アメリカの巨大企業は、日本企業と比べて利益率が高く、ものすごくお金を稼ぎます。
アメリカ大企業はなんでこんなにお金を稼げるのか、ワイド・モートとか事業の優位性とか、講学的な理由は自分にはわかりませんが、会社の業務でアメリカの大企業を相手に仕事をするときの体感から理由を言えば、「取引先の企業を搾取しているから」です。
僕はビジネスの前線で業務を遂行している人間ではなく、バックオフィス部門の人間です。
そのため、取引先としてのアメリカ巨大企業と一緒に仕事をするさいに直接にそのアメリカ企業のビジネスモデルの優秀性を感じたりとかという経験はできません。
自分が関与するのは、法務部員として、主に取引内容が反映された契約書をドラフトしたりレビューする業務を通じてです。
とても狭い範囲の業務ですが、これまでのサラリーマン業務で米国巨大資本と取引するときにたいてい感じるのは、「搾取されている」という感覚です。
アメリカ大企業と取引するときは、特に大きな取引となると数十ページにわたる読むだけで3日くらいかかりそうな分厚い英文契約書が向こうから提示されます。
正直に言うとこれだけで読む方は戦意喪失します。
読むのが面倒くさいからもう法務のチェックなしでサインしていいよと言いたくなります。どうせ内容変えれないし。
ファーストドラフトをアメリカ大企業が譲ることはまずありません。
自社の利益だけを考え自社のリスクを最小限にする内容を入れ込んだ一分の隙のない芸術作品のような格調高い英文契約書が渡されます。
自社のしたいルールを記載した、自分の権利を最大限に記載して、一方で相手方企業については権利ではなく義務を最大限に記載した180度非対称なアメリカ企業にだけ一方的に有利な内容の無慈悲な契約書が提示されるのがいつものパターンです。
ひどい契約書だと、お前が契約違反した時は俺が当然契約解除できるけど、俺が契約違反してもお前は契約解除できないよ、お前は青天井に損害賠償義務負うけど、俺の損害賠償義務はこの金額に限定するからな、などという、一体御社は何を言っているんだというくらい不平等な条項が含まれます。
こういった内容の契約書を読むと、「ああ、日本企業って搾取されてるなあ」と心底思うのです。
外資巨大資本の優越的地位の濫用に苦しめられている日本の中小企業はどれくらいあるのでしょうか。
法務担当者として、自分の企業の利益を守るためにあまりに不合理な内容は修正したり条項の削除要求はするのですが、受け入れてくれないんです規模の大きいアメリカ大企業様は。
俺のルールに従え。以上。ジャイアンです。
アメリカという国の強さは、世界最強の軍事力と経済力を背景として自分に都合の良いように世界の物事の仕組みなりルールなりをつくったり変更したりできるジャイアン的なパワーにありますが、それは企業でも同様です。
日本の大企業はなんだかんだで真面目な企業が多いので、「三方よし」の思想というか、自社と取引先と社会に貢献するといった、各ステークホルダーの利益を調整してみんなが潤うような取引をして、その思想を誠実に契約書の内容に反映するケースが多い印象を持っていますが、アメリカ大企業は、あくまで契約書の内容を見る限りは、純度100%に自社の利益しか考えていないというのが自分の印象です。
およそ日本人では発想できないような内容なんです。アメリカ大手企業が提示してくる契約書の内容は。血が通っていないんです。
契約書の文言をめぐって交渉する場合は、まだ中国の大手企業の方が好感が持てます。
中国の大手企業との契約交渉も幾つか経験があり、とても骨が折れるのは間違いないのですが、血と涙は通っています。
もちろん基となるビジネスの方法が優位性を持っているというのはあるのでしょうが、それだけではなく、大きな交渉力を背景として、明確に優越的地位の濫用にならないグレーのところで、圧倒的に自社に有利な条件を押し付け取引先の企業を搾取しているということが高い利益率や大きな純利益の1つの理由になっていることは、僕は疑いの余地はないという実感を持っています。
日々契約書を文言を一文逃さずひたすら読んでいる人間からすると、単に自社の優位な地位を使って自社に圧倒的に有利な条件を飲ませて取引先から利益を搾取しているだけなのに、その実態を無視して「この企業のビジネスモデルは素晴らしいからこんなに儲かっているんだ」とか「この企業の利益率が高いのはこれこれこういった卓越なる戦略が原因である」とかいうのは、かなり違和感があります。
法務担当者以外だれも分厚い契約書の文言をすべて読みませんからね。読んでいる人間からすると嫌でもこう思います。
アメリカ企業の株主としての立場だととても頼もしいのですが、日本人的な感覚からするとどうしてもアメリカ企業のジャイアン的発想が受け入れられないので、会社員として仕事でやりあう時は米帝企業による日本企業の搾取をなんとか防止したいという正義感が湧いてくるのです。
そんななので、アメリカ大手企業のドラフトした契約書の内容を変えさせることに成功した時の仕事の達成感はとても大きいです。
この世から不正義を1つ消すことができて純粋に嬉しくなります。
1社で交渉しても勝てるわけないので、ほんの例えですが、契約書の内容を読んだことはないですが契約している企業はどうせものすごい契約条件を飲まされていると想定されるので、例えば「りんごの会社」だったら、サプライヤー全社で「対りんご連合」を作ってそこが一括窓口となって契約書の内容が平等になるように交渉し、そこで決まった契約書の雛形を全社で用いるとか、日本企業の利益をアメリカ大手企業から守るには一体となって対応した方がいいんだろうなと思うことが多いです。
関連記事
法務担当者が中国企業との契約書の交渉時に感じる親密感と、アメリカ企業の法務面の強さ