「貯蓄から投資へ」ではなく「貯蓄から資産形成へ」

先週の日経新聞の投資面の「十字路」に、興味をそそる記事がありました。

貯金大好きで投資しない民族日本人ですが、よく言われる「貯蓄から投資へ」というアプローチではなく、現役世代に「貯蓄から資産形成へ」というアプローチで個人の資産構成を変えていくという考えです。

日本人は、投資をせずに貯金ばかりしているとよく言われます。

約1500兆円もの個人資産が蓄積されているのに、そのほとんどが株式には向かわず、現金や預金として銀行口座に死蔵しています。

これがアメリカになると、貯金ばかりせずに資産が株式にちゃんと向っているため、日本もアメリカその他先進国みたいに貯金ばかりせずに個人資産を株式市場に投入すべきだと。

2019年3月末の比率でいうと金融資産の構成として、日米比較は以下のようになります。

・現金:預貯金の割合

日本:53.3%

アメリカ:12.9%

・株式プラス投資信託の割合

日本:13.9%

アメリカ:46.3%

数字で見ると一目瞭然ですね。日本人は金融資産の半分以上を現金で持っているのに比べて、アメリカ人は半分近くを株式や投資信託といった投資資産として保有しています。

安全志向の日本人の感覚からすると投資比率高すぎな感じはしますね。

だから暴落とかあると国民すべて大ダメージを受けますし、国民の財産がかかっていますので、国としても株価を上げていくのが国策となります。

日本は超高齢化と税金を負担する現役世代の減少により社会保障制度が崩壊するのは時間の問題なので、政府としてはもはや国民が自助努力で老後資産を形成して欲しくてたまらないんです。

そのため、現金で溜めずに投資して、資産形成にとっとと励んでくれと後押しする制度をたくさん作っています。NISAやイデコですね。

もっとも、制度を作っても日本人の投資嫌いはなかなか治りません。

それもそのはず、右肩上がりのチャートを描くアメリカ株とは異なり、日本では投資しても儲からない環境がずっと続いていました。

日経平均は30年経ってもバブルの最高値を超えることができませんし、日本は長らく物価が下がるデフレ社会なので、現金で持っていた方がむしろ有利という状況でした。

NTTドコモか何かの株主総会に出席した時に、高齢で長きにわたりその会社の株式を持っている株主が、含み損が辛いと社長に嘆いていましたが、そんな経験ばかりだととても株式投資しようなんて思わないでしょう。

また日本人の個人金融資産の大半は、高齢者世帯が持っています。

現役を引退した彼らにとっては、将来の健康不安に備えてお金を減らさないことが最優先であり、元本を損なう危険性のある投資行動をとるのはむしろ不合理な行動となります。

個人金融資産のメイン層である高齢者が投資をしない以上は、日本人の金融資産の構成における株式の割合など上昇するはずがありません。

日経の記事の著者は、「現金・預金の比率を減らして株式・投資信託の比率を上げる」ということは、「高齢者に預金を下ろして株式や投信を購入するように勧めること」に等しいと言います。

高齢者に無理に投資を強制しても、それは適切とは思えません。現金として持つのが合理的なライフステージに入っている層です。

退職金をもらってから初めて投資をしてお金を溶かすなんて悲劇でしかないです。

投資は、若い世代が将来の資産形成・国に頼らない(むしろもう頼れない)老後の資産形成のためにするものです。

なので、高齢者に投資を促すのではなく、現役世代に投資による資産形成を促すアプローチが大切だと主張します。

高齢者が国の個人金融資産を独占している以上、全体の比率で見るとどうしても「貯蓄から投資へ」と流れがきているは言えませんが、これを現役世代に対象を絞って比率を見て、投資に向けるお金が増えているかを確認しそれを促していくことが大切です。

ゆっくりと確実に資産形成していきたいものです。