着実に稼ぐ力を成長させるフィリップモリス【2019年通期決算】

フィリップモリス(PM)が2019年通期決算を発表しましたので、内容を確認しました。

順調な決算内容だったと思います。

本業は好調で、営業活動によるキャッシュフローが前年比で6.5%増加しています。なお為替一定ベースだとこの数字は16.7%UPという結果になります。

キャッシュ・イズ・キングで、本業の稼ぐ力が増大していると安心できます。

調整後の営業利益率は39.5%と、前年から1.1%上昇しています。

フィリップモリスも市場が勝手に期待していた加熱式たばこのバラ色の未来が消えたり規制懸念やらなんやらで一時株価が大分停滞していましたが、こうして数字を見ると着実に前年から稼げる力は上昇しています。

以下、PMの決算資料からの引用です。単位は100万ドルです。

2019年 2018年 増減
売上高 29,805 29,625 0.6%up
営業利益 10,531 11,377 7.4%down
純利益 7,185 7,911 9.2%down
EPS 4.61 5.08 9.3%down

会計上の数字を見ると、売上高こそ前年比で0.6%伸びましたが、営業利益、純利益、EPS(1株あたり利益)は減少しています。

しかし、一事要因を除いた調整後の数字で見ると、前年より数字はアップしています。

通年のEPS(1株あたり利益)をみると、$4.61と前年の$5.08からdownしているのですが、これは一時的な特殊要因の影響が大きいです。

カナダの子会社の訴訟関連費用の計上や資産の減損処理・ロシアの消費税・付加価値税監査費用(Russia excise and VAT audit charge)という一事要因がEPSを下げています。

これら特殊要因を除いた調整後かつ為替一定ベースの数字では、EPSは$5.32となり前年比4.3%upという数字となります。

つまり特殊要因を除いた本業の力に問題はないということです。

世界のたばこ市場(出荷量)は2%の縮小

通年のたばこ出荷量は2%Downです。

内訳は、従来の紙巻きたばこが4.5%Down、加熱式たばこ(アイコス等)の出荷量が44.2%Upです。

地域を個別にみると、EU地域では紙巻きたばこの出荷量は3.0%のダウンです。日本は7%とかの数字だった気がしたので、EU地域の需要は底堅いですね。

PMによると、米中市場を除いた世界市場におけるたばこ業界のたばこ製品(紙巻たばことアイコスなどの加熱式たばこ含む)は前年比2%の減少ということです。

PMの全体出荷量も2.0%減少していますので、市場の縮小と同ペースで出荷量が減少しています。

出荷量つまりたばこの需要が減少しても営業キャッシュフローが増え調整後のEPSも増加しているということは、単価の上昇効果が需要減を上回っているということでしょう。

米中を除く世界市場でのPMの出荷量ベースでのシェアは、前年比0.1%上昇の28.4%です。

なお期待されている加熱式たばこ(アイコス)の出荷数量は、全体の8%ほどで売上高ベースだとPM全体の20%弱となります。

2020年通期の予想

フィリップモリスは、2019~2021年の為替一定ベースの売上高とEPSの年平均成長率を5%~8%上昇させることを目標としています。

2020年通期のEPS(1株あたり利益)は、$5.50以上を想定しています。

2019年度の会計上のEPSは$4.61なので、19%UP想定です。

配当性向85%

気になる配当については、PMは2019年2.6%増配して、1株当たり$4.68の配当金を出しています。

2019年の通期EPSが$4.61なので、今年は配当性向100%超えでした。

来年の予想EPSの下限が$5.50ですので、現在の配当金ベースだと配当性向は85%ほどとなります。

大きな増配は期待できない状況です。

たばこ株の中ではPMが1番割安

現在のフィリップモリスの配当利回りは5.35%です。

配当利回り5%でも十分高配当株ですが、他の大手たばこ会社のアルトリアグループは7.27%、JTが6.65%と超高配当銘柄になっています。

単純に数字を見ると配当利回りが高いアルトリアやJTが割安に見えますが、各社の通期決算を見ると、僕は配当利回りが最も低いフィリップモリスが1番割安であるように思いました。

株価は基本的には将来の利益の伸びを反映するものです。

JTは2020年の数字は減収減益予想で配当性向90%とあっぷあっぷのもう限界かつ2兆円の「のれん」減損リスクを抱え、アルトリアも2019年通期決算でJUULを減損処理し赤字決算となり、EPS成長予想は4~7%とPMよりも低い数字を想定しています。

JTの連続増配がストップ/ 国内たばこ事業はジリ貧で 2020年は配当性向90%へ【2019年通期決算】

2兆円もの「のれん」減損リスクを抱えるJT

アルトリアはJUUL減損による赤字決算も収益力には問題無し【2019年通期決算】

その中で、PMは将来の不明確性が1番低く、二けた成長という派手さはありませんが決算内容を見ていると、1桁台中盤から後半の利益成長をしてくれる蓋然性が最も高い会社であるように思います。

1番安心感があります。

このあたりは、現在の市場の値付けは合理的だと感じます。

たばこ株でリスクの低い投資対象は、フィリップモリスだと思います。

なおもっとリスクのない方法は、たばこ株なんか買わないことです。