アメリカ企業の社内弁護士事情~ワークライフバランスを求めて企業へ

法科大学院の設立に伴う弁護士数の増加に伴ってか、日本企業でも社内弁護士の数が増加しています。

企業で当事者として働いたほうが面白い、弁護士余りで職がない、大企業のほうが給料が高い、ワークライフバランスがいいなどいろいろと企業内弁護士になる理由はあるようです。

それでもまだまだ日本では新卒でそのまま企業で教育を受けた無資格の法務部員の数のがずっと多いのが現状ですが、アメリカ企業をみると、企業の法務部の社員は皆弁護士資格を持っています。

アメリカでは、日本と異なり弁護士になるのは簡単です(とよく聞きます)。日本でいう行政書士レベルで弁護士資格がとれると聞いたこともあります(ホントかいな)。

対人口比でみても、おそらく弁護士の数は日本の10倍以上は多いのではないでしょうか。それだけ弁護士の希少性がなく競争も激しいということです。

Japan as No.1と言われ2000年頃には日本のGDPがアメリカを追い越し世界No.1になるという予想もあったバブル経済最盛期には、弁護士の数だけ無駄に多くても何もGDPに貢献しないから無駄じゃないのかという論調がアメリカで起こったようです。

僕が務めている会社のアメリカのグループ会社にも法務部門があるのですが、中心社員はやはりみんな弁護士資格をもっています。

アメリカは日本のように「新卒」みたいな概念はないのかなと思いますが、最初は事務所に勤務していたが、転職して企業の法務部に移ったというケースがほとんどです。

彼らと話をして転職の経緯を聞いてみると、「ワークライフバランス」を理由にあげる人が多いです。

事務所での仕事がハードワークで持続可能性がなかったんですね。

事務所に勤務していたころは、それこそ朝早くから深夜遅くまでクライアント第1に仕事をしており、心身ともにとてもストレスフルだったので、企業でのバランスのとれたワークライフバランスは魅力的だと言います。

弁護士事務所で働くと大手のパートナーだとタイムチャージで5万、6万、7万とかは普通に請求されます。アメリカの法律事務所のタイムチャージでこれまで1番時給が高かった弁護士のタイムチャージは11万円でした。

もちろん1回事務所にお金が入るのでこれが全額もらえるわけではないと思いますが、かなりの高年収であることは変わりありません。

こういった好待遇を脱却しても、仕事と私生活のバランスをとりたいものなんですね。

日本の会社だと専門知識や資格をもっていても、実務で重宝されるのは結局は社内調整能力とか社内回しの良し悪しとか前例を踏襲するやり方とかその会社内部独自の人脈だったり関係性だったりして、社歴が長い人が優遇されがちですが、転職が盛んなアメリカ企業だとそういったしがらみも日本企業に比べて少ないでしょうから、専門家にとっては純粋に専門知識を発揮できて働きやすい国なのかなと感じます。