IBMはレッドハット買収の3兆8000億円をどのように調達するのか?〜増大すると借入金と自社株買いの停止

10月28日にIBMはソフトウェアメーカーのRed Hatを340億ドル(約3兆8000億円)で買収するという発表をしました。

レッドハット1株あたり190ドルに該当する金額で、同社の10月26日終値の株価に63%のプレミアムを乗せたことになります。

今回の買収でクラウドコンピューティング事業が強化されることになりますが、横文字だらけのこの分野を分析する能力は僕にはありませんが、CEOは、今回の買収はコスト削減シナジーではなく成長シナジーであると述べています。

ただ、買収発表後にIBMの株価は低迷しているので、市場の多数派からは買収価格を上回る業績への効果が期待できないと見られています。現在の配当利回りは5%を超えています。

期待は低ければ低いほどハードルが低くなり、今回の買収が売上・利益に寄与することが後の業績発表で明らかになった時にポジシブサプライズとして株価上昇の要因になってくれるので、買収発表で楽観に包まれて株価が上昇するよりは下に織り込んでくれて下落してもらう方が良いとは思います。

IBMとはまた違いますが、香辛料世界No.1メーカーのマコーミックは大型の買収を発表した際に株価が100ドルから90ドルまで10%急落しましたが、買収先の企業が業績にシナジーを及ぼす好決算が発表されて今では150ドルまで株価が上がっています。

市場の評価は本当に当てになりません。

(参考)

【MKC】世界最大のスパイスメーカー・マコーミック四半期決算発表~二桁の増収増益の好決算も通年売上見通しを引き下げ株価は微妙に下落

IBMのレッドハットの3兆8000億に及ぶ買収に要する費用をどのように調達するかの記事がMarket Realistに掲載されていました。

IBMは、2018Q3決算によると現在手元の現預金は147億ドル(約1.6兆円)あります。

そのため、手元資金だけでは買収資金を賄うことはできませんので借金することになります。

JPモルガンチェースとゴールドマンサックスから、200億ドルの短期融資を受けることとなります。

なお、IBMは現在借金が469億ドル(約5兆2000億円)ある状況なので、これに加えてさらに借金が増えることになります。

IBMは将来の自社株買いを停止しつつも現在の自社株買いを加速

レッドハット買収によるの借入金の増加により、財務体質が毀損されたとしてクレジットレーティングが格下げされるのはIBMとしても避けたいところです。

そのため、これを避けるためにIBMはこれまで継続的に実施していた自社株買いをストップさせます。その分をレッドハット買収資金に充てる予定です。

自社株買いを停止する期間は2020年と2021年の2年間とアナウンスしていますが、2022年から再開するかは不透明です。

一方で、将来の自社株買いをストップすることを発表しつつも現在の自社株買いを加速させています。

10月30日に最大40億ドル(約4500億円)にのぼる自社株買いを実施すると発表しました。

なおこの自社株買い決定の前に決定した自社株買い計画の枠がまだ14億ドル残っていますので、合計54億ドルが自社株買いとして今後株主に還元されることになります。



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