アメリカ株が四半期決算発表のシーズンに入っており、様々な企業の決算発表が続いています。
持ち株の中では、IBMとP&Gが好決算を発表して株価が伸張する一方で、インテルやマコーミックといった銘柄が決算に失敗して株価が急落しています。
四半期決算は、業績が前年同期比で伸びているかどうかではなく、実際の業績と将来の業績見通しがアナリストのコンセンサス予想を超えたかどうかで評価されます。
具体的には、売上高・EPS(1株あたり利益)・通年の予想EPSがウォールストリート予想と比較して上回ったか下回ったかといった具合ですね。
ちゃんと業績が伸びていれば問題ないように見えるのですが、決算発表前の株価はアナリスト予想の数値を織り込んだ株価となっていますので、その予想に外れた数値となると新たな数値を織り込んだ株価に調整されます。
アナリスト予想に合致した決算になることの方が珍しいので、誰か過去の偉人が言っていましたがアナリスト予想とは占い以下の精度でしかありません。
四半期決算という短期の業績さえ予想できないんだから、いわんや長期にわたる予想をやですね。
大学時代の超優秀な知り合いが大手証券会社でアナリストをやっていますが、あの超優秀な人でさえも企業の業績や先行きを正確に予想できないのですから、自分が予想するのはいかに無価値な行為かを思い知らされます。
さて、決算発表では銘柄によってはかなり株価が変動します。株価というのは波のように上下して動くものだと考えれば、逆張りが好きな人は優良銘柄が決算で短期的に急落したのを好機として良い投資機会になることもあります。
好決算で10%上昇する銘柄もあれば、将来業績予想を下方修正して失望を買って、逆に10%一気に株価が下落する企業もあります。
自分の投資した企業が決算で株価が上下するととても気になりますが、いちいち気にしていてはストレスにもなります。
自称・他称問わず長期投資家であれば、四半期決算に過度に振り回されるのは害のほうが大きいです。
人間は株価が上がった喜びよりも下がった苦痛を2.5倍大きく感じる生物なので(ダニエル・カールマンのプロスペクト理論による)、決算をいちいち見ていては上がるが下がるかを2分の1ずつとしても必ず苦痛による心労のが大きくなってしまいます。
決算を無視しろとまで極端に言うつもりはありませんが、決算を必要以上に気にしてイライラするよりは、気にしないほうが心労がなく長期投資できます。
それに、わずか四半期の決算で企業の今後を普通の個人投資家が適切に判断できるとは思えません。
例えば、世界一の投資家であるウォーレン・バフェットは、四半期決算は不要であると表明しています。
バフェットは、四半期決算について以下のように発言しています。
企業が四半期決算に縛られると、数字合わせという操作に走り、企業の長期的重要関心事に反する愚かなことをするものだ。この操作は一旦始めるとやめられなくなる傾向がある。最高経営責任者(CEO)がxxドルなどと四半期利益予測を出し、その企業の業績が改善された例など見たこともない。結果的に、企業は誤った情報を発信していることになる。私はマネジャーたちに、50年続く同族企業に居るつもりでやれば、正しい決定ができるものだと説いている。私は20ほどの企業の顧問をしているが、目標達成が困難になると数字を操作するという悪癖に陥りがちだ。しかも一度始めたらやめられなくなる。IR部門が風評被害を恐れ口を挟み、愚かなことをしがちなのだ
(出典:日本経済新聞HP)
本来企業経営は長期視点で考えるべきものですが、四半期という短い期間で数字合わせのために長期的に必要な投資を控えて短期の数字を取り繕うという弊害が指摘されています。
バフェットだけではなく、JPモルガン会長兼CEOのジェームズ・ダイモンも四半期ごとのガイダンスの発表はやめるよう言っています。
なおトランプ大統領も、アメリカ証券取引委員会(SEC)に対して、決算発表を四半期ではなく半年ごとにした場合の影響を調査するよう要請しているため、今後こういった動きは広まってくるかもしれません。
企業の業績というのは、景気のように波があるものです。
例えば、長期で平均値を出せば売上高もEPSも年率平均10%で成長しているような企業であっても、一部の業績の安定している生活必需品銘柄を除けば、毎年しっかりと平均値の10%どおり成長している企業は少数派であろうと思います。
ある年のEPSは20%成長したけど、翌年は−20%成長の年となり、その翌年は30%伸びたなど、平均値を激しく超えたり逆に下に行き過ぎたりと、上下に激しく動くけど、でも長期で平均すればちゃんと成長している、企業業績はそう言った側面もあります。
なので、グロース株投資で中短期のキャピタルゲイン狙いだと四半期決算に敏感になる必要性はあるのでしょうが、伝統的な優良銘柄を保有して長期で平均的な成長率の恩恵を受ければよしと考えている場合は、四半期決算でちょっと決算ミスして株価が下がったからといって慌てて売る必要はないように思います。
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