【法務実務】消費者クレーム対応にかかる社内人件費を計算してみた

僕が会社で所属している法務部門は、取引先との契約書の作成やレビュー、法令確認や法令解釈、株主総会運営、取締役会運営、訴訟対応などをメイン取り扱っています。

業務の守備範囲はとても広く、法令に関係なく取引先とトラブルが起きたとか、消費者とトラブルが起きたとか、どこに相談したらいい案件かわからないような面倒くさい案件はとりあえず法務部に相談しとけといった雰囲気があり、いろんな仕事が舞い込んできます。

業務では事業部との調整が必要となることも多く、時には法令遵守の観点から、事業部が遂行したくてたまらない企画にストップをかけることも必要で、コミュ力や説得力が必要となります。

イケイケドンドンの営業部門や企画部門の人間に物怖したり遠慮せずにはっきりと言うべきことは言う胆力も必要です。

つまり人との調整業務が大嫌いで人じゃなくて文書と向き合っている方が楽しい平和を好む自分には向いてない業種ということです。

そんな法務部には、消費者からのクレームも時に上がってきます。

一時的にはカスタマーヘルプセンター的な部署が消費者のクレームを受けて処理するのですが、消費者のクレームの温度感が高かったり、消費者センターに駆け込むだの、法テラスに相談するだの、訴えるだの、トラブルに発展しそうなユーザークレームは法務部までエスカレーションされて、激おこぷんぷん丸の消費者に対してどのように回答するか、案を考えます。

先日、そのような温度の高いクレームが1つ上がってきて対応したのですが、ふとこの1件のユーザークレーム処理に社内の人件費がどれくらいかかっているのか気になったので、自分で計算してみました。

法務部に上がってくるまで何回かカスターヘルプセンターで消費者と往復のメールのやり取りが発生していますが、僕に案件が上がってきてからの計算とします。

また、人件費は計算が複雑になるので、単純に社員1人当たり1時間3000円とします。

担当部門との会議

クレームの内容を見て、事実関係を確認するためにその商品の担当部門と会議をします。

担当部門から3名、法務からは僕と、上司の2名でした。

なお会議に出席した誰から見てもこの消費者の言っていることに妥当性はなく、いちゃもんに近いクレームでした。

僕はもう面倒くさいのは嫌だから無駄なことせずに内心既読スルーでいいのにとボーっと思っていましたが、みんな真面目なのでどう返答するのが最適か色々と案を議論して骨子のイメージを共有します。

後半は雑談が中心になりましたが、会議は1時間におよびました。

そのため、ここでかかる人件費は、3000円✖️5名=15000円となります。

担当部門が回答案を作成

会議で確認したことを踏まえて、ひとまず担当部門の1人が消費者への回答案を作成します。

そのあと回答案が僕に上がり、僕が法務的観点から修正して、さらに僕が修正したものを上司がチェックするという、重たい3重奏です。

担当部門から回答案が来るのがとても遅かったので、最低でも2時間は文書作成にかかっていると思われます。

そのため、ここでかかる社内人件費は、3000円✖️2時間=6000円です。

法務担当者のチェック

担当部門の回答案が僕まで上がってきたので、チェックします。

案の定でしたが、とてもそのまま消費者に返せるような水準の文書内容ではなかったので、ゼロから回答案を作成し直します。

消費者からの質問に答えつつも、あまり細かいことを書いて再度また何か言われるようなツッコミどころを残さないように、簡潔に丁寧にでもあなたの要求に応じることはできないと色々と悩みながら作文します。

2時間かかりました。

社内人件費は、3000円✖️2時間=6000円です。

上司のチェック

1時間くらいかけていました。

3000円✖️1時間=3000円です。

この後また文案がカスタマーヘルプセンターにわたって確認が入るのですが笑、そこは省略します。

これまでの流れで、このクレーム対応にかかった人件費は、15000円➕6000円➕6000円➕3000円=30000円です。

これが高いのか低いのかは、相場観がわからないため何とも言えません。

わかっているのは、一見明白にいちゃもんに近いクレーム対応1件に社内人件費が30000円以上かかっているという事実です。また、当然これに時間を取られたことで他の仕事がその分遅延します。

僕は、真面目なクレーム対応が一律不要というつもりは毛頭ありません。会社に非がある場合は、真摯に対応すべきだと思います。

ただ、会社に非がなくとも、世の中には何を言ってもわかってくれない人、クレームすることが生きがいという人がどうしても一定数はいます。本当に対応が必要な人に割くべき資源を、そのような人に割くのは世の中の全体最適に反します。

今回のクレーム対応は、なぜこんな無駄な業務をしなければならないのだろうとおそらく対応した社員皆が思いながら対応していました。

また同じ人からクレームが返ってきたら、今度こそ必殺既読スルーです。



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