なぜウォーレン・バフェットは、たばこ銘柄に投資しないのか?

なぜウォーレン・バフェットはビッグタバコに投資しないのか。

そんなことを考えたことはありませんか?

バフェットは、「The Enevitables」な銘柄を好みます。

「The Enevitables」とは直訳すると「必然的なもの」という意味で、バフェットがこの言葉を発するときはいわゆる生活するのに不可欠な製品・サービスという意味合いです。

バフェットが大好きなコカ・コーラやジレットがこれに妥当しますね。

1996年の「バフェットからの手紙」に登場する言葉です。

コカ・コーラよりジレットより、たばこのほうがずっと「The Enevitables」であると捉える余地も十分にあるように思います。

たばこ銘柄がこれまで株主にもたらしてきたリターンの高さはもはやアメリカ株投資家の間では「共通教養」の領域にあります。

アルトリア(MO)やフィリップモリス(PM)といった少数の企業が数十年にわたり市場を寡占支配してきました。

強固な法規制と広告規制により参入障壁は著しく高いため新規参入プレイヤーとなることはほぼ不可能で、中小規模の企業は当局の発する規制への対応コストが高すぎて勝手に消滅していきます。

強固なシェアを握るために企業規模を拡大するには、もう買収を繰り返すしか方法がありません。

ユーザーのブランドロイヤルティーもすこぶる高いです。マルボロを吸う人はマルボロしか吸いません。

流行のパンケーキのお店が出来ればそのお店に夢中になり、目新しいアイスクリームのお店が海外から日本に進出すれば次はそのお店に夢中になり、また新しいピザの店がニューヨークから輸入されればそのお店に夢中になり・・・と、こんな浮気性な客を相手にする業界なんてとても投資対象にできません。

銘柄の味を変えるとユーザーは怒りますので味は変えられません。かつてコカ・コーラがコーラの味を変えてユーザーから大不評を買って元の味に戻したように。

新製品開発は不要で、ひたすら同じ製品をつくり続ければよいという眠気の出る事業です。

たばこ需要が減ったりたばこ税を上げられても、それを上回る製品の値上げをすれば収益力はさらに向上するというたばこ業界の必勝パターンも確立しました。

ザ・プライシングパワー。

ストリートファイターIIのリュウの、①ジャンプ飛び蹴り⇒②しゃがみ大キック⇒③(相手が倒れて起き上がる瞬間を狙っての)波動拳で決め、といったコンボ並みの安定感です。

アルトリアの営業利益率は、コカ・コーラよりも高いです。

現在たばこ銘柄がアメリカFDAのメンソール製品規制問題で大暴落していますが、こんなときにバフェットがたばこ銘柄を買ってくれさえすれば・・・俺の含み損もすぐに解消するのに・・・。

ふとそんなことを思ってしまいます。

日本語で検索しても、バフェットがたばこ産業に投資しない理由はでてきませんね。

1つだけ、バフェットがたばこ産業に向けて発した言葉を見つけましたので引用します。

It costs a penny to make. Sell it for a dollar. It’s addictive. And there’s fantastic brand loyalty.

翻訳します。

たばこの製造にかかるコストはたった1ペニーだけど、それが1ドルで売れるんだ。依存性だよ。しかもとっても素敵なブランドロイヤルティーがある。」

この言葉だけ見ると、バフェットもたばこ産業には魅力を感じている(いた?)ようです。

じゃあ何で投資しなのか?

単純に規制リスク盛りだくさんのオワコンたばこ銘柄よりもコカ・コーラ、ウェルズファーゴ、アップルのが投資リターンが高いと思っているのか、本当はたばこ銘柄に投資したいけど、何か特殊な理由があって投資しないのか。

さすがにIBMよりはビッグタバコのがいいだろとは思うのですが。

如何せんバフェット本人が発した言葉がないので、真相はわかりません、というのが結論になってしまいます。

もっとも、バフェットは過去にたばこ銘柄への投資を断ったことが1度あったようです。

1980年代後半に、RJRナビスコ(現在のブリティッシュ・アメリカン・タバコが買収したレイノルズ・アメリカンのことです)への投資案件でソロモン・ブラザーズのCEOからRJRナビスコ社とのディールへの参加を請われましたが、バフェットはこれを断っています。

当時のバフェットの言葉が、以下となります。

I’m wealthy enough where I don’t need to own a tobacco company and deal with the consequences of public ownership.

「私はもう十分裕福だから、たばこ会社を保有する必要はないし、たばこ会社を保有することで生じる結果に対処する必要だってないよ。」という発言です。

よく意図がわからない発言ですが、事実としてたばこ銘柄への投資を断っています。

ただバフェットは、ソロモン・ブラザーズがRJRナビスコ社への取引(レバレッジドバイアウトのようです)に参加したことに賛辞を送っていますから、たばこ会社への投資そのものをリターンが低いと考えていたわけではないように思います(ただの社交辞令だったのかもしれません)。

この記事の著者は、バフェットがたばこ銘柄に投資しない理由は、たばこ銘柄のリターンが低いと彼が考えているからではなくて、「Moral Reason」(道徳的な理由)が原因であると考えています。

たばこ銘柄のリターンは確かに高いであろうが、たばこによって多くの人々が疾病を患っている。どんなに安定した寡占事業で永きにわたり高リターンをもたらしてくれることなっても、非倫理的なたばこ株に投資して金儲けしたということが「黒歴史」になるというリピュテーションリスクを避けていると。

本当にバフェットがたばこ業界をザ・ワイド・モートと見ていて評判の問題から投資をしなかったということならたばこ株ホルダーには嬉しいですが、果たしてそんな単純なものなのか?と思ってしまいます。

実際にはこの後に及んでバフェットがたばこ銘柄に投資することはないと思われますが、ウォールストリートジャーナルの1面を飾る「BUY BIG TOBACCO I AM !」のオマハの賢人の声を聞いてみたいと思うたばこホルダーの寒い冬です。



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