日本の代表的な高配当銘柄であるキヤノンの配当政策、配当金と増配率の推移を調べてみました。
キヤノンは、1949年の上場以来、年間での赤字は1度もないというすごい歴史を持った会社になります。
トヨタでさえ赤字に転落したリーマンショック時にも赤字にはなっていません。
また、いわゆるアメリカ株でいう「配当王」「配当貴族」のような歴史ある連続増配銘柄ではありませんが、1988年以降、1度も減配したことのない銘柄です。
キヤノンの配当政策
キヤノンの基本的な株主還元政策は以下のようになります。
「共生」の理念のもと、永続的な企業価値向上を目指し、株主の皆さまに貢献していきます。直接的な株主還元としては配当を中心に考えています。
- これからも、競争の源泉である製品力を徹底的に強化すると同時に、設計/生産技術/製造技術が一体となったものづくりを進め、高収益体質と成長の両立を図っていきます。こうした経営努力の積み重ねによる永続的な企業価値の向上を通じて株主の皆さまに貢献していくことを基本と考えています。
- 株主の皆さまへの直接的な利益還元については、配当を中心に考えています。
- 1988年以降、30年間にわたって一度も減配することなく着実に増配・配当の維持を行ってきました。
(キヤノンHPより引用)
直接的な株主還元としては「配当を中心」に考えていると言っているので、自社株買いよりは配当で還元する方針です。
配当だと税金分損をするため自社株買いの方が株主には有利だという意見もありますが、理屈ではそんなものかと思いながらも自分は直近の配当金を自分の財布に欲しいので、配当中心の方がありがたいです。
また、日本企業にありがちな「配当性向30%程度を目安に還元します」といった配当性向に関する記載はありません。
後で述べるように、配当性向が100%を超えても配当金を支払ってくれた歴史もあります。
キヤノンは歴史ある連続増配株ではありませんが、30年にわたって一回も減配していないのは、配当狙いの投資家にはとても安心感を与えてくれます。
【キヤノン】21年間の配当金及び増配率のデータ(1997年~2017年)
1997年から2017年までの1株当たり配当金と増配率の推移のデータを記載します。
特別配当がある年は、特別配当分も含んだ数字です。
増配率は、当年の1株当たり配当金額を前年の1株当たり配当金額で割って算出しています。
なおキヤノンは2006年に普通株式1株について1.5株の割合で株式分割していますが、株式分割を踏まえ調整した数字にしています。
データは、キヤノンのHPにある決算資料で遡れる最も古い配当金の記載が1997年だったので、1997年をスタートにしています。
西暦 | 1株当たり配当金 | 増配率 |
1997 | 11.3 | NA |
1998 | 11.3 | 0.0% |
1999 | 11.3 | 0.0% |
2000 | 14 | 23.9% |
2001 | 16.7 | 19.3% |
2002 | 20.1 | 20.4% |
2003 | 33.33 | 65.8% |
2004 | 43.33 | 30.0% |
2005 | 66.67 | 53.9% |
2006 | 83.33 | 25.0% |
2007 | 110 | 32.0% |
2008 | 110 | 0.0% |
2009 | 110 | 0.0% |
2010 | 120 | 9.1% |
2011 | 120 | 0.0% |
2012 | 130 | 8.3% |
2013 | 130 | 0.0% |
2014 | 150 | 15.4% |
2015 | 150 | 0.0% |
2016 | 150 | 0.0% |
2017 | 160 | 6.7% |
【キヤノン】21年間の1株あたり配当金及び増配率のデータ(1997年~2017年)
1997年から2017年までの過去21年間の1株あたり配当金額の推移のグラフです。

1997年に11.3円だった配当金は2017年には160円となっています。
21年で約14倍に数字が伸びています。
【キヤノン】20年間の増配率の推移(1998年~2017年)
1998年から2017年までの20年間の増配率の推移のグラフです。

全体としてみるとかなり増配率に幅があることがわかります。
最高増配率は65.8%、最低増配率は0%です。
過去20年間の平均増配率は、15.5%となります。
2008年から2017年の直近10年間の平均増配率は3.9%です。
総体としてみれば、増配率は減少傾向です。
特に2000年からリーマンショック前の2007年の増配率は凄まじいです。
この8年間はほぼ全て20%以上の増配をしており、平均増配率はなんと33.8%というとんでもない数字になります。
増配なしの年は過去20年で8回ありました(98、99、08、09、11、13、15、16年)。
なお具体的な数字は記載がないのですが、1987年から2017年までの配当金の推移のグラフがキヤノンのHPに載っていたので記載します。

(出典:キヤノンHP)
【キヤノン】配当性向の推移(2013年~2017年)
キヤノンの2013年から2017年の直近5年の配当性向の推移のグラフです。

直近5年の配当性向の平均値は76.7%となります。
2016年には配当性向100%を超えています。
余裕があるとは言えない状況ですので、業績の拡大を伴わないと、大きな増配は期待しにくい状況ではあります。
【キヤノン】現在のバリュエーション
現在の株価は3018円、予想配当利回りは5.14%となっています。
ついに配当利回りが5%を超えてきました。2016年以来2年ぶりです。
連日にわたるアメリカ株の暴落により日本株も総崩れの様相を呈しており、キヤノンの株価も下落の一途を辿っている状況です。
2018年の株価のパフォーマンスはマイナス30%と、ひたすら下落しています。
過去30年間減配したことがない銘柄という安心感もあり、配当利回りが5%を超えてくると配当目当ての個人投資家の買いが入りやすいかなと思うのですが、いかんせん相場状況が悪いので、株価が上がる要素がありません。
2016年に配当利回りが5%となった時はその後株価は底値から約40%上昇をしましたが、今は配当を貰いながら気長に株価が上昇していくのを待つ状況かなと思います。
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