株の売り時はいつなのか? 分析が間違っていた時/ ファンダメンタルズの悪化/ より優れた投資先の存在/ ポジションが大きくなりすぎた時

株の売り時は株の買い時よりも難しいと言います。

自分は残念ながら含み益がたんまりと乗った株式の売り時に寝れなくなるほど悩む事態に陥ったことがないので、利益が膨らんで売り時に悩む人が羨ましいです。

投資でよく出てくるキーワードである「経済的な堀(ワイドモート)」とはなんぞやを詳しく解説し、名著と名高い「千年投資の公理」(パット・ドーシー著、鈴木一之監訳、井田京子訳)をパラパラと読み返していたら、株式の売り時について書かれた章があったので、じっくりと読んでみました。

自分は特にアメリカ株だと配当狙いのものが多くそもそも株を売る気がないので、「売り時」についてあまりじっくりと考えたことはありません。

この本は、株を売るときは以下の4つの理由のいずれかからだと言っています。

  1. 初期の分析が誤っていることが判明したとき
  2. 企業のファンダメンタルズが悪化し回復不能なとき
  3. より優れた投資先があるとき
  4. ポートフォリオの中でその企業のポジションが大きくなりすぎたとき

重要な点として、「単純に株価が下がったから売る」のではなくて、企業の価値を問題にしているということです。

この本は株価よりも企業価値を見ろというのを繰り返して主張していますが、株を買うときだけではなく、売るときも企業の価値がどうなっているのかに着目することを重要視しています。

株価だけみて企業価値をみないといつまでたっても優れた投資リターンを得ることはできません。

経験則でも、初めの自分の想定が誤った時に株を売らずにそのまま持っているのは、数年単位(あるいはそれ以上)の塩漬けコース一直線ですね。まあそれでも感情に負ける普通の人間である限り売れないのですが。

米中貿易や世界経済の不透明さから株価が下がって怖いという、投資先の企業自体の価値と全く関係ない理由で株式を売却するなんてことは、愚の骨頂というわけです。

そして、株価の動きだけを見ていても、企業の価値なんてわかるはずもありません。

過去の株価の動きがこうだったと言っても、株価は過去ではなく将来の企業価値に連動して動きます。

ファンダメンタルズの悪化というのは、言うは易し行うは難しです。一般人にとって、企業のファンダメンタルズが悪化しているかどうかを探知するのは著しく困難で、えてして結果論になりがちです。

ファンダメンタルズの悪化といっても、それが永続的な悪化ではなくて一時的な悪化であれば逆にまたとない投資機会となるわけですし、プロのアナリストも半分以上は分析を外すわけです。

特に常に株価が好調な優良企業だと、一時的にファンダメンタルズが悪化した時でもないと割安に投資できる機会もありません。

例えば現在だと配当王のスリーエムの株価がすこぶる不調であり配当利回りが4%近くなっています。

配当王が利回り4%近いとか、好きだけど好きというのがばれないように興味ないフリしているけれどやっぱり好きなあの子的なポジションです。

営業利益率が低下したり、EPSの見通しが悪かったり、環境汚染による訴訟提起の脅威によって株価が低迷していますが、これがファンダメンタルズの一時的な悪化なのか永続性のあるものなのか、自分で考えて結論付けるのはなかなかに困難な話ではないでしょうか。

確率論として、これまで高いパフォーマンスを発揮してきた優良企業の業績が悪化して株価が下落しても、その後立ち直りまた成長するパターンが多いので良い投資機会だと機会的に判断してしまうことも合理性があるように思います。

なお、金利の動きや世界経済の動き、マーケットの短期的な動きについて気にしたりそういった記事を読むよりも、企業についての知識を深めるために企業の年次報告書を読むほうがずっと価値がある行為だとするメッセージは非常に重要です。

本を読んで分かった気になって具体的な実践知に内容を昇華できずにすぐ中身を忘れてまた他の本に目移りしてしまう自分には耳が痛いです。

株価という数字ではなくて企業価値が大事、ファンダメンタルズを重視する方法は、地道に企業の年次報告書を読むのが1番効果があるという主張をするものが多いです。