3月22日のフライデーナイトは、アメリカ株が大きく下落しました。
ダウ平均は460ポイントもの下落で、S&P500種は約2%下落となり、今年年初以来の下落幅になっています。
年初の暴落以来順調に株価は上昇していたので、もう大半の人は2018年末や2019年年初の株式市場急落の痛みを忘れてぬるま湯につかっていた気分だったのではないでしょうか。
つまり僕はそういう状態だったということです。
株価下落の原因の1つが、米国国債の利回りの逆イールドの発生と言われています。
逆イールドとは、アメリカ国債市場で、短期物の国債の金利水準が長期物の国債の金利水準を上回る状態を指します。
今回の文脈では、フランスやドイツの経済指標の悪化と、アメリカの製造業PMI指数が52.5と市場予測の53.5を下回ったことなどからアメリカ長期金利が下落し、3か月物のアメリカ国債の利回りのほうが10年物の国債の利回りより高くなるという事態が発生しました。
アメリカ連邦準備理事会(FRB)が3月20日に2019年の想定利上げ回数を海外経済の減速を警戒しゼロに引き下げたことも影響しているようです。
10年物国債の金利が3か月物国債の金利より低いといういのは、リーマンショック前の2007年以来12年ぶりのことになります。
なお、2018年の年末の株式市場の急落も逆イールドの発生が懸念となっていましたが、当時は2年物を10年物が下回るという状況が懸念されていました。
今回は、2年物ではなく3か月物国債の金利を10年債が下回るという状況です。このため、通常は2年物を10年物が先行して下回ることが通常なので、これは異常事態だと言うエコノミストもいるようです。
アメリカ長短金利差の逆転は、市場ではリセッションの兆候と見られています。
市場に強く意識されている数字が本当に景気後退や株価暴落の引き金になるとは思わないのですが、逆イールドが景気後退を引き起こす理由は以下のようになります(下の第一生命のレポートを参考にしています)。
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/monthly/pdf/1811_b.pdf
・短期金利が長期金利を上回る状態になると、過去においてその後11か月~25か月後に景気後退局面が訪れている
・金利は、通常は長期金利が短期金利よりも高くなる。金利変動に伴う価格変動リスクと資金回収期間が長いため、長期のほうがリスクに応じたプレミアムが要請されるため。
・逆イールドが景気後退期の兆候と見做されている理由は、市場が将来の景気後退観測を予測することで長期金利が下落した結果として逆イールドが発生しているから
・逆イールドの発生が絶対景気後退や株価の暴落を引き起こすわけでもない。しかし、多数の市場参加者が逆イールドをリセッションの前兆と捉えているため、自己実現的にリセッションをもたらしてしまう可能性がある。
因果関係としては、将来へのリセッション懸念から長期金利が低下した結果、中央銀行の政策金利の影響を受ける短期金利よりも長期物国債の金利が低い水準になるという関係のようです。
実際に直近の株式市場暴落期であるリーマンショック前の2006年9月とITバブル崩壊前の2000年2月に逆イールドが発生していました。
ブルームバーグなんかは、記事で「短期金利が長期金利を上回る逆イールドは、景気減速を予兆する最も頼りになる前触れの1つと考えられるシグナルだ」と昨年12月の暴落時に言っています。
ただもちろん、逆イールドが発生しながら暴落がなかったケースも90年代にあるようなので、必ずしも将来への正確性のある兆しでもないようです。
つまりは逆イールドになったからこれからどうなるかはよくわからん。ただ実際にその後暴落したことがあるから注意は必要というスタンスでしょうか。
万一暴落となっても、過去のケースを見るとすぐにそれが発生するわけではなく一定の猶予はあるので、心の準備をする期間はあります(しても結局大抵は役に立ちませんが)。
逆イールドの発生で暴落が発生するという考えは過去のものであり、今回は問題ないという考えが多数派になるよりはバンカーやエコノミストが将来の景気減速を懸念してくれている状態のほうが逆にそれに直接起因した暴落は起こらないように思うので、市場が懸念しているほうが継続的な株式市場の成長には健全な状態なのかなと考えてしまいます。