。

当たり前の事実かもしれませんが、こうやって実際にデータを見てみると腑に落ちます。

3: トランプラリーの株価上昇はむしろ正常

アメリカ大統領にトランプ氏が就任して以降、特に2017年は株価のパフォーマンスは絶好調でした。

S&P500は約20%もの上昇を見せました。

株価の短期間での上昇により反動を懸念する声もありましたが、過去49年の歴史の推移を見るかぎりは、単年での20%上昇パフォーマンスは、全然異常な数字ではなく、むしろ上昇する年では通常のパフォーマンスといってもいいくらいの数字であることがわかります。

データを見ると、S&P500が20%のリターンを超えた年は、なんと過去49年で12回もあるんです(配当含まない場合)。

確率でいえば、24.5%、ほぼ4年に1度の割合で、これまでS&P500は20%を超える上昇率を記録してきました。

なので、これもハワード・マークスの著書に記載がありますが、データを見れば単年での20%の上昇などむしろ正常運転の範囲です。

1995年から1999年にかけては、配当含まずで34.1%⇒20.2%⇒31.0%⇒26.7%⇒19.5%という凄まじいパフォーマンスを記録したこともありました。(ただ、翌年から3年連続でマイナスのパフォーマンスです)

リーマンショック後から10年間続いている好況相場の終わりを指摘する声も多いですが、1982年から1999年の18年間の長期にわたって株価が上昇し続けたという歴史もあります

この18年の期間、下落した年はわずか2回(90年の-6.6%と94年の-1.5%でいずれも配当含まずの数字)であとはひたすら上昇しています。

楽観的考えをすると、リーマン後の好況相場はまだまだ継続し、長きに渡る上昇相場の後半戦に入ったばかりだという考えも成立し得ます(もちろん長い上昇相場の後には大きな下落相場が待ち構えていそうですが)。

4: S&P500が2年連続してマイナスのパフォーマンスになるのは稀

2年以上連続してパフォーマンスがマイナスになったのは、次の期間しかありません。

  1. 1973年~1974年の2年間
  2. 2000年~2002年の3年間

前者は-17.4%-29.7%、後者は-10.1%-13.0%-23.4%と悲惨な推移でした(いずれも配当なし)。

リーマンショック時も下落したのは2008年のみで、2009年には23.5%上昇しています。

直近2018年は6.4%の下落というマイナスのパフォーマンスだったので、過去のデータを見れば2019年はパフォーマンスがプラスになる可能性のが高いです。

なお単年のパフォーマンスで見ると、リーマンショック時の2008年の-37%は過去49年でワーストの数字です。リーマンショックに次いでワースト2は、1974年の-26.5%です。これはオイルショックの年かなと思います。

まとめ

これまで書いてきたことを最後に簡単にまとめます。

  1. S&P500は上昇する年となるほうが下落する年となるよりも圧倒的に多い
  2. S&P500は各年のリターンを見ると、長期間の総合リターンから算出される年平均成長率7%(配当なし)や10%(配当あり)という値に全く収まらず、上昇時・下落時いずれも平均から大きく離れたパフォーマンスとなる(振り子の中心点には決して位置しない)
  3. S&P500は、単年の上昇率が20%を超えることは通常運転の範囲
  4. 2年以上連続してマイナスのパフォーマンスになるのは稀ではあるが、そうなった場合の下落率は激しい

以上、過去は決して未来を保証してくれませんが、一定の指針にはなりますので、何かの参考にはなるかなと思います。

記事で引用したハワード・マークスの「市場サイクルを極める」は下の本です。

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