株価と実体経済とは全く別のものです。
株価は現在ではなく6ヶ月とか1年先の将来の経済動向を反映して動くと言われますが、コロナ・ショックでの株価の動きを見ていると、それがとてもよく認識できます。
コロナ・ショックの相場を見ていると、COVID-19感染拡大に関する悪材料が出ているのに株価が下がっていないということが結構あるというのに気づきます。
むしろ悪材料に反応して株価が下がらなくなり、悪材料が出ることで逆に株価が上昇するようになっています。
例えば、NYダウが直近高値から約36%暴落し、現在ではそこから約半値戻しの段階にいるのですが、アメリカの新規失業保険申請者数が600万人を超えたという衝撃的なニュースが出た時、株価はどうだったかというと、普通に上昇しました。
600万人失業者なんて日本では考えられません。社会が崩壊してしまいます。なぜこんな不安定な国がGDP世界一なのか理解できません。
日本で暮らせてよかった。
また、新型コロナ・ウイルスに起因するニューヨークでの1日の死者数がそれまでの最多記録となった日に株価はどうなったかというと、上昇しました。
普通に考えると、失業者が600万人いるという異常事態が判明し、また死者数が過去最多を更新したという経済に悪影響を及ぼしそうな報道が出れば、株価は暴落してもおかしくないはずです。
しかし、株価は下落するどころか結構な上昇をしたのです。
IMFの幹部が、新型コロナ・ウイルスの影響で世界経済のGDPが悲観的に減少すると表明した日も株価は上がりました。
このように、後追いのニュースの内容と株価の動きはリンクしません。
「株価は現在ではなく将来を反映して動く」ということが実感できるかと思います。
爆発的な失業者数が出ることや、ニューヨークでの死者が増えること、世界各国のGDPが減少することはもはや「織り込み済み」で、株式市場にとっては何ら新規性のある出来事ではないわけですね。
株の本を読んでいると、よく「株価は経済の先行指標である」とか、「株価は将来の予測を反映して動く」とかよく言いますが、コロナ・ショックでの実際の株の値動きを見ていると、そのような知識を実体験としての理解を伴って自分の知見として落とし込めることができます。
日経平均が大幅に上昇した日はよくヤフーニュースに「日経平均一時500円高」といった具合にニュースが出ますが、そのようなニュースの読者のコメント欄を見てみると、「実態経済は良くなっていないのに株価が上がる理由がない」「コロナ・ウイルスで死者が増えているのに全然実態とあっていない」「失業者も倒産企業も増えているのに理解できない」といった否定的でシニカルなコメントがいつも圧倒的多数を占めますが、そのように単純な思考をしているとずっと株で儲けることはできないし、資本家にずっと搾取されることになるわけです。
株価は今現在の経済状態を反映するものではないのです。
ファッション雑誌だって6月の段階で7月号とか8月号を先に出版しますが、それと同じです。
株価は将来を先取りします。
「失業者が爆発的に増える」「倒産企業が連鎖的に増える」「コロナ・ウイルスの拡大はもっと広まる」といったネガティブなシナリオは、すでに1か月前に株価は反映されていました。
投資家は見ているところが違います。
日本で安倍首相が緊急事態宣言を出すという報道が出た時に日経平均株価が下落せずに爆上げしたのも同じです。
海外機関投資家は日本が緊急事態宣言を出すという前提を織り込んだ状態で株式投資をしていましたので、緊急事態宣言を出すことは何もネガティブサプライズではないわけです。
それにしても日本株は意外なほどに値動きが強いです。