本日、NTTドコモの第27回定時株主総会に参加してきました。
僕は仕事で自社の株主総会に関与することがあるのですが、株主の立場として株主総会に参加するのは初めてだったので、遠足気分でうふうふでした。
四谷のホテルニューオータニで実施したのですが、駅前かスタッフが株主総会の案内看板を持って案内を実施してくれ、入り口には報道陣もいました。100株しかもっていないのが申し訳ないくらいスタッフが慇懃無礼で、買い増しの決意をいざなわれました。
超大企業だけあって第3会場まで用意されており、第1会場の巨大スクリーンを使用した先進的な総会でありました。多数の役員を間近に見ることができる数少ないチャンスでもあります。
来場している株主は、中高年以上の男性が圧倒的多数の印象です。スーツを着たサラリーマン風の方もおり、総会に行ってから出勤するのでしょうか。
僕は今日は1日有給です。
株主総会の内容
株主総会は通常、以下の3つの事項から構成されます。
- 報告事項
- 決議事項
- 株主質疑応答
報告事項
報告事項は、今期の2017年4月1日から2018年3月31日までの事業結果の株主への報告です。
事業報告、決算報告と、会計監査人及び監査役による計算書類の監査結果の報告が実施されます。
決議事項
決議事項は、たいていは配当の決議と、取締役と監査役の任期が1年であることが多いことから、取締役及び監査役の選任が決議事項となります。
株主質問
総会の目的事項について(実際はもっと広い質問が出るのですが、法令上は総会の目的事項から外れる事柄については法的な回答義務は会社にありません)株主から質問をし、役員がこれに回答します。
1番面白いパートです。経営が悪かったり、不祥事があったりすると、株主から非常に厳しい質問が出たり罵声が飛びます。
NTTドコモの総会の決議事項
第1号議案 剰余金の処分の件(配当金額の決議です)
第2号議案 取締役14名選任の件
第3号議案 監査役1名選任の件
開会の言葉
議長役を務める代表取締役社長の吉澤氏から、6月18日に発生した大阪の地震についてお悔やみを申し上げるとあり、地震の影響で一定地域で通信サービスが利用しにくくなったことへのお詫びがありました。
吉澤社長は、外見だけ見ると非常に穏やかな人格者に見えます(社内の評判はそうでなかったらごめんなさい)。物腰も柔らかく人前に出すのに適した方ですね。
報告事項
モニター動画で事業報告
今期の事業の経過と成果を、会場前方のモニタースクリーンの動画でナレーション付きで紹介します。
さすがドコモさんですね。お金かかってます。株主を引き込んで飽きさせません。うちの会社は社長が普通に喋るだけなのに、劇場みたいです。かっこいい。
その中で、自己株式を3000億円ほど取得したこと、また配当額を20円増配して80円から100円に増配したことを報告します。
社長から今後の事業方針の説明
次いで、社長から2018年度の事業方針の説明がありました。
中期戦略2020「beyond宣言」という戦略の説明です。画像は、NTTドコモHPから引用しています。
2020年のさらにその先を見据え、ビジネスパートナーの皆さまと共にお客さまの期待を超えることにより、お客さまへの驚きと感動の提供、パートナーとの新しい価値の協創の実現をめざします。そのために、これまでの自分自身が変わり、5Gで豊かな未来を作っていく、という意味をbeyondに込めました。
お客さまには、お得や便利、そして、楽しさ・驚き、満足・安心といった価値や感動を、パートナーの皆さまとは、「+d」の取組みを通じて産業への貢献、社会課題の解決、そして商流拡大といった新しい価値の協創を、実現していきます。(出典:株式会社NTTドコモHP)
社長は2020年にサービスを開始する第5世代移動通信システムである「5G」についても触れ、以下のようなことを述べていました。
- 3G,4Gを導入したときには、世の中からはこんなに速い通信サービスが必要なのかという意見が多かった。しかし実際サービスが始まればFacebookその他のITサービスが加速的に普及した。ネットワーク構築が先で、その後にサービスが追いつくという展開だった。
