これは企業の法務関連部門で働く法務マンにとってはけっこうあるあるな話ではないかなと思うのですが、会社の同僚や一緒に仕事をしている他部署の人から、業務に関係ないことなんだけどちょっと相談したいことがあって・・とランチなどに呼ばれて、その場で突然、実は妻とこんなことがあって離婚を考えているんだけど相談に乗ってくれないかなとか、実は夫がこんなひどい人で離婚しそうなんだけれどどうすればいいのか・・・と身の上相談される場面がたまに発生します。
僕は複数回こういった相談を受けたことがあり、会社の人や、しばらく連絡をとっていなかった知り合いから連絡が入り少し相談したいことがあるんだけどと言われると、ああ、離婚話の相談かなとアンテナがたつこともあります。
法務部は法学部出身の人員がもともと多く(といっても大学の講義でそこまで詳しく離婚は扱わない)、企業が取引で結ぶ契約書の作成・レビュー、各部門からの法令相談、株主総会対応など、会社活動で生じる法的問題に日々対応している部署なので、法律に詳しい人というイメージがあるんだと思います。
全然そんなことなくてわからないことがあると都度グーグル先生で検索しているだけのことも多いのにね。
また離婚弁護士でもないので普段の業務で扱うはずもない離婚案件の詳細など全然深くわかりません。
これは各会社における歴史や法務部の役割にもよるのですが、僕がこれまで所属した会社の法務部門は、間接部門にもかかわらず事業の前線に近い所で仕事をする部署でした。
間接部門・コーポレート部門の中では、1番ビジネスの現場に近いイメージの部署です。
ビジネス担当者と一緒に、ある案件やプロジェクトに深く寄り添って、都度生じてくる法的問題や壁に対応したり、取引先と結ぶ契約書の内容をビジネス視点・法務視点の両視点から考えてフィードバックしあいながら対応します。
そういった現場のビジネス担当者とコミュニケーションする機会が多いので、日々の打ち合わせなどのやり取りを通じて、また困難な案件が無事終了したときや、自分の利益しか考えていない時価総額の大きい横暴なアメリカ企業との契約書の交渉で粘って自社の権利を守ることができたときなど一定の成果ややりがいが双方に発生した時などは、お互いの間に結構な信頼関係が発生することがあります(もちろん人間的な相性が悪くて逆になるパターンもあります)。
そういった日常の業務を通じて一定程度の信頼関係が構築されたり、仲が良くなってくると、センシティブなことでも相談しやすい雰囲気になるのでしょう。
それか、本当に周りに頼りになる人がいなくて、周りで1番法律に詳しそうな人がたまたま自分だったのかもしれません。
女性からの相談も結構多く、普段は朗らかで笑顔が絶えないような人が、実はパートナーから日々DVのようなことをされていて困っているとか、夫を怒らせてしまって家に入れてもらえなくなったとか、人形みたいな扱いをされているとか、とても深刻な相談をされることもあります。
普段職場では悩みなんかない印象を受けていたのに、人間って本当に表の印象だけではその人のことはわからないものだと思わされます。
また、ブルーバレンタイン(内容はとてもつらいですがおススメ映画です)のように愛が蒸発して冷め切った夫婦の話をされることもあります。
自分がこういう相談をされると、分かる範囲でなるべく誠実に対応するようにはしています。
ただ、夫婦間の問題は夫と妻で違う言い分が出てくるのは当たり前の世界なので、どこかで線引きして悩みを聞くようにしないと、とても自分1人の手には負えず自分が困ってしまいます。
無責任にはなれないけど深くつっこめないという距離感が難しい問題です。
またこれは自分が男だからという理由からですが、仮に自分の妻が職場で、職場の男性上司や同僚に自分のことをいろいろと相談しているという事態が分かったときにとても不愉快な思いをすると思うので、相談者が女性の場合はあまり踏み込みすぎないようにもしています。
パートナーの男性から無駄な怒りを買うのも怖いです。
もし自分が独身で実は密かに騎士道精神的な思いを寄せていたという女性から相談されたら話は別でしょうが笑。
いっぽうで仲の良い男性から相談されるときは何とか力になりたいので、子どもの親権をとるために今すぐ子どもを連れて実家に帰って妻に会わせるな(なお決してこの内容を本気で信じないでください)とか言ってしまいます。
本当に速やかな離婚を望んでいるというケースでは、一般民事を扱っている大学の同期の弁護士を紹介することもあります。
こういう人間関係の相談を受けると、日常の会社の業務のがずっと簡単だなあと思ってしまいます。
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