「投資の大原則 人生を豊かにするためのヒント」を読みましたので、レビューします。
著者は、ある程度投資をしたことがある人にはお馴染みで、投資の鉄板本とも言える「ウォール街のランダムウォーカー」の著者のバートン・マルキールと「敗者のゲーム」のチャールズ・エリスの2人という豪華な顔ぶれです。
2人とも、もう御年80代なのですね。
著者のスタンスからわかるように、本書は個人に対して長期積み立てのインデックス投資を推奨する内容です。
「ウォール街のランダムウォーカー」と「敗者のゲーム」は分量が多く読むのに骨が折れる本ですが、本書は3時間もあれば読めてしまう分量です。
投資初心者に向けて「シンプルに、しかしシンプルすぎないように」という原理・原則のもと基本的なことを叙述するというスタイルなので、前2作のエッセンス版のような位置付けと思って貰えば良いかなと思います。目新しい内容は特に含まれていません。
退屈すぎてそれ故ほとんどの人が実施できない王道が読みやすく書かれています。
見方を変えれば、あまりにシンプルで読みやすいので、逆に書いてあることを読んでもすぐに頭から出て行きそうな種類の本です。
読書って頭を使って悩みながら読まないと脳に内容が落ちないので、「軽すぎる」本という印象は持ちました。
投資本をたくさん読んでいる属性の人には、内容が薄くて物足らない内容であるとは思います。
エッセンス本としてたまにペラペラと読み返す位置付けになりそうです。
本書は、いわゆる3倍・10倍になる株を選定する方法とか、3年で誰でも資産が10倍になる方法とか、巷に溢れている「手っ取り速く誰でもお金持ちに慣れる簡単な方法」について述べた本ではありません。
速くお金持ちになることを「目指さない」人に向けたものです。
お金持ちになる「裏技」的な面白い内容が書いてある刺激的な本を求める人には退屈な内容です。
投資に関する本を読んでいる人にとっては、まあそうだよね、バフェットもS&P500に連動するインデックスに投資せよと言っているし知っているけど変化球のない真面目な王道ばかり言っていて眠気が出てくる本です。
それが本書の価値でもあります。
万人にとって、ゆっくりだけど時間をかければ将来お金持ちになれるシンプルな投資哲学や投資方法が述べられています。
著者の主張を簡単にまとめると、以下のようになります。
- 投資における最大の武器である「複利」を最大限利用するため、若年期からコツコツと貯蓄に励む
- 税制上の優遇措置をフル活用する。会社の福利厚生や退職金形成に向けた制度など
- 市場以上に賢いものはないのだから、「インデックス・ファンド」に投資する。コストも最も安いし。
- 1にも2にも分散投資が大事である
- ドル・コスト平均法(定期定額長期積み立て投資)を実施し、市場の値上げりや値下がりは気にしない。頻繁に売買すれば手数料がかかりリターンを下げ投資は失敗する。長期投資しよう。
- 株式と債券のバランスを年1回リバランスし比率を見直す
アクティブファンドの大多数が手数料だけ取られてインデックスファンドのリターンに及ばないこと、分散投資として株式だけでなく債券にも投資すべきこと、投資で一発成功するよりも大失敗をしないことが大事であること、市場予測に振り回されないこと、といったことも記載があり、広く長期投資の方法の知識を得ることができます。
また、これも特に大事な主張ですが、個人投資家は銘柄選択を行うこととマーケットタイミングを計ることはリターンを押し下げるからするなと言っています。
個人投資家が銘柄選択してもパッシブなインデックス・ファンドのリターンには勝てないし、マーケットタイミングを見計らって自分が買い時だと思った時に投資すると、必ずや「高値買いの安値売り」で損することになるというのが理由です。
機械的にパッシブファンドを買って積み立てていくという手法により、投資のリターンを引き下げる最大の原因となる人間の感情を排した投資が可能となります。
大多数の「俺は市場より賢い」と思っている個人投資家には理屈はわかってもこれを放棄するのはなかなか難しいですね。
ただ、これが最も確実に長期的に資産を形成できる蓋然性が高い方法なのはそうなんでしょう。
なお自分が本書で1番関心を持った内容が、バートンとチャールズは「持ち家派」ということです。
早く家を買うことを勧めています。
家族連れを対象にした記述であることと、日本のように住宅が買った瞬間から値下がりせずリーマンショック前のサブプライムバブル時のような特殊な時期を除けば住宅価格が値上げりしているアメリカ市場を前提としているという前置きはあるのですが、家族の幸せのためには早く家を買うことは最も賢い投資であると言っています。
クレジットカードの借金とは異なり、住宅ローンを借りるのは賢明だとも言及しており、持ち家派には嬉しい限りです。
同じく投資家に人気の古典である「バビロンの大富豪」でも家を早く買うことを推奨していたので、海外の投資本は持ち家派が多い印象です。
もともと賃貸派でしたがマイホームを買った自分としては、とても励まされる内容でございました。
インデックス投資をする気の無い人にも、おすすめできる良書です。
コメントを残す