バフェット銘柄のクラフト・ハインツが、同社の歴史上最悪の暴落を記録しました。
2月21日に発表した2018年第4四半期決算では、「Kraft」や「Oscar Mayer」といった同社のブランド・商標に関して154億ドルに及ぶのれん代の減損処理を行い純損失が102億ドルとなったことに加えて、同社の会計方法についてアメリカの証券取引委員会から召喚状を受け取っていたこと、また配当金を36%減配することを発表し、1日の下げ幅ではクラフトハインツの歴史上最大となる30%近い下落を記録しました。
通期の数字では希薄化後のEPSは前年の$9.03から$-8.39となっています。
純損失1兆円超えって、いつかの東芝と同じような。
会計方法って、粉飾でしょうか。なおバフェットはこれが公になる7~10日前にはこの事実は知っていたようです。
暴落直後のバフェットのアメリカCNBCのインタビュー記事も見ましたが、バフェットにインタビューしている足を組んでいる偉そうな女性キャスターの態度が印象的でした。
バフェットは、クラフト・ハインツを売らないと発言しています。
しかし、ハインツによるクラフト買収で金を払いすぎたと。また、クラフト・ハインツの高いブランド力は健在としながらも、競合としてアマゾン・ウォルマート・コストコの脅威が大きいと言っています。
メディア記事を見ると、バークシャーとならんでクラフト・ハインツの大株主である3Gキャピタルの経営への関与の仕方を批判するものが多いです。
徹底したコスト削減に注力しているが、それによって新規のブランドへの投資や商品への投資ができていなかったと。自分が従業員だったらコスト削減に余念がない会社はストレスがたまって嫌になりますね。
最近の決算書を見ていると、コスト上昇とプライシングパワーがなくなっていると、稼ぐ力が落ちていることを漂わす記載はありましたが、それが一過性のものなのか永続的構造的な問題なのか個人投資家が見抜くのはほぼ不可能です。
バフェットが見抜けなかったのですから。
株価が30%近く暴落したことを見ても、合理的な市場も全く織り込んでいませんでした。
クラフト・ハインツ以外の加工食品メーカーも直面している問題ですが、業界的に製造コスト・運送コストが上昇しています。
農産物やパッケージに使用するアルミニウム、紙資材といったコモディティー価格が上昇しています。
加えて、これは日本でも同様ですがアメリカでは人材の不足から輸送コストが上昇しています。
こういった慢性的なコストの増加を補える需要の増加と商品単価の上昇によるプライシング効果が発揮できていないのが苦境の原因と言われています。
また、加工食品を敬遠するようになった消費者の嗜好の変化も同社製品の競争力を低減しています。
シェアを減らさないために値下げしてでも売って、利幅は下がるのでそのたびに利益率が悪化するという悪循環です。
2017年にはユニリーバ買収提案を行って株価が上昇して飛ぶ鳥を落とす勢いの憧れの銘柄だった彼の君が、まさか株価はそのころから60%近く暴落し減配という株主滅多打ちの刑が処せられるとは、そんなの宝くじが当たる確率よりもありえないことだよと当時の自分に言ったら一笑に付されそうです。
僕はクラフト・ハインツの株主です。今回の暴落と減配ですが、自分のポートフォリオに対する直接的なダメージという意味では軽微です。
「影響は軽微です」って企業のプレスリリースの定番文句の1つです。数多くの銘柄に分散投資しているので、数字的なインパクトは小さいです。これがアルトリアの減配だったらはちゃめちゃ大混乱でした。と強がっています。
キャピタルゲイン目的でなくインカム目的の分散投資による自分の精神状態のディフェンス力は確認できました。
古来中国の故事成語で、「泣いて馬謖を斬る」(ないてばしょくをきる)というものがあります。
これは、胸躍る三国志時代に、蜀の馬謖という、天才軍師・諸葛亮孔明の部下が軍令に違反したため戦で敗れたさいに、孔明が大変可愛がっていた馬謖を軍規違反で処刑したときに涙を流したことからできた成語です。
個人の感情よりも、法・ルールの遵守が優先する。
どんなに可愛くて優秀な者であっても、それが法・ルールに背くものであれば然るべき対処をしなければならない。
この故事成語に従うならば、配当に重きを置く投資家からみれば「減配」という措置をとった銘柄はどんなに可愛い者であっても処刑対象ものです。
クラフト・ハインツは、連続増配銘柄ではないものの「減配しない」銘柄であったように記憶しています。36%の大減配という有様なので、弁解の余地はないです。
泣く泣く斬り捨てるのが一貫性のある正しい投資家の姿だと考えます。
しかしながら、僕はクラフト・ハインツが可愛くて仕方ありません。
東野圭吾の小説のエンディングのような法や刑事が勝つストーリーよりも、伊坂幸太郎の初期作品に見られるような一般社会的な法やルールには反してはいるものの個人的正義を貫き目的を達成するストーリーに惹かれる人間です。
株主のくせにカゴメのケチャップと旧雪印の乳製品ばかり買っていた責任も感じています。
またスーパーやコンビニの棚がプライベートブランド商品で占拠されている現状に抵抗する最後の1人でありたいと思っている人間の1人です。
幼いころおばあちゃんとスーパーまで歩いて買いに行ったナショナルブランドがPB製品に駆逐され思い出が奪われている現状に我慢できません。
ハインツのケチャップやクラフトのチーズが競争に敗れ将来消えるとは露ほども思っていません。ブランド価値はまだまだあるので、楽観論を述べれば本当にやばくなったときはアマゾンとかユニリーバとか他の会社が放っておかず買収かなんか株主は報われるのではと思っています。バフェットが株主ですけども。
ということで、クラフト・ハインツを売りますせん。死が二人を分かつまで、ホールドしますせん。
今月の配当金は〇〇円でした!前年より〇〇円不労所得が上がりました!嬉しいです!という自己満記事の配当金受領先からクラフト・ハインツがそっと消えていたらそういうことだと察してください。