世界最高の経済学者ケインズですら景気動向は読めないという事実

世の中のメディア媒体を見ていると、様々な景気に関する予測ニュースや記事を目にします。

企業の経営者の予測や、著名金融機関のアナリストの予測、東洋経済やプレジデント、ダイヤモンド、アメリカの媒体だとウォールストリートジャーナルやバロンズなど、溢れんばかりです。

金利はこれからどうなるとか、為替はどう動くのか、不動産価格は上がるのか下がるのとか、日経平均は3万円に行くとか。

東洋経済なんてこの前日経平均は3万円に行くとか言っておきながらすぐに日経平均はリーマンショック前の状態に近いとか言いますからね。本当に節操がない。他の雑誌も同じです。

正解のない問題だと人々の不安を煽って稼げますからね。

私たち個人投資家は、こういった記事に一切踊らされてはいけません。

アメリカ大統領も日本の総理大臣もゴールドマンサックスのCEOも、誰も将来の景気変動や市場変動を予測する力は持っていません。

世界最高のマクロ経済学者、ジョン・メイナード・ケインズでさえ、今後の市場変動を予測することに失敗しているのです。

ケインズといえばマクロ経済学の大家で、官僚試験で2位になった時に「試験官は僕より経済学を知らないのであろう」と言い放ったイケメンです。

「ビッグミステイク」(マイケル・バトニック著、日経BP)という本を読みました。

この本は、偉大な投資家たちの「投資でやってしまった失敗談」を特集した本です。しくじり先生みたいなものです。

ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガー、グレアム、ジェシー・リバモアそしてケインズの投資での大失敗も含まれます。

ケインズの項目が1番読んでいて楽しかったのですが、ケインズは投資で大失敗の経験があるんですね。

成功と失敗の波を繰り返しているのですが、1929年の世界恐慌ではなんと資産の80%を失っています。

世界最高の経済学者が恐慌を見抜けず、資産のほとんどを失っているのです。

ケインズでさえ投資で失敗しているんだから、個人投資家が投資で失敗しないなんてことは不可能なんです。

ケインズが投資を「美人投票」にたとえていることは有名な話です。

参加者は、自分が最も美しいと思う人を選択するのではなく、他の投票者が最も美しいと思うであろう人を選択しなければならないと。

つまり投資で利益を得るには、自分だけその銘柄が良いと思っても無駄で、市場の平均的な意見で「魅力的な銘柄」と見做される銘柄に投資する必要があると言っているわけです。

そうしないと株価は上がっていきません。

そして参加者全員が、「平均的意見だとどうなるだろうか」と考えるわけですから、「平均的な意見だとどうなるであろうか」と予測する「市場参加全員の平均値」を予測するという作業が必要となってきます。

複雑ですね。

ただ、ケインズはこんな手法では継続的に儲けられないことを身をもって経験しました。

もともと彼はマクロ的観点から今後の景気や市場動向を読み、通貨や株、コモディティと様々な投資対象に手を出していましたが、先に述べた世界恐慌での大失敗や、恐慌後の1930年にはマイナス32%、1931年にはマイナス24%資産を失うといった散々な結果となりました。

ケインズがマクロの動向を読めないなら、一体誰が将来のマクロ経済の行方を予想できようか。誰もできないに決まってます。

こうして、「短期のマクロ動向を読む投機家」を放棄し、「長期的な視野を持つバリュー投資家」へと鞍替えします。

ケインズは確か経済学の学説でも180度意見を変えたことがありますが、投資家としても手法を根本的に改めたわけです。

経済総体の動向を予測するという無駄な作業を放棄し、個別企業の研究をするようになりました。

そして、その企業の株価が内在的な価値より割安な時に投資するようになります。

バフェットやグレアムに通じる投資方法ですね。

こうして市場の心理や金利や為替といったことから離れ、一企業をミクロ的に見ることで、その後は投資で大成功を収めます。

「千年公理の投資」にもありましたが、FRB議長の声明を10回読むより、個別企業の年次報告書1つ読むほうが価値があるんですね。

日銀総裁の景気動向の判断なんてカスほどの価値もなくて、JTさんのアニュアルレポート読むほうがずっとずっとずっと大切なわけです。

これだけいっても企業のアニュアルレポート読まないで、日経のどうでもいい記事に不安になったり、俺は市場を出し抜けると思うんだから、もうどうしようも無いね。男って本当に謎に自信過剰です。

世界最大のマクロ経済学者も市場心理を読めない。

自分がケインズより優秀だと思う人以外は、市場心理を予測するなんて無駄なことはやめましょう。

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