日本企業が内部留保を貯めるのは極めて合理的~将来の需要縮小と日本政府不信

よくニュースで、日本企業は儲かっているのにお金を従業員や株主に還元せず設備投資にも使わず、ひたすら貯金して何も生み出さない内部留保に回している、これはとてもけしからんことだという論調で言われることがあります。

自分は会社の従業員であり色々な企業の株主でもあるので是非とも賃上げや配当・自社株買いで余ったお金を還元して欲しいと強く思っています。

ただ、日本企業がお金を貯めて使わない理由は、それが企業経営として最も合理的な選択だと思っているからそうしているのでしょう。

僕は経済評論家でもないのでなぜ内部留保を貯めるのか詳しい理由の分析などできませんが、日本の需要が減少していくことと、不況の記憶が鮮明で不況マインドから脱却できないこと、リーマンショック後の民主党時代の日本政府の無能さの記憶が鮮明で何かあった時に国は何も企業を守ってくれないという日本政府不信が原因として挙げられるのかなと思っています。

日本は、先進国の1番手を走って人口が減少しています。

高齢者が増えてもそれを上回る子供が生まれれば良いのですが、残念ながら少子化は深刻でそうなっていないので、老人が増えて子供が減る構図です。

2010年の1億2806億人を頂点に翌年から人口は減少しており、2050年過ぎには人口が1億人を下回り、2060年には8600万人台まで人口が減少するという予想があります。

人口が減っていくということは、単純に減った分だけ国内市場の需要が縮小していくということです。

経済成長期のように人口や若者が増える社会では、何もしなくても需要が拡大し売上や利益は増えますが、今後は逆に、何もしないと需要が減った分だけ売上が落ちて利益も減少することとなります。

そんな縮小していく未来が自明なので、大事な企業の貯金を従業員や株主に回して将来の需要減少時や不況時にお金がなくなって企業体力が持たなくなると懸念するのは当然でしょう。

また、設備投資をしろと言っても、人口が減って需要がなくなると分かっているのにそんなことしても、無用の長物になるのが関の山です。

需要もないのに将来稼働しなくなる新しい工場作って自滅することになってしまいます。

今現在需要が減少しており、将来にかけてもっと需要が減少していくという日本の現状を変えないと、企業マインドを変えるのは難しいんでしょう。

人口減少をイノベーションで克服すれば経済成長は達成できると東大経済学部の大家の教授は主張していますが、イノベーションとは何じゃらほいという単純な疑問があるし感覚的には人口が減ればそれだけ普通に需要が減ると考えたほうがしっくりきます。

このあたりは国がリーダーシップをとって人口を増やす政策を採るしかないのかなと思います。

各方面の利権団体やステイクホルダーに配慮し現状を変えることのできない悪い中庸的政策しか実施できない日本式の合議主義ではもうこの問題は解決できないと思います。

成功しなかった時のダメージは大きいのでしょうが、トランプさんのように実は多くの人が思っているけれど体裁を気にして言えないようなことをはっきり言って、無遠慮に不要な政策や利権団体を切り捨てて資源を優先的に緊急性のある問題に集中して独断的に政策を実施してくれる人のがいいのだろうなと思われます。

例えば、不妊治療への補助金を一切止めて、「産める人に多くの子供を産んでもらう」環境整備や補助に資源を集中するとかですね(あくまでただの例です)。

次に、不況に備えるマインドから脱却できないという問題です。

リーマンショックからまだ10年ほどしか経っていないので、大不況時の惨事が経営者の頭にこべりついていて積極的な投資に出ることができない面もあるのかなあと思います。

現在企業で社長とか副社長とか執行役員とか意思決定ラインのトップにいる人たちって、ちょうどリーマンショックから東日本大震災の頃の直近で1番日本経済が悪かった時に企業の実務部隊の中心を担っていた層だと思われます。

なので、あの頃の厳しい環境下での辛い仕事を鮮明に覚えていてディフェンシブに構えてしまうところがあるのかなあと。

また、日本政府は企業にお金を貯め込んでないでお金を使えと言いますが、企業の経営者からすればお金使ったことが原因で内部留保が少なくなって将来また不況が来た時に経営危機になってもお前らは一切企業を守ってくれないだろという日本政府不信もあるんでしょう。

自民党政権になって好況になるまで、日本経済新聞の紙面を「6重苦」という言葉が賑わせていたのをよく覚えています。

6重苦とは、特に製造業から日本の政策を批判する文言となっていた以下の日本でビジネスを遂行する上での厳しい制約です。こんな企業経営に負荷の大きい国でビジネスなんかできないという批判にもなっていました。

  1. 超円高
  2. 厳しい雇用規制(製造業への派遣禁止など)
  3. 世界水準と比べて高い法人税
  4. 強い環境規制
  5. 自由貿易の遅れ
  6. 安定した電力供給の懸念

特にこのあたりはリーマンショック後の大不況で何も実効的な経済政策を実行できなかった民主党時代の無能さに責任の一端があります。後世的には日本の企業を潰すための政党だったという評価になってしまいましたね。

日本政府は口だけで色々言ってくるが、結局有事になれば何も助けてくれない無能で無責任な集団だ。最後は自存自衛するしかいない。

だったら好況である今の段階から有事を乗り切れる体力をつけておくんだと考えるのは極めて合理的です。

大不況になっても国が企業を守ってやるとか保証すれば安心して投資に回せるようなマインドになってまた変わるんでしょうけど、難しいですね。



2 件のコメント

  • こんちには。

    基本的にはおっしゃる通りだとは思います。
    でも、企業のせいだけでしょうか?

    お金を使わない、子供を作らない個人の責任は?

    特に投資ブログやってる人は節約ばっかりの人や、独身の人が多いと思います。

    投資家が、節約を説くって本当に滑稽だと思いますね。

    • 日本全体で取り組んでいかないといけない問題だと思いますね。
      独身で節約すればお金を貯めるには効率はいいんでしょうね。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です