新型コロナ・ウイルスの流行による世界の株式市場の暴落で、自社株買いや配当を停止する企業が相次いでいます。
過去30年間1年たりとも配当金を減らしたことのないボーイングは、すでに株主への配当金の停止をアナウンスしています。
自社株買いしまくって債務超過になって国に血税による救済を求めるボーイング
JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、モルガン・スタンレー、ゴールドマンサックスといったアメリカ主要金融機関も、自社株買いの停止をアナウンスしています。
インテルも自社株買いの一時停止を発表しました。
アメリカ企業といえば株主還元です。株主に報いるために、配当や自社株買いに精を出し、稼いだキャッシュ以上のキャッシュを株主還元として株主に支払います。
その結果、債務超過となる企業はゴロゴロいます。
スターバックスやマクドナルドといった超優良企業も、自社株買いのしすぎで債務超過企業です。
債務超過の米国企業の株価が上がってキャッシュリッチで財務優良な日本企業の株価が下がる理由【DCF法から考える企業価値】
債務超過の優良企業はもともとビジネスでワイド・モートを築いている企業が多く、平時だと問題なく安定的にビジネスが回りますので、債務超過でもキャッシュが枯渇して倒産するといったことは考えにくいです。
ただ、それが有事になると事情が違ってきます。
マクドナルドやスターバックスも世界中の店舗が閉まってしまえば、売上がなくなり平時には入っていたキャッシュが入らなくなってしまいます。
今回の暴落では、平時に株主還元しまくって財務安全性が低くなってしまったアメリカ企業の不安定さが露呈されました。
経営の危機に立っているアメリカの航空会社も新型コロナ・ウイルス流行前は自社株買いでキャッシュを株主に流出させていたみたいです。
COVID-19の感染拡大により、株主還元ばかりしていたアメリカ企業が自社株買いの停止をしているのを見るにつけて、株主にとって1番自社株買いして欲しいのは今なんだよと思わざるを得ません。
株価を買い支えるのはいつなのか?
今でしょ。
1番自社株買いの効果のあるときはいつなのか?
今でしょ。
経済が拡大する好景気の右肩あがりに株価が上昇している時期にはせっせと低金利で借金してでも自社株買いしていたのに、暴落してビジネスに不安が出ると途端に自社株買いをやめるなんて、高値で買って安値で売るセンスのない投資家と同じではないのか。
楽観的な上昇相場で借金してフルインベストメント状態でその後株価が低迷して1番買うべき割安時に何もできないのと一緒です。
株式なんて安値で買って高値で売ればいいだけなのに、アメリカの超一流企業もそれができないようです。
株価が下がっている今こそ、自社株買いのアナウンスをして、自企業の経営は大丈夫だから心配するな、今の株価は割安だから安心して買ってくださいと投資家にしっかりとアピールしなければならないと思うのです。
せっかく暴落で安くなった自企業の株式を買い漁って株主価値を高めることができるのに、絶好のチャンスに現金がなくて何もできないとは、今まで何のために自社株買いをしていたんだろう。
高値でしか自社株買いできないんだったら効率悪すぎて意味ないように思います。
こんな暴落している中、これまで短期目線の機関投資家から使用用途ないなら株主還元しろと言われても気にもとめずに贅沢に溜めていたキャッシュで一気に自社株買いをして株主に報いてくれるイケメンな企業に投資したいものです。
バークシャー・ハサウェイとか14兆円キャッシュ持っているから、もしかしたら投資先の企業を買い漁ると共に自社株買いしていたりして。
株主還元大好きなアメリカ企業とは反対に、日本企業は国民と同じで何かあった時のために現金預金するのが好きな傾向がありますが、こんな時こそ自社株買いすると市場からは好印象を持たれると思います。
今回の暴落で自社株買いして財務基盤が脆弱になっていた企業の経営が傾いていることを機に、今後は有事に備えて現預金を多く持つことも機関投資家から正当化されそうですので、株主総会の想定問答集に以下のようなQ&Aが追加されるかもしれません。
Q:現預金が多いようであるが、どのような目的で保有しているのか?配当や自社株買いで株主還元すれば如何か?
A:COVID-19の感染流行のような有事のさいに不合理に株価が割安になった時に自社株買いをするために現預金を保有している