自社株買いしまくって債務超過になって国に血税による救済を求めるボーイング

ボーイング倒産危機か?という報道が出ております。

もともと737MAXの墜落事故による運行停止の影響を大きく受けていたうえに、今回の新型コロナウイルス流行の追い討ちを受けて、キャッシュが回らなくなったようです。

ボーイングは、もともと債務超過の企業です。

え?ボーイングって借金まみれなの?と思われるかもしれませんが、アメリカの優良企業の中には債務超過の企業が少なくありません。

これは、本業が赤字でやばいということではありません。

本業は堅調で莫大な純利益を稼いでいる一方で、それを上回るような金額を自社株買いや配当によって株主還元しているのです。

黒字だけど、入ってくるお金よりも多くのお金を株主に返しているから、債務超過になってしまっているんです。

スターバックスや、マクドナルド、マルボロで有名なフィリップモリスも債務超過な企業です。

本業がしっかりしてキャッシュを稼ぐ力がとても強いので、債務超過でもキャッシュが回らなくなるということは想定されないので問題ないんです、通常は。

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しかし、今回のボーイングはコロナ・ショックにより、ついにお金が回らなくなってしまいました。

株価は大暴落しており、最高値の440ドルから現在は100ドルを下回るまでになってしまいました。

航空機業界はボーイングとエアバスの2強で、軍事産業も扱っているボーイングは国益に関わってくる企業だから絶対に倒産するわけがない。

737MAXの問題に株価が低迷している今が絶好の買い時だと考えて手を出していたら焼かれているところでした。絶対大丈夫だと思っていました。

ボーイングは、アメリカ政府や金融機関に600億ドル(6.6兆円)規模の資金援助を求めています。

航空機・軍事というアメリカの基幹産業を支え、裾野が広く国民の雇用問題にも大きく関わってくる企業なので、ボーイングが潰れるというのは普通に考えるとありえません。

国益に関わってくる企業ですから、国としての全体最適を考えるとアメリカ政府はこの会社を支援すべきだと思います。

トランプ大統領も、ボーイング救済を表明しています。

もしトヨタ自動車や三菱重工が倒産危機になったら、血税を注いで救済すべきだと思うでしょう。当然だと思います。

しかし、おそらくアメリカ人の一部が血税を使ってボーイングを救済するのに感情的に納得できないのが、ボーイングはこれまで稼いだ利益を自社株買いや配当によって株主にお金を還元しまくっていたということです。

結果として、債務超過となって、今回のダブルショックで倒産の瀬戸際となっています。

余った資金を自社株買いなんかせずに、普通に貯金して自己資本を厚くして財務体質を強化していれば、こんなことにはならなかったでしょう。

兆円単位で自社株買いして株価を上げていたわけです。

米ボーイング、自社株買いを2兆2500億円に引き上げ 配当は2割増

株主にお金を貢ぎまくった挙句に財務体質が脆弱となり倒産危機になったのは自己責任なのに、「大きすぎて潰せない」から国民の血税を使って救済するのでは、モラルハザードを引き起こし、救済するのはおかしいのではないかという意見は消えないと思います。

かつて日本中を焦土と化した爆撃機、B-29 スーパーフォートレス(空の要塞)を開発した企業がまさか株主還元しすぎた結果倒産の危機にあるとは、なんとも滑稽でもあります。

株主還元なんか眼中になくて預貯金ばかりして磐石な自己資本を持つ日本企業様を見習ってくれ。

国民のお金使って救済するんだったらさすがに配当金はもう無配にしないと国民に筋を通すことはできないでしょう。

素朴に思うのが、自社株買いに注ぐお金を兵器開発に注いだほうが軍事力の強化につながってアメリカの国益に沿うように思うのですが、株主を優先するのですね。

僕がアメリカ国民だったら、防衛産業というのは公益的な側面もあるので、純資本主義的な原理にはそぐわず、株主に報いるよりも空中空母開発の資金にあてたり、ロシアや中国の超音速のミサイルを迎撃できるシステムの開発に資金を充てたりと、資本効率が悪くても国防に資する資金の使い方をして欲しいと思うと思います。

ただこのような資本主義的なやり方でもずっと世界No.1の軍事力を維持しているのは事実なのですが、中国の軍事企業だと自社株買いなんかせずにひたすら余った金は兵器開発に注ぐのではないでしょうか。

737MAXの問題を抱えている中での新型コロナショックと、タイミングが悪く不運ではありましたが、債務超過企業の弱みが出たというか、ワイド・モートでキャッシュを稼ぐ力が強い企業でも、平時の前提が崩れると脆くもお金が回らなくなって危機に陥ってしまうというのが明るみに出ました。

アメリカ企業は株主還元に旺盛なので自社株買いが好きですが、今回のボーイングの件を受けてその傾向が少しは異なる方向へ向かうでしょうか。

自社株買いばかりして債務超過になって、有事にキャッシュが回らなくなって結果潰れて株式が紙切れになりましただと、株主も報われません。

株主還元の形として、株主にとって自社株買いが有利なのかそれとも配当が有利なのか、さながら持ち家がいいのか賃貸がいいのかという神学論争のように語られることがあります。

自社株買いも配当も同じ株主還元ですが、配当は課税される一方で自社株買いは課税されないので自社株買いのほうが株主には有利という見解がありますが、今回のボーイングのようなケースを見ると、自社株買いして結果倒産して株式価値が0になるんだったら(ボーイングは倒産しないと思いますが)、課税されても配当金をちびちびともらって現実的な利益を得たほうが嬉しいです。

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