「東大法学部砂漠」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
東大法学部生のキャンパスライフを形容する言葉として東大法学部生の間で半ば自虐的に使用される言葉です。
「砂漠」との言葉が表しているとおり、東大法学部生の潤いのない枯れた学生生活を指します。
東大法学部生といえば、日本最高峰のエリートで、入学時点で将来は保証され、卒業後に大半はキャリア官僚となり前途洋々の勝ち組人生が待っていると思っている人がほとんどでしょう。
しかし、人生勝ち組になったと微塵の疑いなく東大に入学した大きな希望と野心に溢れた若者の多くが、その後満たされない鬱憤たる思いを抱えて大学生活を送っているのが現実です。
東大は駒場キャンパスと本郷キャンパスと2つのキャンパスがあり、1、2年生は駒場キャンパス、3、4年生は本郷キャンパスで学ぶというのが一般的です。
専門学部は3年から始まるため、1,2年次はみな「教養学部」所属となり、3年生から本郷キャンパスで「法学部」所属となります。
東大法学部砂漠は、この3・4年次の本郷キャンパスでの生活を指します。夏目漱石の小説で有名な三四郎池があるところです。
砂漠と言われる理由は様々にありますが、以下の事情が複合的に作用して華やかなキャンパスライフとは無縁の孤独で寂しい講堂生活を送ることになるためです。
・総合図書館で試験勉強漬けの日々
東大法学部生は、キャリア官僚、大学院進学(ロースクール)、予備試験合格(ロースクールに行かずに弁護士等の法曹になるための試験)を目指す人が多いです。
これははみんな試験に合格しなければなりませんから、在学中もこれらの試験を突破するために猛勉強をします。
大学受験であれだけ勉強して合格して人生勝ったと思ったのに、数年後に大学受験の勉強を上回る勉強をまたしなければならないのです。
ほとんどの学生は、いわゆる「ダブルスクール」をします。
大学の講義のほか、東京リーガルマインド(REC)や伊藤塾、辰巳法律研究所といった試験専門の予備校に高い費用を払って通い、試験勉強をします。
大学の講義なんて受けていても全く国一(キャリア官僚試験)や予備試験の勉強のためにならないので、みんな予備校に通うんです。
東大法学部に入ってもさらなる受験勉強が待っています。
・ポケット六法で埋まる東大総合図書館
東大の本郷キャンパスには「総合図書館」という大きな歴史的な図書館があり、自習スペースも確保されていますが、気持ち悪くなるくらい自習スペースは法学部生によって占められています。
みんなポケット六法を机の上に置き、分厚い予備校のテキストや法律書を机に積み上げてぱらぱらめくりながら法律の勉強をしているんです。
まじきもいんだけどと誰か言ってあげて彼ら彼女らを救ってください。
だいたいそれぞれお気に入りの席が決まってくるので、毎日図書館に行っていると、話したことないけどこの人いつもいるよねという程度の微妙な顔見知り?が増えていきます。
経済学部や文学部の学生がゼミ活動をしたり就職活動をしたり、バイトに精を出したり、友人たちと交友を深めたりと学生らしい生活を送るなかで、法学部生だけは来る日も来る日も講義が終わっては(あるいはさぼっては)かび臭い図書館に籠り、ひたすら試験勉強に溺れます。
・ひたすら大講堂での一方通行の講義
東大法学部の講義は、法学部なので民法とか刑法とか刑事訴訟法とか民事訴訟法とか法律の講義とか、あと政治系だと外交史や日本政治に関する講義もあります。
これら講義が、すべからく大講堂でのインタラクティブ性のない一方通行の講義として実施されます。
数百人が同じ教室に集められ、ひたすら教授が話すことをノートにとるという無味乾燥な授業です。
基本的にこういった受け身の授業ばかりで、学生同士で討論したり演習に打ち込んだりといった形式のものは極めて少数です。
駒場キャンパスの1・2年次は「クラス制度」があり、語学などはクラス単位で行われるのでなんだかんだで高校のクラス的ながやがやした雰囲気や人とのつながりはあるのですが、3年からはクラス制もなくなるので、クラス単位の講義もなくなり、行動が完全に個人単位となります。
また試験勉強を優先しサークル活動にも顔を出さなくなったりそもそもサークルに所属していない人もいたりといったこともあって、人との関係が希薄になり孤立しやすいです。
ゼミはあるのですが、1年や2年単位で行われるものは少数で、基本は半年単位のものが主流です。
半年たてば人間関係がそのまま切れるようなもので、熱いゼミが展開されるとかゼミ合宿とか、「ゼミの○○大」!的な雰囲気のものは極めて少数です。
・人とのつながりのない孤独なキャンパスライフ
東大法学部生は、普通の高校生が高校時代に普通の高校生の青春を送っていたときに、中世の銀の流れが世界史に及ぼした影響を覚えたり、ターゲット1900で英単語を覚えたりとひたすら受験勉強をしていた人間が大半です。
必然、人間付き合い、対人コミュニケーション能力に後発的な欠陥が生じます。
そのためただでさえ孤独になりやすいパーソナリティに加えて、先に述べたようにクラス制がなくなり行動単位が個人となり、無味乾燥な大講堂での写経のための講義と、官僚や大学院の受験のためにダブルスクールを始めるといった事情から、基本的な1日の行動パターンが、講義を受けて図書館で勉強してダブルスクール先の予備校で勉強して家に帰るというものになります。
試験勉強の忙しさからサークルにも顔を出さなくなったり、そもそもサークルに所属していない人もいるので、駒場時代に仲が良かった特定の友達以外との交友関係が本当に広がりません。
試験勉強の辛さと、人とのつながりの薄い毎日の生活の繰り返しに、満たされない葛藤や孤独を抱えながら大学生活を送る人が多いんです。
・東大法学部のリア充
法学部館に「法学部ラウンジ」と呼ばれる学生が集まるスペースがあるのですが、ここでは若者らしい学生グループが集まり、夏休みのハイキングやバイトの計画や海外旅行の計画を話すのではなく、ロースクールや予備試験の勉強をする学生がグループで集まって刑法の学説・判例の議論や、司法試験の過去問の研究が行われます。
このグループが男子学生だけではなく女子学生を含む構成であれば、そのグループの構成員はまわりから「リア充」と見做され、近寄りがたい集団認定を受けます。
いかがでしたでしょうか東大法学部砂漠の実態は?
東大法学部の人は、入学してからも本当に苦労して努力して勉強している集団なんです。
あなたは、クリスマスもお正月も関係なく、ご飯とお風呂とドラマ1時間見る時間以外のすべての時間をひたすら勉強に捧げる生活をたった1年だけでも続けることができますか?
中学受験、高校受験、大学受験、予備試験、大学院受験、司法試験、国家公務員一種試験・・・彼ら彼女らは人生の節目節目でずっとそんな生活をしています。
東大法学部や彼ら彼女らを批判するならば、自分も同じ土俵に立ってからにしてください。
・東大法学部卒業生の進路
東大法学部生の卒業後の進路については以下の記事をご参照ください。
意外にも現在はサラリーマンになる人が多くて、キャリア官僚になる人は予想以上に減少しています。
東大法学部OBが教える東大法学部卒業生の進路(官僚・大学院・民間・無職)【3人に1人はサラリーマン、官僚は21%、17%がなんと無職】