世帯年収1000万、妻専業主婦子ども2人の家庭に年120万もNISAに投資する資金はない

先日、日本政府はこれまで検討されていた少額投資非課税制度(NISA)の恒久化を見送る方針を固めたと発表しました。

株の売却益や配当金には、通常約20%ほどの税金がかかるのですが、NISAを利用すると年間120万円の枠内での投資利益にかかる税金が非課税になります。

NISAについては、年金制度の現状維持は不可能だから国民一人ひとりが投資を促進して自己責任で老後資金を形成してくださいという政府のパッケージキャンペーンの1つと思っていますが、そんなに投資を促進したいなら年間120万円とかせこいこと言っていないで無制限に非課税にすればよいのにと思います。

NISAは期間限定で実施されており、恒久化の見送りにより、このままでは2023年でこの制度が終了してしまうおそれがでてきたとのことです(積み立てNISAは除く)。

NISA恒久化が見送られた理由としては、NISAは富裕層への優遇措置となっているから延長は認められないというものです。

金融業界の定義だと「富裕層」とは金融資産1億円以上の階層のことをいいます。

そういった本当のお金持ちにとっては年間120万円の非課税枠など少額極まりない枠で、NISAなんてあってもなくても富裕層は富裕層だし何がどう富裕層を優遇しているという論理になるかは謎ではあります。

もともとNISAは一般庶民の投資による資産形成を促進する目的がありますので、どちらかといえば「非」富裕層が非課税措置によって資産を形成するためのツールととらえるほうが適切です。

となると、NISAがなくなって損するのは富裕層ではなく一般庶民なので、なんだ一般庶民のくせに非課税で投資するなんて生意気なと怒った富裕層が世間受けのいい「富裕層優遇」という理由を捏造して庶民のための制度を廃止にかかったということか。

庶民が自分の利益になる制度を自分で破壊してしまっているとしたらなんとも滑稽です。

株式投資をする人は日本ではかなりの少数派で、どちらかといえば異端に属します。

ネット上では株式投資していると言えても、リアルの世界では言うのがはばかられる場面は多々あります。僕は義母に対して株式投資しているなんて決して言えません。

日本は汗水働いてお金を稼ぐのがあるべき清い姿で、投資によって苦労しないでお金を稼ぐのは汚いという空気があり、投資で稼ぐと世間からは嫉妬され、みんな投資で成功した人が転落するのが見たくてたまらないんです。

しかし嫉妬するだけで、自分で勉強して株式投資をしようという意欲がない人が多いのは不思議です。

NISAを活用すると年間120万の範囲で購入した株式の利益(譲渡益・配当)が非課税になりますので、NISAが富裕層優遇だとすると、年間120万円を株式投資できる層は富裕層であると見做していることになります。

株式投資をしている立場の人からすると、年間120万ごときで富裕層とは失笑に付するぜというのが正直な感想ではないかと思われます。

ただこの辺りは、やはり実際に株式投資をしている人と世間一般とのズレは思いのほか大きいのでしょう。

株のことで頭がいっぱいで株のことを考えるだけで脳に快感物質が充満する投資中毒の人の意見が正常などと思ってはいけません。

僕などは資産の大半がドル資産で、現金などわずかでお金が余っていればさっさとアメリカ株にしてしまいたいという世間的には異常で異端な人間ですので、家計に余裕があれば年間120万などすぐに使ってしまうような金額です。

しかし、株式投資をしない人が多数派で、株式投資をするとしても持っている資金で全力投資をするという人よりもあくまで余剰資金の一部で投資をするという人がマジョリティーであると想定されます。

そういった平均的世間人にとって、年間120万円ものお金を株式投資にあてることのできる人は近寄りたくない変人かお金によっぽど余裕のある人に感じるのでしょう。

例えば、世間一般で高年収だと認識されている年収1000万の人が余剰資金として年間120万円を投資にあてることができるかを考えてみます。

モデルケースとして、年収1000万の夫・専業主婦の妻・子ども2人の家庭で考えます。

独身で年収1000万の人は知りません。この国は昔から夫と専業主婦の妻、子供2人の家庭をモデルケースとして各種の社会制度を構築しますので、それに倣います。

独身だと資産運用に保守的になる必要性もないし120万くらい余裕で投資に使おうと思えば使えると思いますので、日々苦労の多い家庭持ちの人のケースで考えます。

さて、年収1000万円のこのモデルケースの家庭が年間120万投資できる資金があるかというと、それはないというのが答えになるでしょう。

高年収のステータスの1000万円ですが、これは家庭を持っている人はすごく実感すると思いますが1000万あっても全く裕福な暮らしなどできませんしただたたお金が足りません。

住宅ローン・子どもの教育費・自動車費用・お出かけ費・家族の洋服代・・・湯水の如く各方面にお金が流れていきます。

栓が空いていてひたすらお湯が流れるお風呂にずっとお湯を溜めようとしてもがいても水位は一向に上がらずにだんだん下がっていく・・そんな気分を味わいます。

特に、子供が1人でも私立小学校や私立中学校にいった時点で家計は火の車決定です。これだけで教育費月10万以上が確定し1000万程度の年収だと経済状況は貧困家庭です。

子供が2人とも私立にいったときには、何をどうあがいたところで妻が働かない限り1円も貯金できないと思われます。

それでなくとも月10万でも貯金するのも大変なことですし、もしこれができれば優秀な家計であると思われます。

年収1000万の一般家庭で年間120万円貯金するのがこんなに大変なのです。

また仮に120万円貯金できたとして、家庭持ちの人間が貯金全額をフルインベストメントするなんて狂気の沙汰を実行できるわけがありません。

結果、貯金ができたとしても余剰資金の一部のみを投資に向けると考えると、年間120万の枠はとても全額使い果たせる枠ではありません。

年収1000万稼げる人は全体の4%で、年収1000万の世帯は全体の10%ほどです。

こういった通常のサラリーマンとしては成功していると思われ上位層にいる人間ですら120万円全枠使いきれないのであるから、NISAを利用して最もメリットを受けている層は富裕層であると考えるのは腑に落ちないこともないです。

そもそもNISAを使う余裕自体がない人が多数という状況でしょうから。

これが世間一般の通常の感覚なのだと思います。

専業主婦・子持ちで資産の8割・9割を平気で株式投資している自分の感覚が異常で世間ズレしているのだと充分に自覚して、善良なる一市民として今日も生きていきます。