日産の代表取締役会長カルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反の疑いで逮捕されるという衝撃的な事件の発生により、逮捕直後の市場では日産株は5.45%の下落となり、年初来安値を更新しました。
予想配当利回りは6%に迫る水準です。
どうでもいいですが、ニュースでカルロス・ゴーン「容疑者」と聞くと、カルロス・ゴーン「メンバー」じゃないのかと非常に耳に違和感が残ります。
今回のゴーン氏の逮捕を受けて日産のHPのリリースを見てみましたが、非常に簡素な内容のリリース文しかありませんでした。
リリース文によると、以下のことが判明している模様です。
- 起点は内部通報
- 数ヶ月にわたり、カルロス・ゴーンと代表取締役グレッグ・ケリーの不正行為について内部調査を実施
- 長年にわたり、ゴーン氏の有価証券報告書の報酬を実際の報酬よりも減額した金額を記載していたことが判明
- 他にも、ゴーン氏は日産の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為が認められ、それらにグレッグ・ケリー氏が深く関与している
会社の代表者が会社の資金を私的なことに使うなど、中小のオーナー企業では日常的なことのように思いますが、大企業はコンプライアンスの目が厳しいですね。
逮捕されると途端に当事者に批判的な記事が溢れるのもいつものメディアです。
某新聞紙の記事は、ゴーン氏がコストカットで畳んだかつての日産の工場周辺住民のゴーン氏への否定的なコメントだけを載せる記事を掲載するという、当事者に迫る取材もなく社員のコメントも一切ない誰でも書けそうな中身がスッカラカンの記事でした。
ゴーン氏の高額報酬が批判されることがありますが、そんなに高額報酬が気に障るなら株主になって株主総会で報酬減額の要求でもすれば良いでしょう。
日産のオーナーである株主が承認しているんだから、利害関係者でもない部外者がいちいち口を挟む問題と思いません。
ゴーン氏の報酬額にいちゃもんをつけるより、日本の経営者や一般従業員の報酬水準を上げる社会を目指す方が建設的です。
減配するのかしないのか、それが問題だ
今回のゴーン氏の逮捕を受けて市場が1番関心を持っているのは、日産が減配するのかしないのか、この点に尽きます。
高い配当利回りだけが株価を支えている銘柄と思われますので、配当金の減額が織り込まれれば株価は暴落するでしょう。
日仏関係がどうなろうがどういう経緯でゴーン氏が不正行為に手を染めたかなど、日産の個人株主にとってはどうでもいいことでしょう。
そして、高配当投資家にとっては今回の暴落が買いのエントリーポイントになり得るのか。
日産はここ最近は常時配当利回りが5%ある高配当株となっており、株雑誌やマネー誌の高配当株特集でも紹介されるような銘柄だったので、配当目当てに投資している個人投資家が多いものと思われます。
日産の株価は、不正行為発覚直後の市場では急落しましたが、本日の市場では株価は下落せずに0.36%上昇しています。
本日、モルガン・スタンレーMUFGのアナリストが日産についてレポートを出しましたが、それによると、自動車事業のフリーキャッシュフローが悪化しない限りは日産が減配することはないということです。
理由としては、以下が挙げられます。
- 過去の不正のケースでは、出荷の一時停止がなければ自動車の販売台数は急落せず業績への影響は大きくない
- 今回のゴーン氏逮捕は、「内部通報」が発端となっており、事前に準備されていたもの。そのため、経営の立て直しもスピーディーに実施される可能性が高い
上記の理由から、日産の業績やキャッシュフローへの負の影響は限定されます。
仮に一定の影響があったとしても、現在の配当性向は60%未満なので、配当金の支払いには支障が出ない水準でおさまる蓋然性が高い。
モルガン・スタンレーのアナリストが言うのだから、おそらくこれが市場コンセンサスになっていくのかなと思います。
減配がないということは日産株主にとっては朗報ですね。
ただ、依然としてリスクは残っています。
減配なしがコンセンサスとなった時にその後本事件が予想外の展開となり日産の業績に影響を与えるようになり減配を市場が予想した時、それがコンセンサスに反するネガティブサプライズとなって株価暴落につながるでしょう。
まだ事件から5%の下げで済んでいるので、何となく配当目当てで日産株ホルダーとなった危ない橋を渡りたくない人は減配なしと市場が考えているうちにさっさと売るべきだと思います。
また、今後の不透明性が高い状況なので配当利回りが高いというだけで手を出せる銘柄ではありません。
投資のセンスというかアートというか、市場の空気を動物的な勘で捉えることができる一部の投資家にしか扱えない銘柄のように思います。
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