2019年の10月31日に日本たばこ産業(JT)が2019年第3四半期決算を発表しました。
JTといえばもはや高配当株の代名詞のような銘柄で、現在の配当利回りはなんと6%を超えています。
株価が下落を続けており配当利回りが5%を超えた時にさすがにこれ以上は下落しないかなと楽観視しておりましたが、そんなことは全然ありませんでした。
気になる決算の内容ですが、良くありませんでした。
2019年1月〜9月の累計実績で、為替一定ベースの数字だと調整後の営業利益は対前年比で3%アップしているのですが、財務報告ベースだと、売上・営業利益・純利益全てが減収減益となっています。
以下、決算概要です。数字比較は1〜9月累計の前年比です。
- 売上収益は1兆6337億で2.5%ダウン
- 営業利益は4406億円で7.6%ダウン
- 四半期利益は3161億円で5%ダウン
- 2019年通期の業績は、売上高は従来予想維持も、調整後営業利益・営業利益・当期利益を従来予想から下方修正(前年比だとそれぞれ−13%、−10.6%、−11.8%)。
最近のJTの決算はこのパターンですが、国内たばこ事業は想定を超える不振・海外たばこ事業は伸長、となっています。
国内たばこ事業は、調整後の営業利益が対前年比で4.3%減少の1,654億円です。
対前年比で総需要が6%台後半減少しています。
紙巻きたばこの総需要に限れば9%台前半の減少です。
加熱式たばこ(プルームとかアイコスとか)の市場専有率は22%台半ばで、需要は伸びているものの競争は苛烈を極めているとのこと。
加熱式たばこの需要の伸びよりも従来の紙巻きたばこの需要の減少のが激しい状況です。
加熱式たばことかイノベーション製品はどうでもいいから紙巻たばこでしっかり稼いで欲しいです。
この国は海外に無駄に迎合したたばこの規制とかもういいからむしろ酒の規制してください。こっちのがずっと迷惑です。
海外たばこ事業は好調です。
総販売数量は5.8%伸長しています。
バングラデシュ・ロシアの企業買収効果が表れています。
調整後の営業利益も10.2%増加の3,384万ドルです。
プライシング効果(製品値上げ)もでています。
この会社は海外での売上の方が大きいグローバル企業ですが、このペースで国内事業が衰退していくともう本社が日本から海外に移転するかもしれませんね。
かつてアルトリアが米国内の訴訟の影響を恐れて米国外事業をフィリップモリスとして別会社に切り離したように、JTも衰退一途の日本事業と日本外事業で別々の会社にしてしまったりして。
JTはもともと、「一桁台中盤から後半の利益成長を目指す」というのが企業としての目標です。なので、この企業目標を達成しているかを1つのメルクマールとして決算をみる必要があります。
この「利益」というのが調整後営業利益なのか営業利益なのか純利益なのかは定義がないので何とも言えないのですが、通年予想の数字ではどの数字をとっても対前年比でマイナスという状況です。
今回の決算を見る限りは、2019年度はこの企業として掲げる目標を達成することができない蓋然性が高まりました。
リーマンショック後は毎年配当金額を増やしてくれる連続増配銘柄でもあり、株主への還元意識の高い銘柄ではありますが、利益が伸びない以上は、配当性向も高まっていますので増配も厳しくなっています。
減配の危険性もあるのではと懸念はありますが、JTの決算資料を見てみると、「厳しい状況ではあるものの、株主還元については、一株当たり配当金の維持・向上を重視」との記載があります。
この記載を見ると、現段階では「減配は避けたい」との経営陣の考えが読み取れます。
世界NO.1のたばこ会社を目指すと公言している企業がまさかグローバルスタンダードに背く「減配」を実施するとは考え難いですが、第4四半期の決算次第では可能性は否定できません。
何とか連続増配を期待したいところではあるものの、想定通りの通年決算なら増配せずに前年の配当金額を維持する流れがメインシナリオでしょうか。
いずれにせよ業績が成長しておりませんので当然EPS(1株あたり利益)も成長はなく、今年は高い増配を期待できる状況ではありません。
株価が低迷する高配当株にはそれなりの理由があるということです。
なおJTの直近の増配率は2.67%でした。増配率は年々数字が小さくなっています。
JTが2.67%の増配を発表(配当金150円⇒154円) 2018年度決算発表
今年の年間予想配当は、従来通りの1株あたり154円を維持しています。
もう何の魅力もない株主優待制度をさっさと廃止して、その分を現金配当にまわしてほしいです。
世界No.1のたばこメーカーを目指すJTが株主優待制度を存続させる理由がわからない