アウトソース(外部委託)を増やせば増やすほど間接部門が疲弊する

会社の仕事を外注先にアウトソースするのか、外部委託はしないで内製化で純度を保つのか、とても難しい問題です。どちらが正解で不正解という白黒が出る問題でもありません。

余分なところは外注先に投げると効率的に見えますが、外注先ばかり使っているとノウハウが社内に蓄積されず、秘密情報の漏洩リスクもあります。

外注先の社員がSNSで秘密情報の一部を漏洩してしまったというどうしようもない事案は、それなりの頻度で法務部に上がってきます。

秘密保持義務を定める契約書違反かつ営業秘密の漏洩に該当し損害賠償義務を負う危険性がありますので、絶対にしないようにしましょう。

会社のコアとなる事業以外は全部アウトソースばかりして結局社内に何の技術も残らなくなって外注先に逆に技術を奪われてしまい衰退した企業の例が、著名なビジネス書である「イノベーションのジレンマ」に記載されていたように記憶しています。

外部委託を使用する大きな理由の1つは、社内の人件費の問題です。

正社員として採用してしまうとクビにできず人件費が増加するので、融通の利く業務委託を使用するというケースが多いように思います。

人的リソースが足らないから外注を使うとうパターンも多いです。

僕は事業部門の人間ではないので、コストの問題はよくわからないのですが、これまで渡り歩いてきた会社での事例を見ていると、外注先を使用して開発した商品やサービスよりも、内製によって開発したもののほうが優れたものが多かった印象を持っています。

なので、会社が新規に始める商品・サービスの開発で外注先の関与が多いと、ああこれダメだなと反射的に思ってしまいます。

あまり意識されていない問題ですが、外注先が多くなると間接部門のコストが上昇します。

具体的には、法務部門の対応工数は間違いなく上昇します。なので僕的には外注は仕事が増えるので嫌いです。

まずは契約書対応です。

外注先を使用するということは、外注先と業務委託契約書などの契約書を締結しなければなりません。

契約書が必要になるということは、誰かが契約書を作成しなければならないということです。

その誰かとは、法務部門の人間です。多くは雛型で対応するものの、契約書の文言を巡って相手方と交渉になることも多いので、契約書の修正対応や文言調整の工数が増加します。

また契約書の作成やレビューは入り口の問題ですが、外注先の数が増えると、どうしても外注先とのトラブルが発生する可能性も増えます。これは不可避です。

外注先が納期までに納品してくれない、外注先の成果物のクオリティが悪いから対価を減額したい、外注先が当社の秘密情報を漏洩した、外注先が当社の顧客情報を漏洩した、外注先が倒産しそうだ、外注先の中心メンバーが突然辞職して業務継続が不可能になった、外注先が勝手に再委託をしまくっていったいどこの会社が実際に作業を実施しているのかわからない、外注先を訴えたい・・などなど、大小問わず取引あるところに必ずトラブルが発生します。

そういったトラブルの相談先となるところが法務部門です。

誰も後処理したくない面倒くさいトラブル事例の対応を最後に依頼される損な社内部門は法務部門です。

外注先との契約締結という入り口から、契約期間中、そして契約終了の出口に至るまで、対応工数が増え、外注先が増えるたびに業務量が増えて人手が足らなくなります。

新規事業で外注先が増え、事業自体は好調で売上は上がっているものの、契約書の数が増えすぎてマンパワーが足らなくなり、法務部の人間の残業が目に見えて増え疲弊する人間ばかりとなり、ストレスを抱えた部員ばかりとなって余裕がなくなりみんなイライラして部内の人間関係も悪化していくという惨状を経験したこともあります。

ということで、こちらの仕事量を減らしてもらうために、外注を使用せずにちゃんと然るべき人を社員として採用して内製化を進めて欲しいなあと日々思いながら仕事をしております。

個別最適の結合体は、全体最適にはならないことのが多いですね。