もう6月も迫っており、梅雨の季節となりますね。6月といえば、株主総会です。日本の会社は6月に株主総会をするところが多く、日程も集中しています。
日本株を持っている方は、持ち株の総会に出席される方もいるのではないでしょうか。おみやげももらえるところが多いですね。
僕は仕事で株主総会の運営に一部関与しており、総会が近くなると部全体が準備に追われ慌ただしくなります。
今日は、株主総会の裏側の一部を紹介したいと思います。
カンニングペーパーの準備には万全を期す
株主総会当日は、株主からの質問を通常は議長役として総会の進行係となる代表取締役が受け回答します。この質問タイムは、特に不祥事を起こした企業であれば株主から容赦ない罵声が飛ばされることもあり、事前の回答案の作成には余念がありません。
以前のシャープとか東芝の株主総会では、株主からの厳しい質問や意見が相次ぎましたね。
これら株主のあり得そうな質問を事前に想定して回答案を予め作成するという、想定問答集をつくり暗記するのが想定問答チームの重要な役割の一つです。
多くは過去の積み重ねがあるので、直近一年間の事業状況や社会情勢を踏まえた新規の質問を追加して毎年新たな想定問答集を作成、暗記します。
これは、いわば当日のカンニングペーパーです。総会の開会の挨拶とか、進行の仕方とか、質問への回答とか、中にはすべて理解して暗記している経営者もいるかもしれませんが、通常は会場の株主に見えないように代表取締役のテーブル内臓モニターにすべてアンチョコが表示されています。
想定問答は数百から、時価総額の大きい企業になるとおそらく1000問を超えてくるので、さすがにこれをすべて暗記するのは難しいです。
開会の挨拶や進行の文言だと、そのまま文章で表示されるので、読み上げるだけです。
想定問答チームは、会場の裏で回答をモニターに提示
想定問答チームは、株主総会の会場裏側のスタッフルームに待機し、会場カメラで会場の状態を常に確認しています。
そして株主質問の段階となり、実際に株主から質問があると、該当する質問の回答が記載された用紙やデータを代表取締役の台座のモニターに即座に投影します。
この株主の質問が始まってからのモニターへの投影までは、スピード勝負となり、スタッフルームはさながら、ちはやふる状態です。該当回答のカルタとりの様相となります。
いかに早く社長に回答を提示するか、ここが勝負です。この質問と回答の暗記のために、総会前からずっとチームで訓練を積むのです。
回答文の表示が遅いとか回答文が不適切とか、各方面からいろいろな文句を言われ心折れそうになりつつも100本ノックを受けて暗記します。根性です。
そのため、想定問答チームになると、通常業務がたまっていきかなり面倒くさいのですが、自分の会社を今まで以上に知ることができるというメリットがあります。質問や回答を暗記する過程で、会社の売上やら純利益やら海外進出具合やら株主還元の考えやら取締役会の報酬やら、いろいろな情報を理解していきます。
当日は、だいたい株主の質問の8割くらいは事前の想定問答集でクリアできます。その他の質問は、社長がその場で自分の言葉で回答していきます。
なお万一にそなえ、裏側のスタッフルームには顧問弁護士が待機しており、社員だけでは対応不能の事態となったら弁護士に回答してもらう備えをします。
物言う株主は事前にチェックされています
⭕⭕ファンドなど、会社にとって好ましくない株主は、受付段階から既にチェックしています。株主番号からわかるので、そのような株主が来ると、受付から無線で連絡が直ぐに飛び、会場カメラで座席位置をしっかり把握しています。
これは、総会が荒れるのを防ぐために、質問するために挙手しても可及的に指名しないためです。
まあだいたいこの手の株主は事前に質問状をだしていて、当日は来ないことも多いのですが。
上場コストの高さを感じる
株主総会は会社法上義務として開催しなければならないのですが、総会のためにかけるコストを考えると、本当に無駄遣いだなと思います笑
各役員の人件費や当日の会場コストももちろん、専任の総会担当に加えて部署横断チームで総会対応をするパターンが多いと思うので、事前準備のための人件費も算定したらすごい金額になるでしょう。
それでいて、当日は個人株主の正直言えば全く大したことない質問に5問から10問回答してそれで終わりです。
通常は、総会前に各議案の過半数の賛成も得ているので、議案の可決も決定しており、形式だけの審議になります。
機関投資家は、IRチームが年間通じて都度インタビュー対応しているので、総会にきて質問するというパターンはレアだと思います。
総会にかけるお金を事業や配当に使った方が実際は株主に優しいことでしょう。
まあ総会準備は楽しい仕事なので、今年も頑張りたいと思います。
もし総会に行かれた場合、想定問答集に用意してないような、鋭い質問をすると、裏側のスタッフルームでは話題の株主となるかもしれませんよ。
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