(画像は公式HPから)
2016年に公開された韓国映画「ビューティー・インサイド」を見たので感想です。
会社の人に勧められて見たのですが、とても良作です。
目覚めるごとに姿が変化する男性(なんと1人の人間を123人の役者が演じています!)と彼に見初められ彼を愛するようになった女性との正統派ラブストーリーです。
愛する人の受容による深い孤独からの解放、毎日姿が変わる愛する人をずっと愛することができるのか、彼から手を握り締めてくれないと自分から愛する人を見つけることができない苦悩や葛藤と、それでも彼女は姿が毎日それまでの彼ではなくなる彼と一緒にいる世界を選び受容するのか、といったことが描かれます。
ものすごく単純化すると、人が人を愛するとき、見た目が重要な要素になるのか(ただここでいう見た目とは、イケメンとか美女がより良いという意味ではなく、見た目が変わらず一定しているという側面も強いです)、見た目ではないその人に備わる、見えないけれどその人をその人たらしめている特質のようなものこそが大事なのか、愛の根本に触れる所を扱っている映画です。
映画の冒頭や導入部の一部だけネタバレして書きます。
主人公のウジンは、18歳の頃から、朝目覚めるたびに容姿と体つきが別人になってしまうという特異体質の持ち主です。しかも、目覚めるごとに性別、人種、年齢問わず、全くの別人になってしまうという設定です。子ども、若い女性、髪の毛が薄いおじさん、おばあちゃんまで、バラエティ豊かです。
イケメンの日はナンパに精を出し、美女の日は唯一の親友に一回だけでいいからお願いとお願いされる日々を過ごしたりします。このウジンの秘密を知っているのは、彼の母親と幼馴染の親友だけです。そんなわけなので一般社会で普通に生きていくことは困難で、親友と家具の会社を興して家具のデザイナーとして誰にも知られずにひっそりと暮らしています。
そんな彼が、アンティーク家具店でふと目にしたイスという美しい女性に一目惚れします。目覚めるごとに姿が変わるので、毎日違う顔と姿で恋しき彼女に会いに行きます。そして、彼女を誘うシミュレーションをし、時が満ちるのを待ちます。彼女が振り向いてくれるようなイケメンになる日を待って、いざ彼女を誘いに行くのです。
このシーンの前後辺りのウジンの健気な懸命さが、見る人の記憶に保管されたあの日の恋を絶妙に刺激するとともに、男性側の想像力を惹起して物語に引きずり込んでやみません。
僕はこれまで孤独を感じることが多い人生だったので、ずっと孤独だった自分を受け入れてくれる人が現れて孤独が氷解される系のシーンに殊更弱いです。本作品ではそこまで大きく印象的に描写していないのですが、母親と親友以外誰にも気にかけられないで独りで生きてきた彼が初めてイスに受容されたときの喜びと安心感を想像すると、涙腺が氷解されます。
本作品は映像の光の表現の仕方が巧みで、全体を通じて薄暗くそれとなく朧げな画面にすることで、丁寧なカメラワークと併せて光の優しい柔らかさが映えています。
音楽も文句なしにいいです。それ単独でも鑑賞に値するものですが、自己主張せず引き立て役に徹して映像と溶け合い、観る者の情緒にただただ心地よい感覚です。見事です。映像と音楽という独立した媒体を同時に合わせることで、1+1が2ではなくて3になる好例を提供しています。
また映画の中でフォーカスされる人物が最小限に限定されており、蛇足的な登場人物がおらずウジンとイスのやり取りに絞っていた点もよかったです。
主人公を演じる123人のうちの1人として上野樹里が割と重要なシーンで出てくるのですが、ここだけマイナスでした。役者自身の演技に問題があるというわけではないのですが、日ごろ見ている役者なので、急に強制的にこちら側の通俗的な世界に戻される感覚で不快感でした。
寒い季節の更けた夜に見て、その後に無性に妻や彼女をぎゅっと抱き寄せたくなるような、愛しい人と一緒に年老いていく愛おしさを認識させられます。
100点中89点です。
切ない余韻で無性に胸がキュンキュンするのは、ノラ・ジョーンズ主演の「マイ・ブルーベリーナイツ」と近似します。あの映画も全体的に映像を暗くしているようなイメージでしたが、その点も似ています。
ちなみに僕は本作を、子どもを寝かせた後に妻と一緒に見たかったのですが、妻に一緒に見ようと言ったら拒否されたので(映画の趣味が本当に合わないんです)、予定通り一人で見て一人で涙を解放させて満足しました。
本作品はエンドロールが流れ始めても、そこで止めてはいけない映画です。
さっそく見ましたが、ご案内の通り、久しぶりにいい映画でした。
心が温まりました。私も90点前後ですね。
ハン・ヒョジュ主演の「ただ君だけ」という映画も
昔、見ましたが、同じ純愛物で、楽しめました。
コメントありがとうござます。
他にもオススメの韓国映画のラブストーリーものがありますので、そのうちレビューをアップできればと思います。
「ただ君だけ」は、まだ見たことがない映画でしたので、ぜひ見てみようと思います。
ご紹介ありがとうございます。