- 今後の事業は、幅広いパートナーとの「協創」が重要。1社でできることはもはや限られている。具体例として、建設機械大手メーカーKOMATSUとの、建設機械を5Gにより遠隔制御する共同の取り組みについて紹介。
- その他にも幅広いパートナーとの協創に取り組んで生きたい。
さらに、「my daiz」というドコモ制作のAIエージェントサービスの説明がありました。
ユーザーの行動履歴を学習し、先読みしたさまざまなAIサービスを提供してくれるものみたいです。
最後に、会計基準を今期からIFRSに変更した旨の説明しました。
監査役からの監査報告
監査役から、会社の事業報告と計算書類は適法、適切に実施されている旨の監査報告がなされます。定型句の棒読みでした。定型句の棒読み以外述べることがないパートなのですが、これがあとで株主質問として問いただされます。
監査役が自ら監査報告を読み上げるとは思っていなかったので、ここは意外でした。召集通知に監査報告を記載して終わりのパターンが多いと思っていました。
独立社外取締役からのコーポレートガバナンスの状況報告
遠藤独立社外取締役より、ドコモのコーポレートガバナンス(企業統治)の状況についての報告です。
一般株主の利益を代表できるよう2名の独立社外取締役体制となっており、コーポレートガバナンスは有効に機能していると、また中堅社員や若手社員と接して触発される機会もあり、よい環境だそうです。
※ちょっと脱線 社外役員について
法務担当者として、うんちく語らせてください。
社外役員は、生え抜きの内部役員の暴走をけん制し、透明な意思決定を担保する目的で導入されますが、社外役員を入れると会社の内部コストは増大します。
当たり前ですが、通常社外役員は会社のことは何にもわかっていません。それでいて、月1回会議にでて1000万とかもらうコスパ最強の職業です。
経営者の退職後の就職先として社外役員のポジションは機能します。
金融会社勤務の人が通信会社の役員に突然なるようなものなので、各部署のレクチャーをしたり、会社を知ってもらうために社員とのインタビューを実施したりと、取締役会や商事法務を担当する内部社員の対応コストはそのために増大します。
ぶっちゃけ、めんどいと思います笑
東芝の不祥事を誰も見抜けなかったように、通常会社の細部を何もわかっていないし基本は受動的で能動的に情報を取りに行くポジションではないので、不祥事など見抜ける能力もないことが実は大半ではないかと僕個人としては社外役員には否定的です。
もちろん、中には優れた社外役員もいることと思いますが、とても貴重な存在だと思います。
株主質問タイム
お待ちかねの株主質問は、全部で20個ありました。同一株主からの複数回の質問は複数回としてカウントしています。
着席したままの株主質問
通常株主質問は、指名された株主が席から立って質問するケースが多いと思ったいますが、ドコモの総会は、着席したまま質問してくださいということでした。役員もみんな着席したままです。
吉澤社長からも説明があったのですが、形式にとらわれず率直に質問したり意見を交わす場とする趣旨で、着席質問をお願いしているとのこと。すばらしい。
過去の習慣にとらわれて昔から作法を変えない世の多数の会社もこれに倣ってほしいものです。
また、株主質問中は、議場前方に着席している(たぶん)14名いる役員のうち、質問に回答したい取締役が自発的に(もちろん事前の総会準備で担当分野は各自決まっているでしょうけど)その場で手を挙げてそれを社長が次々に指名するというスタイルがとられていました。
スタイリッシュすぎた・・。
あ、あたらしい・・・!かっこいいよドコモ! うちの会社の総会は社長がひたすら答えるだけだよ!
総会全体を通じて感じましたが、ドコモさんは可能な限り各役員が直接株主に話す機会をつくろうというオープンなスタンスを感じ、ともすれば議長である社長だけが喋って質問に答えて他の役員は棒立ちで下を見て座っているだけという総会も多い中で、とても好感が持てました。
実際はわかりませんが、株主との対話を重んじる企業というイメージの醸成に資している総会です。
本当に旧国営会社だったんですか御社は!?
