円はもはや「安全通貨」ではない?リスク回避の円買いが起きにくくなっている理由・キャリートレードの縮小

アメリカ経済が不調に陥ったり、国際情勢が不安定化・不透明化した時に真っ先に海外機関投資家に売られるのは日本株であり、通貨は円が買われるので株安・円高とダブルパンチを食らうのがここ数年の日本市場の情けない姿でした。

何かあると日経新聞でも経済ニュースでも「リスク回避の円買い」とか、「有事の円買い」とか表現されて、最強通貨?として円が君臨していました。

通貨の需要が国の国力を表すものであるとすれば、少子化で子供は増えず、高齢化で国が老いていき人口は減少し、イノベーションも起きにくい将来は暗いジリ貧がメインシナリオのこの国の通貨がなぜ真っ先に買われるのか誠に謎でしたが、これは別に投資家が日本円が安全だと思って円を買っているわけではなく、後で述べますが円キャリートレードによって、単にそれまで売られていた円が急激に買い戻された結果として円高になるというメカニズムです。

こういったリスクオンとリスクオフの相場で円は荒い値動きとなり、ボラティリティも高かったですが、2019年のドル円相場はとてもレンジの狭い値動きで、104円〜112円ほどの値幅でした。

このレンジ幅の狭さは1980年以降で最小ということです。

また、最近では有事でも以前ほどは急激な円高が起きにくくなっており、円の値動きが変わってきたのを実感している人もいることと思います。

今週の東洋経済の「マネー潮流」に、JPモルガンの佐々木融氏の記事が載っており、その中でドル円相場が動かなくなってきた原因についての考察がありました。

最近のドル円相場の力学を俯瞰するのに参考になる記事でしたので紹介します。

佐々木氏によれば、ドル円相場のレンジが縮小している理由として、ドルではなく円の値動きが小さくなっているのが重要であり、円の変動幅の縮小の理由として、円キャリートレードが縮小していることがあげられるということです。

投資家は、リスクオンの相場では低金利である円を売って、高金利通貨を買うことで金利差分を稼ぐというキャリートレードを行います。

これがリスクオフの相場になると、このキャリートレードの巻き戻しが発生し、高金利通貨を売って円を買うという逆の現象が起きるので、円需要が増えて円高が発生します。

まさに「リスクオフの円高」「安全通貨である円への逃避」です。

こういった投資家にリスク回避性向が強まる時に生じる円買いの前提となる、リスクオンや平時における「円売り」が現在減少しています。

円キャリートレードがなくなれば、その巻き戻しとしての円買いも発生しないため、有事でも円が買われません。

この円キャリー取引が実施されなくなっている原因は、佐々木氏によれば以下の3つです。

  1. 海外勢は今の円は実質ベースで歴史的な安値水準にあるとみている
  2. 日本以外も低金利政策を実施しており、高金利通貨がなくなり、キャリートレードが行われなくなっている
  3. 円よりユーロの方が低金利であり、ユーロを売る投資家が増えている

海外投資家勢が現在の円が歴史的な割安水準とみなしているというのは、ビッグマック指数なのか金利差なのか国力なのか、何を根拠にそうみなしているのかの記述がなかったのでわからないのですが、金融の最前線にいる氏の意見としてそういうもののようです。

高金利通貨がなくなっているというのは、そうでしょうね。FXのドルやポンドやオーストラリアドルのスワップポイントも前よりだいぶ低くなっています。トルコリラはまだ高いのかもしれませんが、危なっかしくて買えません。

なお、このような原因は構造的なものであるから、2020年のドル円相場も狭いレンジ相場となる可能性が高いであろうということです。