自動翻訳ソフトの進歩が目覚ましいです。
僕は一貫して会社の法務畑で仕事をし、日々英文契約書のレビュー対応もしております。
そのため一般的な法務部員よりも英文契約書対応ついてはノウハウがあるものと思っていますが、最近の機械翻訳ソフトの精度の高さには驚かされます。
現在、とある外資系企業から提示された割とヘビーな英文契約書のレビューを実施しており、ビジネス部門との密な連携が必要とされる案件なため、毎日1日2時間くらいずつ時間をとって、逐条で契約書の内容を読み合わせて内容を細かく確認して会社としてどう修正案を出すかという検討会を実施しておりました。
ビジネス部門の担当者が営業力が高く行動力があって人当りの良い根明な勢いで意思決定のできる人で、自分と相性が良く楽しく仕事ができています。
自分はどちらかというとアナリストタイプで、細かいところやリスクの指摘をしつつもじゃあ結果どうするかという意思決定ができないタイプなので、逆のタイプだと逆に仕事がしやすいんです。
このビジネス担当者は英語がそんなに得意ではない人で、担当部門で契約している翻訳ソフトを使って英文契約書を機械翻訳して日本語にして検討会をしているのですが、この自動翻訳の精度がかなり高くて驚きました。
機械翻訳って、グーグル翻訳のようにたまに笑ってしまうような翻訳があって全く使えないというイメージだったのですが、それが180度覆りました。
感覚として90%ほどは追加の翻訳修正が必要ないくらいです。
日本語の契約書でも契約書に慣れていない人は読解が困難なように、どうしても契約書なのでどんなに綺麗に翻訳しても契約書に慣れていない人にとってはスムーズに読み込むのは難解なところもあるのですが、日本語の契約書をかじっていればそこまで苦労なく読むことができる内容になっていました。
しかも、これが典型的な売買契約書や業務委託契約書など、いわゆる「よくあるパターンの契約書」だったら精度が高いのは納得できるのですが、今回の文書は、巷の法務関連本や学者や弁護士が書いている英文契約書の本を見ても決して出てこないような非典型的な契約書で、特殊な分野のさらに特殊な取引という性質が強いかなり独自色が強い内容の英文契約書でした。
それを機械翻訳でここまで高いレベルで自動翻訳されて、これは英文契約書の翻訳家は駆逐されて失業していくのではと思わざるを得ませんでした。
自分が担当している仕事も今後駆逐されていくのではと、機械(ソフトウェア)に脅威を感じました。
実際機械翻訳で今回のレベルで翻訳されると、外部専門家に出す必要はないです。
日本語で参照したいという用途であれば、単価も高く時間もかかる英文契約書になじみ深い弁護士や専門の翻訳家に出すよりは、間違いなく機械翻訳で対応してしまうでしょう。
契約書などの法務文書とか、製薬、化学、医学に関する文書の翻訳は、どうしても専門的な知識が必要となるため一般的なビジネス文書と比較して翻訳の単価が高い分野です。
そのような分野で精度が高い翻訳活動ができれば、市場で希少性を維持することができ、それなりの単価で翻訳家としての仕事が成立していました。
老後は英文契約書の日本語への翻訳家としてバイトでもしたら生活費の足しにでもなるかなあとか考えていた時期もありましたが、これでは人間の需要がなくなってしまいますね。
直ちに人力での翻訳が不要になるというレベルではありませんが、これまでは一文字いくらという単価設定で完全翻訳をお願いしていたのが、機械翻訳で翻訳済みの文書の最後のプルーフチェックだけ依頼するなど、翻訳の依頼の仕方も変わっていくのではと感じます。
今後も指数関数的に翻訳の精度はどんどん上昇していくのでしょうし、時代の進歩に触れた瞬間でした。
なお、株式投資をしている身としては、この精度の高い自動翻訳ソフトを出している会社への株式投資が真っ先に思い浮かんだのは言うまでもありません。
コロナ・ショックで株価も低迷しているし、含み損まみれの中国株を全部売ってその分をこの会社に全額投資して一発勝負に出ようか。
しかし競合も多くて常に研究開発が必要となるレッドオーシャン市場でしょうから、悩みます。