12月17日に航空宇宙機器世界最大手ボーイング(The Boeing Company)が20%の増配を発表しました。
これで2012年を起点とする8年連続の増配となります。
また増配と併せて、昨年の12月に承認された180億ドルの自社株買いの枠を200億ドルに増額する旨のアナウンスをしています。
今回の増配により、ボーイングは過去6年間で配当金額を325%も増加させたことになります。
ボーングはボーイング787とかの民間航空機の製造というイメージや、あるいは日本人には第二次世界大戦中にBoeing B-29 Superfortress(いわゆるB29、「空の要塞」)を開発した会社というイメージが強いですが、以下のような幅広い事業を実施している会社です。
「ボーイングは、民間航空機と防衛・宇宙・セキュリティシステムを製造し、アフターマーケットサービスを提供する世界最大の企業です。民間航空機、防衛・軍用機、電子・防衛システム、衛星、衛星打ち上げ機、高度情報通信システム、成果報酬型のロジスティクスとトレーニングなど、幅広い製品とサービスを世界150カ国以上に提供し、売上高では米国最大の輸出企業の一社です。
ボーイングは常に革新的な製品とサービスを提供することで世界の航空宇宙業界をリードしています。顧客の要望に応え、より効率性を高めた民間航空機を開発するとともに、各国軍のプラットフォームや防衛システムを構築・統合し、先進技術によるソリューションや、融資とサービスの革新的なオプションを提供するなど、製品とサービスの充実に努めています。」
(ボーイング社の日本語HPの企業紹介ページから引用)
ボーイングの売上規模は、軍事部門よりも民間航空機部門のほうが大きいです。
僕はボーイングに投資はしていませんが、男の子心をくすぐって止まないこの銘柄は常に投資候補銘柄なので、1990年から2019年までの30年間の配当金と増配率の推移を調べてみました。
【BA】30年間の配当金及び増配率のデータ(1990年~2019年)
1990年から2019年までの1株当たり配当金と増配率の推移のデータを記載します。
2019年の配当金額は、今回の増配を反映したDPSを4倍した値で算出しています。
増配率は、当年の1株当たり配当金額を前年の1株当たり配当金額で割って算出していますので、必ずしも四半期ベースでの増配率とは一致しない場合があります。
西暦 | 1株当たり配当金 | 増配率 |
1990 | 0.475 | NA |
1991 | 0.5 | 5.3% |
1992 | 0.50 | 0.0% |
1993 | 0.50 | 0.0% |
1994 | 0.50 | 0.0% |
1995 | 0.50 | 0.0% |
1996 | 0.515 | 3.0% |
1997 | 0.56 | 8.7% |
1998 | 0.56 | 0.0% |
1999 | 0.56 | 0.0% |
2000 | 0.56 | 0.0% |
2001 | 0.68 | 21.4% |
2002 | 0.68 | 0.0% |
2003 | 0.68 | 0.0% |
2004 | 0.77 | 13.2% |
2005 | 1 | 29.9% |
2006 | 1.2 | 20.0% |
2007 | 1.4 | 16.7% |
2008 | 1.6 | 14.3% |
2009 | 1.68 | 5.0% |
2010 | 1.68 | 0.0% |
2011 | 1.68 | 0.0% |
2012 | 1.76 | 4.8% |
2013 | 1.94 | 10.2% |
2014 | 2.92 | 50.5% |
2015 | 3.64 | 24.7% |
2016 | 4.36 | 19.8% |
2017 | 5.68 | 30.3% |
2018 | 6.84 | 20.4% |
2019 | 8.22 | 20.2% |
【BA】30年間の1株当たり配当金額の推移(1990年~2019年)
1990年から2019年までの30年間の1株当たり配当金額の推移のグラフです。
ボーイングはここ6年間の増配ペースが凄まじいので、直近6年で一気に配当金額が伸びています。
1990年に0.475ドルだった配当金額は、30年後の2019年には8.22ドルと、17.3倍になっています。