とてもユーザーフレンドリーでサービス精神あふれています。
では、具体的に質問をすべて紹介します。なるべくポイントは拾っているつもりです。
質問1
今回の初めてドコモの総会に参加して、ドコモが様々な取り組みにを実施していることがわかり、安心した。買い増ししてもよいかなと思いました。
海外戦略について聞きたい。過去海外事業ではうまくいかないことが多かった。今後はどうするのか。特にアジアでは安い携帯電話が普及しており、希望が持てるのでは
回答:副社長の中山取締役
ご指摘のように、かつて海外事業では、苦戦・撤退した過去がある。アジアでは、フィリピン、台湾の会社に出資している。
グローバル戦略として、以下の3つに注力している
- グローバルコミュニケーションビジネス(ローミングなど)
- グローバルプラットフォームビジネス(キャリア決済を40を超える国で実施)
- グローバルスマートライフビジネス(dポイントの海外展開)
質問した株主さんの、「買いましてもいいかな」という発言でくすっとしました。
こういう発言が出るのが、この時点までの総会の雰囲気を物語っています。実際、僕も総会に出て、この企業安心して持てるなという安心感を感じていました。ドコモからすれば、作戦成功ということなのかもしれませんね。
質問2
5Gのメリットは、レスポンスが速く低遅滞ということだが、コマツとの取り組み以外の事例を教えてほしい。
回答:中村取締役
- 新日鉄ソリューションズとの共同実験を実施している。高熱が発生する危険な現場で、ロボットの遠隔操作の実験をしている。危険な作業場だからこそ、5Gの低遅滞、高速通信が大事になる。
- 和歌山県立医科大学と過疎地の遠隔医療の取り組みをしている。最近の医療は、MRIやCTスキャンなど多数の映像を使用する。遠隔でも高度な医療を提供できるよう取り組んでいきたい。
質問3
親会社のNTTと比べて、株価がずっと低迷している。分割してからもずっとだ。なぜなのか。
回答:佐藤取締役
ご心配をお掛けし申し訳なく思う。株価はいろんな要因で形成されるが、現在は株主様の期待に添えていない。
増配と自己株式取得という株主還元で評価されたい。
beyond2020により事業拡大し、営業キャッシュフローを拡大し、企業価値向上に努めたい。
ご高齢の、ずっとドコモ株を保有していると思われる株主様からの質問でした。株主としては、ずっとやりきれない思いを抱えていて、1番聞きたい質問だと思います。経営陣はがんばってください。何十年とずっと含み損抱える株があれば、総会会場で暴れていいと思います(だめです)。
質問4
社外取締役を増やしたらどうか。透明性を高めるべきでは。
回答:丸山取締役
現在2名の社外取締役体制であり、現在でも十分透明性は担保されている。
コーポレートガバナンスコードにおいて、社外取締役増加に関する内容があるのは理解している。当社を取り巻く状況を注視して、今後対応して参りたい。
質問5
今期の自己株式取得の金額の明示がないがどうなのか。
回答:佐藤取締役
18年度は、中期的な戦略を重視しており、投資を重視している。営業キャッシュフローが鈍化する予定。株価やキャッシュの状況を見て、機動的に自己株式取得を実施したい。金額は未定。17年は3000億だが、それまでは5000億規模で実施していた。
自己株式取得は、今年はあまり期待できなさそうですね。
質問6
役員のサクセッションプランはどうなっているのか。また、独立社外取締役の役割は?
回答:丸山取締役
将来の役員候補者は、各種会議体の参加を通じて知見を深めてもらう。役員研修プランもある。
回答:村上社外取締役
通信業界は技術革新による環境の変化が大きく、求められるリーダー要件も変わっていく。どういう人材要件がよいかというところで貢献したい。
役員候補については、事前に社外取締役に説明があり、相談もされているため、株主の立場も反映されている。
質問7
昨日大阪で地震があり、災害対策は大事であるが、収益に結びつかないのでは。災害対策の設備投資の額は?
回答:田村取締役
平常時と有事の2つの取り組みをしている。信頼、コスト等のバランス重視して対応している。マニュアル整備や自衛隊との連携もしている。
設備投資は全体で5700億円。これはユーザーに快適さを提供するため。災害対策の設備投資いくらと特定するのは難しい。災害対策に特化しておらず、平時の投資が災害対策にもつながる。
質問8
25年ドコモ株を持っている。他の総会でも同じことを言っているが、役員の頭数を揃えているだけで、仕事してない。7人くらいでよい。監査役は棒読みだし、犯罪よそれ。東芝は監査役が投げちゃった事例。
回答:吉澤社長
大変厳しい質問でございます・・。
会場笑
回答:中山取締役
さぼっている者はおりません。皆必死に職務に当たっております。監査役の報告が棒読みと聞こえたらならば申し訳ない。これからもがんばりますので、応援をよろしくお願いします。
質問9
(質問8から続いての発言)リーダーがむちゃくちゃになっている
回答:吉澤代表取締役
リーダーとしての責任を果たす。先を読む経営をし、コンプライアンスにも注力していきたい。株主様からもしっかり見ていただけるようにしたい。
会場拍手!
かなり厳しい株主様からのご意見でした。業績よくてもこういう質問が出るのですね。
質問10
2012年7月からNTTファイナンスに債権譲渡して通信料を回収してもらっているがなぜか。ドコモグループではない会社であるが。
回答:辻上取締役
通信料金の回収をNTTファイナンスに委託している。これによる収支、キャッシュへの影響はない。回収コストも委託先に移る。
質問11
貸借対照表の長期未収入金の中身は?
回答:佐藤取締役
端末代金は大半が割賦で代金を支払ってもらっているので、そのうち、1年を超えるものが長期未収入金に入っている。
質問12
昨日の大阪地震で、壁が崩れるという事件があった。ドコモはタワーとか屋上とかにアンテナ設備があるが、対策とメンテナンスの状況は?
