【ケベック協定日本語訳】チャーチルがアメリカの日本への原爆投下に同意した署名文書の存在が判明

終戦記念日が近く、テレビ(特にNHK)でも戦争関連の話題が取り上げられることが増えました。

そんな中、イギリス首相チャーチルが1945年7月1日にアメリカによる原爆の日本への使用を合意する文書に署名していたことが判明したというニュースが出ました。

アメリカによる日本への原爆使用にイギリスの同意が必要になるという根拠文書は、1943年8月に米英間で締結されたケベック協定という合意書です。

個人的に文書の内容に興味を持ったので、このアメリカの原爆使用にイギリスの同意を条件とするケベック協定を原文で読んでみました。また内容もそんなに長くなかったので勢いで自力で全文日本語翻訳しましたので載せます。最後に英語の原文も併せて載せましたので興味のある方はご参照ください。2年後に日本に原爆が落とされる契機となった米英の歴史的な合意書です。なお僕はネイティブ並みの英語力には到底遠いので、誤訳や読みにくい箇所はご容赦ください。

協定中に出てくる「チューブ・アロイズ計画」とは、原爆開発計画を指しています。当時のコードネームのようです。Internally coded as “Tube Alloys”.

核兵器の日本への使用にイギリスの同意がいるというのは第2条に規定されている内容となります。協定の内容を読むと、相互の同意がなければ核兵器の第三国への使用はできないと規定されています。

既にアメリカは戦時中から超大国でした。一方でイギリスはアメリカと比べれば相対的には小国で、独力ではドイツに勝てないので対独戦に勝つために、当時欧州戦線不介入のモンロー主義思想が世論の多勢であったアメリカを連合軍側で参戦させるために終始腐心していました。何事も最後はアメリカ頼みでした。

日本の真珠湾攻撃で1番喜んだのはチャーチルでしょう。やっとアメリカの参戦が確定したのですから。そんなイギリスなので、アメリカにとってはイギリスと組む必要やメリットもなく単独で開発できてしまうのではと思ったのですが、イギリス側も当時原爆の研究はしており知見の活用ができること、また莫大な研究開発費の問題からアメリカ側に共同開発するメリットはあったようです。

ただ、共同開発とはいっても、アメリカ側の費用負担のほうが圧倒的なのだろうなと協定書を読んでいると匂ってきます。

また、本協定の内容を読むと、イギリスは戦後の工業及び商業分野におけるアメリカの優位性を認めるという記述があります(第4条です)。

実質的にはもうイギリス1国では世界的に大きな影響力を及ぼせない時代ですが、形式的公式的にも大英帝国は工業及び商業分野でアメリカに劣後する存在であると認めてしまった文書という性格も持っているようです。

以下日本語訳となります。

ケベック協定日本語訳

アメリカ合衆国及びイギリス当局者間における、チューブ・アロイズに関する統治協定

[前文]

最短の時期においてチューブ・アロイズ計画を実現に導くことが、現下の戦争における我々共通の安全に不可欠である。

すべての利用可能なイギリス・アメリカの頭脳及び資源が投入されれば、本計画はより早期に実現できるであろう。

戦争状況を鑑みると、大西洋の両側において大規模な工場を重複して建設することは戦争資源の軽率な使用である。その結果としてはるかに大きな費用がアメリカに発生している。

[本文]

アメリカとイギリスは、以下について合意する。

1.我々は決して本兵器を相互に対して使用しない

2.我々は、相互の同意なしに、本兵器を第三者に対して使用しない

3.我々は、明示的な相互の同意なしに、チューブ・アロイズに関する情報をやり取りしない

4.戦争努力の賢明な分担の結果としてアメリカに多大な開発負担が生じていることを考慮して、イギリス政府は、工業又は商業におけるアメリカの戦後の優位性が、アメリカ及びイギリス間においてアメリカ大統領からイギリス首相に提示される条件に従って為されることを認める。イギリス首相は、アメリカ大統領により公平そして世界の経済福祉に調和していると見做される範囲を超えて、工業及び商業面での如何なる利益をも明示的に放棄する。

5.本プロジェクトの早期実現に向け、2国間において完全かつ効果的な協力体制を確保するために以下の処置を実施する

(a)以下のメンバーで組織される統合政策委員会をワシントンに設置する

The Secretary of War. (United States)

