コロナによる不可抗力を認めてくれないアメリカ大企業

新型コロナウイルス感染拡大により、様々な影響が生じている会社が多いことと思います。

自分の会社はど真ん中ストレートでネガティブな影響を受ける会社ではないと思っていたのですが、影響がまったくないとは到底いえず、「グローバルサプライチェーンの脆弱さ」というものをとても感じています。

どこか止まるとそれが全体に影響します。

外注先や取引先は日本にとどまらず世界各地にあるので、どれか工程が止まってしまうとそれが波及的に影響してしまう実情を事業部の人から聞くと、なかなかに大変な状況だなと感じています。

やむなく業務が完全に止まってしまっている会社も多いと思いますが、僕の会社の経営者はこの状況でサイコパス的な性質を発揮しています。

社内サイトでは従業員の健康や家族の健康を気遣って、健康第一で皆さんの安全をしっかりと担保することに全力を尽くし、業務は二の次的なとてもかっこいいことを自分から発信している一方で、上の管理職クラスの社員に対しては、売上計画を変更する予定は一切ない、売上を伸ばせ、逆に今がチャンスだから、しっかり頑張ってくれと正反対のことを鼻息荒く無責任に言っています。

事業部の中間管理職はストレスでどうにかなってしまいそうですが、株主には優しい会社ですね。

僕もこんな時に謎の要請に合わせて事業をストップする必要なんて一切ないと思っているので、久方ぶりに経営者のメンタルが頼もしく思えました。

自分は法務部にいるので、コロナの影響で取引先と締結している契約書にも様々な影響が生じていることを仕事を通じて実感しています。

コロナの影響で取引先との業務内容や納期、対価を変更することにしたから変更の契約書をつくってくれとか、在宅勤務が拡大する影響で、機材等を貸し出していたり逆に借りている会社が、従業員個人の家に機材等を持ち込むから秘密情報担保の誓約書をつくってくれとか、コロナを受けた契約内容変更の書面作りの需要が増えています。

また、今回の新型コロナウイルスは契約書上の「不可抗力」に当たるのかという質問もたまに来ます。

法務分野ではホットなイシューだと思います。

通常ビジネスの契約書には、テンプレとして「不可抗力条項」を入れるパターンが多いです。

戦争、ストライキ、暴動、パンデミック、大震災等、当事者どちらの責任でもない不可抗力的な事象によって契約上の義務を実施することができなくても、契約上の責任は負わなくてよいという内容です。

具体的に言えば、大地震が起きて、その影響で納期が守れなかったとしても、それは不可抗力だから、納期遅延の契約責任は負わなくていいよというものです。

新型コロナウイルスの感染拡大による業務遅延や納期不遵守は、この「不可抗力」に該当するのでしょうか?

解釈が分かれるしここで書いたことには一切責任は負いませんが、法的要請なら該当するが、「自粛」「要請」に従った場合は自発的判断が介入しているのでなかなかにグレーではないか、といった程度感覚です。

おそらく現段階で統一的な結論はないのではと思います。

これが日本の会社だと話が簡単でいいんです。

何と言っても「困った時は誠実に協議して解決」しますから。

「契約書の何条の不可抗力条項」という言葉が出る前に、会社の担当者同士がしっかり協議して話し合って、円満に解決策を出してくれます。

この状況なので、ほぼ納期を後ろにずらしたり、在宅勤務が広がった影響で業務内容自体を変更したり、スケジュール変更に合わせて対価も変更したりと、コロナの影響に合わせて柔軟に契約書の内容を変更する対応をしています。

ところが、海外の企業だとこうもいかないから大変です。

コロナの影響による納期変更や契約内容変更を打診しても、すでに契約で決まっていることだからそれは認めることはできないとか普通に言ってきます。

いやお前ら自分が逆の立場だったら絶対に当たり前のような顔して契約内容変更を要請してくるだろと声を大にして言いたいです。

株式投資するには頼もしいですが、自己中心的で人間味がなくて取引先を金づるとしか思っていない(ように見えてしまう)アメリカ大企業と付き合うのは本当に大変です。

個別に人と会うと人間味があっていい人たちなのですが、なぜだろう。

また面倒くさいのが、海外企業との契約書って、準拠法が日本法じゃなくてアメリカニューヨーク州法とか、イングランド法とか、海外の法律が適用される契約内容になっているケースが多くて、新型コロナウイルスが不可抗力に該当するかは、適用される海外の法解釈に基づかないといけないのです。

海外だってあの状況なので普通に考えれば不可抗力以外の何者でもないことは明らかな気がしますが。

どんだけ粘っても契約書で決まった内容は何が何でも変更できないと言ってくる会社もあり、例えば共同で事業やサービスをする場合に、消費者に売り出す予定サービス開始日のようなものを契約書に定めるのですが、明らかに互いの業務に遅延が発生していて、予定日にサービス開始は不可能な状況になっているケースがあるとします。

この状況でも、とあるアメリカ企業は予定された日にサービスを開始し、変更はないと言います。

当初予定のサービスレベルや品質保証が確保されない状況なのに、クオリティは当初予定より落ちても絶対にこの日に出すと言うのです。

日本側はちゃんと納得できる商品・サービスを作って強い商品力を備えた状態で出さないと売れないからそれは現実的ではないと言っても、どんな状態でもその日に出すの一点張りだったりします。これは大変だ。

僕は基本契約書だけの関与なので、常時コミュニケーションをとってビジネスを進めている事業部の最前線の人は本当によくやっていると思います。

自分だったらストレスとプレッシャーで間違いなく病んで会社辞めそうです。

アメリカ企業は契約書を重視する(契約書がないと取引しないとは言っていない)