村上春樹の「騎士団長殺し」を読了しましたので、簡単にレビューします。まるで小学生の夏休みの読書感想文のように。
僕はハードではなく文庫版で読みました。第1部と第2部でそれぞれ上下2冊あるので、計4冊です。
ページ数にすると厚いのですが、すらすら読めてしまうので1日読書に集中すれば1冊読めてしまいます。サラリーマンの人は年休使って静かな図書館で読むのがおすすめです。
感想サマリーとしては以下のようになります。
・前半面白くて夢中になって読み、後半かなり失速。まるで大差をつけて首位独走だったのに後半戦になって13ゲーム差を逆転されて巨人にメークレジェンドされた2008年の阪神のように。
・これまでの村上春樹作品の劣化コピーの要素が強く、作品としての傑出度は平均以下。まるで打率2割8分、本塁打15本に満たない成績をあげた長野のように。
・可愛いヒロイン不在でときめき要素、萌え要素は皆無。まるで炭酸の抜けきった三ツ矢サイダーのような味になってしまった、「ミドリちゃん」のいない「ノルウェイの森」のように。
・後半にいけばいくほど現実世界のものでないもの(観念的な存在や非現実世界の舞台、ファンタジー的要素)の登場シーンが多く、退屈。まるで「蛇足」という故事成語はこれらの要素を指すために生まれてきた言葉であるかのように。
僕の中では低評価な作品です。
村上春樹作品をいくつか読んでいて村上春樹が好きな人には、いつもの村上春樹テンプレが期待されるテンプレのレベルに満たない状態で包含されている小説だという感想を抱きやすいのかなと思います。
前半はとても面白かったです。物語の主人公は、妻から離婚を切り出された男が山奥の立派な家を借り一人暮らしして絵を描くことから始まります。
会社をふけって定年後のおじいちゃんしかいない図書館に籠って夢中で読み進めました。
主人公は相変わらず孤独で、料理が上手で、レコードでクラシックを聴くのが上手で、上品に酒を嗜み、そして特定の属性の女性にはもてて女性に不自由はしておらず、人妻のガールフレンドがいます。
スマホなんて無粋な機械を使うこともありません。このあたりはいつものテンプレ通りなのでとても安心感があります。
そして相変わらず夢の中で女性と関係を持ち、それが現実世界の具体的結果として具現化されます。
僕は村上春樹作品は、ファンタジー要素とか空想要素とか歴史的要素とか、つまりは人間ドラマ以外の要素が一定程度濃くなってくるとついていけなくなり途中で挫折してしまいます。
ねじまき鳥や1Q84しかり。海辺のカフカも、猫のパートは途中からすべて飛ばして人間パートだけ読みました。ダンス・ダンス・ダンスはすべてを夢中で読めましたが。
今作は、後半から次第に非人間の観念的な存在が登場したり非現実世界が物語に登場してきます。ラストにいくほどこれらが登場するので、ラストパートの4冊目は退屈で半分くらい飛ばして読みました。
主人公と妻の会話のやり取りとか、そういったヒューマンドラマ的なやり取りだけにコンセントレイトしてくたほうが楽しく読める読者です。
今回は、魅力的な女性が不在なのは残念でした。女性キャラはほどほどに出てくるのですが、みんな脇役で、好きになれませんでした。萌えるヒロインがいない小説を読む作業ほど苦痛なものはありません。ミドリちゃんみたいなキャラをまた出してほしい。
自分が年をとったせいでしょうか。20代前半のころは春樹的な小説のメタファー的表現にいちいち大げさに感動したり笑いながら心で線を引くように読んでいましたが、今回の小説では頭に残るような比喩表現が思い浮かびません。
最近の村上作品だと、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は読破しましたが、「1Q84」、「女のいない男たち」はいずれも途中で挫折してしまっています。
初めて村上春樹を読む人には、読みやすい本だと思います(たいていの本は読みやすいですが)。
僕は高校生の頃までは、本についてはノルウェイの森に出てくる永沢さんのような考えをもっていました。つまり、死んだ作家の本しか読まないというものです。
人生は有限だ。死後の時の試練を経た価値ある本しか読む必要はない、というものです。なので、国語の資料集に載っている作家の本を調べてそういった本を好んで読んでいました。
そういったとんがった人生の時期も時がたてばすぐに終焉を迎え、山田詠美、江国香織、東野圭吾、伊坂幸太郎、村上春樹、村上龍といった人気作家の本を好んで読むようになりました。
いつか、本当に読んでよかったと思う小説を紹介するあっふぃりえいと記事でもあげようと思います。予定は未定です。
村上春樹では、「国境の南、太陽の西」が1番好きです。