Dr. Vannevar Bush. (United States)

Dr. James B. Conant. (United States)

Field-Marshal Sir John Dill, G.C.B., C.M.G., D.S.O. (United Kingdom)

Colonel the Right Hon. J. J. Llewellin, C.B.E., M.C., M.P. (United Kingdom)

The Honourable C. D. Howe. (Canada)

本委員会の機能は、各政府の管理に従うことを条件に、以下のとおりとする。

(1)2国において実施されるべきタスクプログラムについて都度合意する

(2)本計画のすべてのセクションについて常時継続的に監督する

(3)委員会において合意されたプログラムの要求に従って、限られた供給の中、素材・機器・工場を配分する

(4)本合意書の解釈や適用に関して生じうる疑問について解決する

(b)本政策委員会及び委員会の緊急テクニカルアドバイザー間において、本プロジェクトのすべてのセクションにおける情報及びアイデアの完全なる交換を実施する

(c)科学調査と開発の分野において、当該分野の同様のセクションに従事する2国間において、情報及びアイデアの完全なる効果的な交換を実施する

(d)大規模工場の設計・建設及び運営の分野において、情報及びアイデアの交換は個別の合意によって統制する。なお、当該個別の合意は、本プロジェクトが最短の時期に実現されるべき状況である場合には、当該分野の各セクションにおいて必要かつ要請されるであろう。当該個別の合意は、本政策委員会の承認に従うものとする

1943年8月19日

承認者:フランクリン・ルーズベルト、ウィンストン・チャーチル

英語原文

Articles of Agreement Governing Collaboration Between The Authorities of the U.S.A. and the U.K. in the Matter of Tube Alloys

Whereas it is vital to our common safety in the present War to bring the Tube Alloys project to fruition at the earliest moments; and

Whereas this maybe more speedily achieved if all available British and American brains and resources are pooled; and

Whereas owing to war conditions it would be an improvident use of war resources to duplicate plants on a large scale on both sides of the Atlantic and therefore a far greater expense has fallen upon the United States;

It is agreed between us

First, that we will never use this agency against each other.

Secondly, that we will not use it against third parties without each other’s consent.

Thirdly, that we will not either of us communicate any information about Tube Alloys to third parties except by mutual consent.

Fourthly, that in view of the heavy burden of production falling upon the United States as the result of a wise division of war effort, the British Government recognize that any post-war advantages of an industrial or commercial character shall be dealt with as between the United States and Great Britain on terms to be specified by the President of the United States to the Prime Minister of Great Britain. The Prime Minister expressly disclaims any interest in these industrial and commercial aspects beyond what may be considered by the President of the United States to be fair and just and in harmony with the economic welfare of the world.

And Fifthly, that the following arrangements shall be made to ensure full and effective collaboration between the two countries in bringing the project to fruition:

(a) There shall be set up in Washington a Combined Policy Committee composed of:

The Secretary of War. (United States)
Dr. Vannevar Bush.  (United States)
Dr. James B. Conant.  (United States)
Field-Marshal Sir John Dill, G.C.B., C.M.G., D.S.O.  (United Kingdom)
Colonel the Right Hon. J. J. Llewellin, C.B.E., M.C., M.P.  (United Kingdom)
The Honourable C. D. Howe.  (Canada)

The functions of this Committee, subject to the control of the respective Governments, will be:
(1) To agree from time to time upon the programme of work to be carried out in the two countries.
(2) To keep all sections of the project under constant review.
(3) To allocate materials, apparatus and plant, in limited supply, in accordance with the requirements of the programme agreed by the Committee.
(4) To settle any questions which may arise on the interpretation or application of this Agreement.

(b) There shall be complete interchange of information and ideas on all sections of the project between members of the Policy Committee and their immediate technical advisers.

(c) In the field of scientific research and development there shall be full and effective interchange of information and ideas between those in the two countries engaged in the same sections of the field.

(d) In the field of design, construction and operation of large-scale plants, interchange of information and ideas shall be regulated by such ad hoc arrangements as may, in each section of the field, appear to be necessary or desirable if the project is to be brought to fruition at the earliest moment. Such ad hoc arrangements shall be subject to the approval of the Policy Committee.

Aug. 19th 1943

Approved

Franklin D. Roosevelt

Winston S. Churchill

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