買収によるシナジー効果って本当にあるんだろうか?

日々日経新聞を読んだりロイターのニュースなどを呼んでいると、企業買収の記事を目にすることがあります。

企業の買収のニュースが出ると、よく買収する側の会社の株価が下がって、買収される側の会社の株価があがります。

買収は現在の株価に一定のプレミアムを付けて値付けをするのが一般的なので、「高値買い」と市場から見做されたり買収の資金繰りで財務状態が悪くなったりするのが嫌気され、買収する側の株価にはネガティブな影響を及ぼすことがあります。

自分の持ち株企業は大手が多いので、買収する側の企業になることが多く、それによりよく株価が下がったりします。もっともそういう時に買い時になることもあるのですが。

企業買収すると、シナジー効果があるとよく言われます。

例えば販売網が強化されるとか、重複部門を統廃合することで人件費のコスト削減ができるとか、国内市場に強い会社と海外市場に強い会社が統合することで補充効果があるとか、ブランド力が強化されるとか、いろいろとあります。

1+1が2ではなくて3になれば理想の買収ですね。

しかし結果としては、企業買収はうまくいくより失敗するケースが多いと言われるように、実際は想定した効果を発揮せずに予定したシナジー効果が表れず失敗に終わるケースだって多いです。

特に日本企業なんかは、悲しいかな景気の頂点付近で不良債権にしかならない海外の会社を高値で買って、不景気になったら買収の特損で数千億とか兆の損失を出すのがテンプレ化しています。

実際に自分が所属している(た)企業も買収を実施する(した)ことがあり、新たな会社がグループ会社になることもありますが、実体験として、よく買収の効果と言われる「シナジー(相乗)効果」を感じることがなかなかできません。

逆に、買収して子会社となった会社を管理したり支援するために買収した側にコストがかかるだけでなぜ買収したのかわからないといったケースに遭遇したりします。

僕は間接部門の人間なので実際の事業上の効果はよくわからないのですが、子会社が増えると間違いなく親会社の間接部門のコストは上昇します。

法務部のケースでいうと、法務部の組織が整っていない子会社の法務相談や契約書対応を、親会社の人間が対応するなど日常茶飯事です。

かといって子会社の該当部門の人員を整理するといったこともありません。

単純に子会社の担当者が連絡窓口係となって案件を親会社に丸投げ(笑)してくることもあります。

最新の法令改正のキャッチアップやそれに対応した社内制度の整理など親会社は実施できる知力と体力があっても子会社にはそのいずれも欠如しているので、親会社側が子会社に介入してそういった社内の仕組み作りを支援したりします。

法務部門間の親会社・子会社の人間の交流はほぼないです笑。子会社の友達1人もいません。

経営にしても、何とか子会社のもっているブランドや技術を生かそうと親会社の時給の高い人が集まって知恵をこねくりまわすのですが、従来の事業を超える事業を生み出すのは並大抵のことではできません。

相互の事業を組み合わせた相乗効果といっても、基本的には親会社と子会社は別法人として別個に活動しますので、何も相乗効果のある施策が打てずに(打てたとしても不発に)終わります。

システム面でも、親会社と子会社のシステムは異なりますので、いきなり統合するなんてよっぽどのことない限りできません。

別々のシステムをそのまま何もなかったかのように用いるのが普通ではないでしょうか。

また、子会社側のシステムが遅れているのが通常なので、親会社が金をかけて子会社側のシステムを整えることもよくあることと思います。

システム系の部門を見ていると、時給の高い優秀な人が遅れている子会社のシステム整備にかかりきりになっていて、親会社的にはとてももったいない人員の使い方をしているのではないかと思うこともありました。

単純にこれまで僕が所属した企業の買収が下手くそだったからそうなってるだけだろうといえばそれまでですが、買収に失敗すると、ずっと不良債権を背負うような形で親会社にコストがかかり続けます。

そして、サンクコストを気にして、なかなかその子会社を切るに切れない状態になってしまいます。

あと、社風やカルチャーの違いはどうやっても埋まりませんね。

実際全く違うので、よくこんなゆるい社風の会社がこんな体育会系の会社買収したなとか(もちろんその逆のパターンも)、いったいだれとくの買収なのだと感じることもあります。

子会社の社風はこうだからだとか、親会社の社風はこうだからだとか、謎の形式二元論でお互いを決めつけて語って、お互い異物であるかのようにそれぞれの社員が話題にして、相互に無駄な排他感を抱いてしまいます。よろしくないです。自分の持ち株の企業にもそんな会社がいっぱいあるのかなあと思ってしまいます。

そんななので、巧みな買収で成長を続けるマコーミックとかローリンズはすごいなあと思わされます。