株主総会の準備は部門横断型の全社的取り組みになります

日本では6月になると梅雨の季節ですが、株式投資をしている人にとっては6月は株主総会の季節です。

企業で1番偉いのは誰か?という質問をすると、大多数は「社長」と答えるでしょうが、これは間違っています。

1番偉いのは、「株主」です。企業に出資している株主から経営の委託を受けているのが社長をはじめとする役員連中となります。企業の所有者は社長ではなく、株主です。

そんな株主様を最ももてなすエンターテインメントが年に1回開かれる株主総会です。

株主総会では、その年1年の業績報告や、取締役・監査役といった役員の選任、株主への配当金の決議などを実施します。

多くの会社が6月に集中して株主総会を開催します。株式投資をしている人は、どの会社の株主総会に行こうかとワクワクしながら悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

僕の所属している企業も6月前後に株主総会を実施することが多いので、今年の株主総会の準備がすでに始まっており、担当者は連日終電近くまで残業しています。

今回の記事は、株主総会の準備の裏側を少し書いていこうと思います。

株主総会の担当の主部門は一般的には総務部か会社法を専門とする法務部のチームが多いのではと思います。これらの部署が責任部門や事務局となって運営の準備に取り掛かります。

株主総会は、物理的にマンパワーが必要になる仕事です。

当日の会場案内係り、受付、モニター等の機材の手配係り、出席する役員対応係り、会場裏でモニターを見ながら役員質疑応答のサポートをする係りなど、たくさんの人員を導入する必要があります。

とても総務や法務だけでは人が足らないので、他の部門からも人を動員して当日の準備をします。

真面目に計算するとものすごい人件費がかかってきます。

受付なんかは、一昔前の調子のいい大企業だとコンパニオンみたいな若い女性に外注して実施させることもあったようですが、今では社内のおばさん社員がやることのがむしろ多いんじゃないかと思われます。

もっとも準備に力を入れるのは、株主の質問に対する想定質問問答集を作成し、議長となる社長の手元のモニターに質問への回答を素早く表示する訓練です。

総会当日の議場では、株主からは見えませんが役員の前の台座にはモニターが内蔵されており、会場の裏側に待機している社員が株主の質問とそれに対する答えを記載した用紙を投影しています。

例えば、「株主還元方針は?」、「なぜ社長の自社株保有数が少ないのか?」、「部門ごとの利益率の詳細は?」、「なぜダサいCMしか放送できないのか?」などといった質問とそれに対する回答を予め準備する具合です。

大きな企業だと数百以上の想定質問とそれに対する回答を作成して準備することになります。

ひと昔前は手作業で回答が書かれたカードを社長のモニターに投影するという作業をしていましたが、昨今はシステム化が進んでおり、キーワード入力であらかじめ質問と回答を検索して表示させる仕組みを導入している企業も増加しています。

最新の世界情勢や時事ネタ、業界情勢をキャッチアップし、想定質問を更新する作業もします。

少し前だと「ブレグジットが業績に与える影響は?」とか、今年だと「米中貿易摩擦による業績への影響具合は?」などのホットイシューは質問に挙がりやすいので、影響を受ける企業はテンプレ回答を準備していることでしょう。

株主総会に来た株主には企業から「お土産」としてお菓子とか企業のグッズがもらえることがありますが、昨今はこのお土産を廃止する企業が増加しています。

僕はお土産廃止賛成派です。

お土産を準備するにも当然会社にコストが発生しています。数多くの株主が来る総会では、お土産の物品に加えて、お土産を株主に配る人を社員とは別に会場側に人のアテンドを依頼し、その分の費用が発生します。

お土産代を自社株書いや配当の原資にしてくださいというのが本音です。

また、株主総会に来る株主にだけお土産を配るのは、総会に出席しない株主との間で扱いが平等ではありません。

実際株主総会当日では、お土産を出す企業の総会だと入り口でお土産だけもらってそのまま帰る株主もちらほらといます。

対応すべき株主が1人減るので、現場の担当者としては楽で嬉しいですが、そこまでして大したものではないお土産が欲しいのかと思ってしまいます。

また、公然のオフレコですがいわゆる社員株主をどの企業も出席させています。

社員株主も人選して手配しています。

総会屋みたいな変な株主に前席に座られないように、通常は真っ先に社員株主に最前列に座らせて、議案の議案の採決をとるときには誰よりも大きな拍手をする係りです。

半日仕事をサボって総会で椅子に座っているだけで良いので、本当に楽ですよ。

僕の社員株主になって半日仕事をサボりたいなあ。しかし自分の企業の株式なんて絶対に買う気にならない。

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