【BA】29年間の増配率の推移(1991年~2019年)
1991年から2019年までの29年間の増配率のグラフです。
全体として見ると増配率の凹凸が激しい銘柄です。
過去29年間の増配率の平均値は11.0%です。
1991年の配当金は2019年には17.3倍になっています。
2010年~2019年の直近10年の増配率は18.1%となります。10年で配当金は4.89倍になっています。
2015年~2019年の直近5年の増配率は23.1%です。
直近5年の増配率は過去30年の増配率を2倍以上も上回っています。
最大増配率は2014年の50.5%です。こんな増配されたら嬉しくて空港までボーイングの飛行機の写真撮りに行ってしまいますね。
2014年以降の6年間の50.5%⇒24.7%⇒19.8%⇒30.3%⇒20.4%⇒20.2%という増配率の推移は凄まじいの一言です。
過去29年で見るとここ6年間はボーイングのキャリアハイです。
最低増配率は0%となり、過去29年で11回(1992年~1995年、1998年~2000年、2002年、2003年、2010年、2011年)ほど配当据え置きとなっています。
29年のうち11年が増配なし(配当金額据え置き)という歴史なので、安定した連続増配を好む場合はマイナスでしょうか。
ボーイングは、連続増配年数は今回の2019年の増配を入れて8年連続増配銘柄となり増配の歴史自体は浅いです。
ただ、グラフを見るとわかりますが過去30年間で1回も減配したことがありません。
景気に敏感で好不況の波が激しい製造業の銘柄というイメージがあったので、これは意外でした。
リーマンショック直後でも減配はしていません。
「連続増配銘柄」だけでなく「減配しない銘柄」でもくくると魅力的な銘柄が出てくることがあります。
ボーイングは50年以上連続増配する配当王でも25年以上連続増配する配当貴族でも安定した連続増配株でもありませんが、過去30年減配がないという点とトータル期間での優れた配当金の増配率を見ると、配当金狙いの投資でも十分検討に値する銘柄だと思いました。
2%とか3%とか4%といったしょっぱい増配率で連続増配をなんとか形だけ継続するよりは、配当金の増配なしで据え置きの年を挟んでも、業績拡大期に二桁増配を連続してくれる銘柄のほうがむしろ潔くてよいと考えることもできます。
【BA】配当性向の推移(2008年~2017年)
ボーイングの2008年から2017年の10年間の配当性向の推移です。
数字はMorningstar社のHPからとっています。
10年間の平均配当性向は46.7%となります。
また2013年~2017年の直近5年間の平均配当性向は45.7%です。
直近の配当性向も50%以下と、まだ余裕があります。
6年連続で20%以上(厳密には19.8%以上)の増配を継続してもこの配当性向なので、業績拡大は大正義です。
【BA】現在のバリュエーション
ボーイングの2018年12月19日現在の株価は328ドル、配当利回りは2.08%となっています。
株価は2018年は年初来10%ほど上昇しており、直近5年では2.4倍になっています。
株価の上昇により凄まじい増配を挟みながらも配当利回りは低くなっています。
かつて我が国の国土を焦土と化したB29を開発したこの会社に投資して得た利益を三菱重工や中島飛行機に投資したいというささやかな野望を持っているのですが、如何せん株価が上昇しすぎており貧乏性の僕は投資できません。
川から現れたヘルメース神に、お前が落としたのは古臭くて代わり映えしない滅びゆく加工食品をつくっている会社の株式なのか、それともまっさらな少年の心をくすぐって止まない世界最先端の数学・物理学といった人類の叡智たる自然科学を駆使した美しい飛行機やロマン溢れるスペースシャトルをつくっている会社の株式なのか、と聞かれたらへらへらとしっぽを振りながらもちろん私が落としたのは日々航空宇宙業界の進歩に貢献している世界最先端を行く後者の会社の株式ですと答えるのですが、なぜか含み損でいっぱいの加工食品会社の株式をいっぱい抱えている恥知らずの木こりになりたい投資家です。
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