MO, PM, BTIの株価が急騰した理由〜電子たばこ規制によりたばこ株が急騰〜FDA（アメリカ食品医薬品局）が電子たばこの未成年１０代への大流行を危惧し主要メーカーに未成年対策プランの提出指示

アルトリア（MO）、フィリップモリス（PM）、ブリティッシュアメリカンタバコ（BTI）の株価が急騰しています。

ここ最近ないくらい気持ちのいい上昇です。

【MO】アルトリア

現在値 62.2600 +2.79 ( +4.69% )

【PM】フィリップモリスインターナショナル

現在値 80.3250 +2.87 ( +3.71% )

【BTI】ブリティッシュアメリカンタバコ

現在値 48.7200 +2.48 ( +5.36% )

FDAが電子たばこの主要メーカーに警告発令

理由は何かとニュースを見てみましたが、これだなと思われるニュースを見つけました。

たばこ銘柄急騰の理由は、アメリカのたばこ規制当局であるアメリカ食品医薬品局（FDA）が、電子たばこ（e-シガレット）メーカーに対して、突如とて警告を発したためです。

警告の概要は以下です。

1. 電子たばこの５つのブランドであるJuul, Vuse, MarkTen, blu e-cigs, and Logicに対して、６０日以内に１０代による電子たばこ使用回避のプランの提出を指示
2. もし有効な計画が出なかったら、フレーバー付きの電子たばこの販売禁止を検討する

さらに、電子たばこの主要製造メーカーだけではなく、電子たばこの1,100の小売店（セブンイレブン、ウォルグリーン、サークルK、シェルのガソリンショップ含む）に対しても警告状を発しました。

未成年者の電子たばこアクセスを防ぐ計画を提出できなかったら、電子たばこのフレーバーニコチンリキッドの製造を禁止するかもしれないという、かなり強い内容の警告です。

FDAの突然の警告の背景

アメリカの１０代の未成年の間において、電子たばこが大流行していることが原因です。

日本では電子たばこをあまり見ませんが、アメリカでは特に若者を中心にスタイリッシュな電子たばこが大流行し、２００万人の中高生が電子たばこを吸っていると言われています。

これら１０代の未成年への電子たばこの蔓延状況を重く見て、未成年のニコチン依存症を防止するという公衆衛生保護の目的から今回の警告が発せられました。

これだけ若者がニコチン吸ってるんだから、手をこまねいてないでさっさとメーカーは有効な手を打て！と怒っちゃいました。

なお、電子たばこは、加熱式たばことは異なります。

PMのiQOSやBTIのグローは、加熱式たばこに分類され、電子たばこではありません。

僕は非喫煙者なので具体的なイメージがよく出来ないのですが、電子たばこは、葉たばこを使用せずにニコチンの入った化学液体（フレーバーニコチンリキッドなど）を熱することで水蒸気を吸う様式のたばこで、加熱式たばこは、実際の葉たばこを直接燃焼させずに加熱して吸う様式のものです。

そのため、今回のFDA当局の指令は、iQOSやグローを対象にしたものではありません。

なぜFDAの指令を受けてMO, PM, BTIの株価が上昇するのか？

今回のFDAの規制は、電子たばこ規制の一種ですから、たばこ製品の規制につながるものです。

通常、たばこ規制が発表されると、たばこメーカーの株価は急落します。

２０１８年に入って、FDAによる、たばこの含有ニコチン量の規制検討をするというニュースによりたばこ株がこぞって暴落したのは記憶に新しいです。

しかも、MOだってBTIだって電子たばこは製造しており、MOは電子たばこの主要メーカーとして今回の指令対象の当事者にもなっています。

これは、伝統的な大手たばこメーカーが電子たばこの市場では苦戦を強いられており、電子たばこ市場での規制が大手たばこメーカーに有利に働くことが原因だと思われます。

下のグラフを見てください。

電子たばこ市場の主要メーカーの売上が見て取れるのですが、近年、新興電子たばこメーカーが製造するJuulという電子たばこがアメリカで爆発的にヒットしており、急速にシェアを獲得しています。

赤い棒グラフがJuulを指しています。

MOやBTIの電子たばこはJuulに抜かれ、既にこの分野では劣勢に立たされています。

新興メーカーにMOとBTIが負けているのです。

紙巻たばこではあり得ない光景です。

そうなると、むしろ電子たばこなるカテゴリー自体が消滅して従来の寡占市場である紙巻たばこ市場と加熱式たばこ市場だけが戦場になった方が大手たばこメーカーの利益に資することになります。

（出典：Jidong Huang, et al., “Vaping versus JUULing: how the extraordinary growth and marketing of JUUL transformed the US retail e-cigarette market.” Tobacco Control, doi:10.1136/tobaccocontrol-2018-054382, 2018）

Juulとは、下の画像のような電子たばこです。

おしゃれで、マンゴーやミックスフルーツなどの甘い香りのリキッドがあり中高生に大人気（FDAはepidemic proportion（大流行）と流行の状態を表現しています）になっているようです。フルーツフレーバーは若者への訴求に大変重要な役割を果たしています。

（Juul HP画像より）

電子たばこはもともと紙巻たばこの代替品だった

もともと電子たばこは、ニコチン中毒で紙巻たばこを止めれない人が、禁煙までは出来ないけれど、紙巻たばこよりもニコチン含有量が低くて中毒性が低いから、禁煙に至る過程として通常の紙巻たばこの代替品として用いるための製品という性格がありました。

今回のFDAの警告でも、電子たばこが成人喫煙者にとって代替的なless harmful（有害性が低い）な製品であると言及しています。

つまり電子たばこは、以下の２つの性格を持つ製品ということですね。

1. 成人喫煙者にとっては通常たばこより有害性の低い代替的なたばこ製品
2. 未成年者にとってはオシャレでフルーツ味の美味しいニコチン中毒への入り口の製品

２はもともとの趣旨とは異なる意図しない方向への作用ですので、今後FDAは、未成年の使用を抑制しつつも、有害性の低い代替たばこ製品として機能するような形で電子たばこを残していくものと思われます。