【AAPL】公正取引委員会がアップルをヤフーへの取引妨害として独禁法違反の疑いで調査

8月16日の日経新聞の1面で、公正取引委員会が、アップルがヤフーの取引を妨害したとして独占禁止法違反の疑いで調査をしているという記事がでていました。

事案の対象となっているのは、ヤフーが運営する「ゲームプラス」というゲーム配信プラットフォーム事業への圧力を掛けたという疑いです。

アップルは、ヤフーのゲームプラスによりアプリゲーム市場の顧客を奪われると考えていたようです。

「ゲームプラス」とは何か

ゲームプラスとは、ヤフーが運営しているゲーム配信サービスです。Yahoo! Japanのトップページの「ヤフーゲーム」からすぐたどり着けます。

ゲームプラスは、スマートフォンアプリと異なり、ゲームを端末にダウンロードすることなく、マルチデバイスで、すなわちスマホからもタブレットからもPCからもヤフーゲームのHPにアクセスすることでいつでもゲームをすることができます。

スマホゲームだと、まず端末にダウンロードし、ダウンロードされた端末でしかゲームプレイができませんが、ゲームプラスは、端末側にゲームを落とし込む必要がなく、すべてウェブ上で処理できてしまうゲームです。

そのため、ヤフーゲームプラスのHPにアクセスさえできれば、同一ゲームを通勤時にはスマホで、家に帰ってからは画面の大きいPCでプレイするということも可能です。

これまではアプリをダウンロードしないとデータ処理が追い付かなかったのですが、通信速度が強化されてきたことで、ダウンロード不要でウェブ上でゲームができる時代になってきたということのようです。

ヤフーの狙いはアップルとグーグル排除のゲーム配信プラットフォーム創出?

もちろんヤフーが直接そのようなことを言っているわけではありませんが、目的としてはスマートフォンによるゲーム配信の2大プラットフォーマーであるアップルとグーグルに対抗するプラットフォームをつくることにあるのでしょう。

アップストアやグーグルプレイでゲームを配信すると、売上げの3割はアップルとグーグルへの手数料として徴収される仕組みになっています。

加えて、iOSやAndroidでゲームを配信するには、プラットフォーマーであるアップルやグーグルの事前審査が必要で、アップル・グーグルの定めた基準や意向に沿わないゲームは、審査を通らず配信ができないのです。また当然配信途中でも、ゲームの仕様についてうるさく口を挟むことができる権利をアップルが留保している契約書を結んでいるものと思われます。しかも、その基準はおそらくアップル・グーグルの意向でいつでも変わられるようになっているのでしょう。

アプリ市場が広がれば広がるほど、日本人がスマホゲームでガチャを回せば回すほど、手数料として胴元であるアップル・グーグルにお金がチャリンチャリン入る仕組みです。プラットフォーマーは強いですね。

こうしたアップル・グーグルの審査に不満をもったり高い手数料を嫌がるゲーム会社もいるようで、ヤフーのゲームプラスは条件によってはこうしたゲーム会社を誘致し既存のアプリ市場からヤフー市場へとゲーム会社を奪う効果も果たし得ます。

アップルはヤフーに何をしたのか?

ヤフーゲームプラスの出現を脅威に感じ、ヤフーに対して顧客誘導や投資の縮小を迫った疑いがあるということです。ヤフーもアップストアでアプリを配信しているようですが、アップルから取引停止を拒否するという圧力がかかったようです。時価総額100兆の企業に圧力かけられたら、もうどうしようもないですね。

結果として、ヤフーは去年の秋からゲームプラスの広告宣伝を停止しています。

このアップル側による圧力が、独占禁止法に定める取引妨害の構成要件に該当するおそれがあるとして、公取委による調査が始まりました。

公正取引委員会は一体何をしていたのか?

僕がこの事案を知って1番疑問に思ったのは、公正取引委員会は一体今まで何をしていたんだろうという疑問です。

記事によれば、2017年の秋にヤフーから本件に関する報告が有り、調査が開始されました。それからもう1年経過しています。単純な疑問として、なぜ1年もたっているのに本事案の詳細な事実が解明されず、公取委としてアップルに対して何の処分をするのかそれともしないのかが全く決まっていないのが謎に思います。

ゲームプラスのような新規事業は、初動のマーケティング展開による顧客誘因が1番大事になるでしょう。それが2017年の秋にはヤフーは販促活動を停止していたというのですから、1年間も何も宣伝しないでサービスを提供していたことになります。消費者への認知を広げることができないままの赤字運営だとしたら大変な損失です。

海外企業、しかもアップルという超大企業が相手なので、時間がかかっているのでしょうか。やり取りの相手となるであろうアップルの超一流であろう法務部や超一流の代理人弁護士(アメリカのアップル本社なのか、アップルの日本法人が対象なのかはよくわかりません)と日本の役所が対等に渡り合えるとは到底思えません。

仮に違反があった場合、これが欧州の独占禁止法の事案だったら、課徴金3000億とか、すごいインパクトのある数字も出せるのでしょうが、日本はそんな高額な課徴金を出す度胸もないし前例もないでしょう。

日本の独禁法違反による過去最大の課徴金額が130億円ほどなので、純利益4兆円のアップルにとっては何の影響もありません。

アップルの株価への影響

今回の独禁法違反の調査によりアップルの株価に影響はあるのでしょうか。

ないと思います。

今日のアップルの株価も上昇していますので、市場はその判断です。

売上げの大部分を依存するiPhone売上に関する案件でもなく、サプライヤーや販売業者に不当な条件を課すといった案件でもなく、アップル自身が多数の取引先と直接関与するという影響力の大きい取引に関する事案でもありません。あくまで、対ヤフー単体での、ゲームプラス事業の縮小を目的としてヤフーのApp Storeでのアプリ配信を停止しようとしたという、アップルの事業規模からみればとてもマイナーな規模の話です。また高額な制裁金リスクの高い欧州独禁法での事案ではなく制裁金リスクの低い日本での事案です。

アプリ市場縮小への不安

ヤフーゲームは僕は知りませんでしたが、周りでもプレイしているとう人を聞いたことがありません。もともとマイナーなものだしラインナップのゲームも正直魅力的なものがないように思うので、たとえアップルの圧力がなくてヤフーが満足にマーケティング活動をすることができたとしても、感覚的にはヒットするというのは難しいのではと思います。

それにも関わらずアップルが本気で潰してきたということは、アプリ形式としてダウンロードしなくともウェブ上ですべて操作が完結してしまう方式のゲーム配信を相当脅威に感じているということでしょうか。技術の進歩は止められませんので、当然ヤフー以外の事業者も同じような仕組みのゲームプラットフォームを今後構築・展開していくことでしょう。

その動きが広がったときに、スマホでアプリ形式でApp Store・グーグルプレイからダウンロードしてゲームやコンテンツを遊ぶのではなく、そのまま直接ゲーム配信サイトのウェブブラウザにアクセスしてゲームやコンテンツで遊ぶというスタイルが広がり、今のアプリ市場が次第に縮小していくという流れは加速していくのかもしれません。

 

 



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