また、工場見学のような、株主のための安全対策の現場の見学会などを実施してもらいたい。
回答:田村取締役
基地局の鉄塔設備は、震度6強に耐える構造。法令に則った設備です。安全基準は強化して対応している。
回答:中山取締役
召集通知と一緒に配っている「株主通信」に、施設見学の株主参加イベントがあります。
(この後、実は紹介された「株主通信」はまだ手元になく今後株主に配布する書面であると訂正が入り、会場爆笑)
質問13
ドコモユーザーです。ポイントちょっとつくとか、コマツのショベルカーの事例だけでなく、ソフトバンクみたいなバーンと目に見えるパッとした施策はないのか?ドコモはいつも後だしに見える。
回答:辻上取締役
長く利用している人に「ドコモ割り」のポイントサービスを実施している。dポイントの進呈、還元を実施。利用実態に応じた還元策を実施しています。若い人はスイーツ好きだから食べ物で還元など。これからも考えて頑張っていきたい。
質問14
ドコモダケが好きです。旅に出たらしいがどこに出たか教えてください。
会場笑
回答:中山取締役
ドコモダケを愛してくれてありがとうございます。調べてHPに載せます(笑)。
質問15
顧客対応マニュアルを刷新すべきでは?ユーザーが反発を覚える顧客対応を実施したクレーム処理の事例がある。
回答:辻上取締役
顧客対応で不愉快なことがあったご指摘と理解。お詫びします。ユーザーを恫喝したり相手にしないといったマニュアルは一切ないしあってはならない。
事例を伺って対処したいので、相談カウンターに足を運んでください。
質問16
NTTビジネスと関わりがありずっとドコモを利用している。楽天参入への対応は?
回答:大松澤取締役
楽天さんとの協議内容は守秘義務があり申し上げられない。楽天はMNOとして自らサービスを展開する。ビジネスベースで何らかの要請あれば、対応したい。
質問17
dポイントの利便性が悪い。ANAのマイレージに連携してほしい。
回答:村上取締役
ポイントは貯まりやすくなっている。ローソン、マクドナルド、マツモトキヨシも加盟店になっている。加盟店網を拡大していきたい。貴重なご意見として承ります。
なおJALとはポイント連携しております。
ここで、議長からあと質問はあと2名とのアナウンス
質問18
ドコモの働き方改革がメディアで取り上げられており、好印象。ただ、代理店の本社管理職と話す機会があり、ブラック、パワハラ、80時間の残業ということだった。ドコモの代理店だと、社員の過労死となったらブランドイメージや株価への影響もある。
回答:辻上取締役
ショップのスタッフには働き方改革は必要と思っており、月に1度の定休日導入や年末年始の休みの導入をしている。保育所の支援策もしている。
質問株主:
現場ではなく、代理店の本社のことと補足します。
質問19
NHKの受信料について、ワンセグの視聴機能が付いているものは払わないといけないという判決が確定しそうだ。ワンセグは勝手に視聴機能付いてくるが、何か対策は?
回答:阿佐美取締役
ワンセグ利用料はメーカーが負担し、ユーザーが負担するものではないと認識している。今後状況を注視していきたい。
質問20
楽天からのローミングの要請は受けなければよいのでは?
回答:大松澤取締役
中身に応じてしっかりと対応をしていきたい。適切に検討していきます。
審議終了、採決
各議案について、株主が賛成の拍手をし、賛成多数により(実際は事前の議決権行使書面で可決は決定済み)決議事項が承認され、散会。
ユーザーフレンドリーの満足度の高い総会
株主との距離感をなくしてできるだけ対話をしようというスタンスが伝わる総会で、20問もの質問を受けて各取締役から丁寧に回答をしてくれたのも好印象です。
もちろん総会の対応だけで企業の全部はわかりませんが、少なくも僕はドコモのファンになりました(単純すぎる)。こういう株主との接点を大事にできる会社だと、安心して保有できそうです。100株しか持っていないのが悔しいくらいスタイリッシュでいい総会でした。
いっぽうで、質問にもあったように、古くからドコモをホールドしている株主は株価上昇の恩恵を受けておらず、フラストレーションが溜まっているようでしたので、ぜひ株価上昇と株主還元で報いてほしい。
また株主総会実務に多少なりとも関わる実務担当者として、大変勉強になる総会でもありました。
エンターテインメントとしても、総会は面白いですね。セミリタイアして、総会めぐりを趣味にしたら楽しそう。
これからもドコモを応援していこうと思います。
株主総会のおみやげ
ドコモのキャラクターのポインコのストラップと、ドコモ移動基地局車のトミカをそれぞれ2つでした。
2つ準備してくれるのがまた株主への思いやりでしょうか。1つだと子どもが2人いると取り合いのけんかになりますので、とても嬉しいです。帰って子どもにあげました。ドコモさん、ありがとうございました。
途絶えない安心を、すべての人に。
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