【映画感想】 「マイ・ボディガード」(原題Man on Fire)~素材は良いものの料理方法が物足らない

(画像はアマゾンHPより)

2004年にアメリカで公開された、デンゼル・ワシントン主演の社会派サスペンス的な若干アクションもありの映画です。

2005年の暑さ残る秋に初めて観た映画です。

ストーリーは引き込まれる端緒はあるのですが、惜しいなといった印象を持つ作品です。

元アメリカ軍人として16年のキャリアがある練達たる人物であるものの、今や軍を辞め希望もなく酒浸りのくそったれとして聖書を愛読書としながら日々を無為に生きている男が、不意なことから、誘拐事件が多発するメキシコの裕福な家庭の少女のボディガードとして雇われ少女との交流を通じて父性が芽生えるも少女が誘拐され、誘拐組織を壊滅させるために奮闘するというあらすじです。

退廃した男が情を取り戻し少女のために闘うという、ど真ん中な設定です。

子役には、トム・クルーズの「宇宙戦争」にも出ているダコタ・ファニングが起用されています。

映画好きの男がなんか面白そうな映画ないかなとレンタル屋にいってパッケージに書かれたこのようなストーリーを見ると、とりあえず借りてみようと思ってしまう要素が詰まったストーリーで、素材自体は良いのですが、どれも展開としてもの足りません。

主人公のバックグラウンドの具体的な描写がほとんどなく、なぜ現在のような酒浸りの終わった生活となったのかといった事情が分からず(描写してあまりに俗っぽくなるのも嫌ですが)、何かあるとすぐに舌で唇をなめる癖のある孤独な男が初めは交流を拒みつつも、「大きくて寂しいクマのよう」と自己を慕い形容する少女に父性を芽生える過程にいまいち没入できません。

見ているこちらとしては2人のやり取りではやく泣きたいのですが、そういう展開にはならず全く泣けません。

少女との交流により、酒を辞め笑顔を見せるようになった男が1番大事なものを奪われ、単騎無双するシーンを待ち構えるのですが、これもそうはならず、誘拐犯人の調査でメキシコ社会の暗く汚い現実が明らかになっていくといった社会派ドラマな展開になってしまいます。

なお主人公に銃や有益な情報を提供するとても優秀なバックオフィスがいるのはお決まりです。

無慈悲な復讐劇としてのアクションシーンはあるにはありますが、とても地味です。

主人公も結構被弾します。なんで松井秀喜がこんなよく知らんピッチャーに三振に取られなければならないんだという残念感とよく似た感覚を味わいます。

この地味なのが本当のリアルだといえばそうかもしれませんが、設定からして少女を救うための派手なファイナルバトルシーンを期待せずにはいられなかったので、到底期待値には及びませんでした。

少女との交流シーンのある前半は2人のやり取りがハートウォーミングでいいのですが、誘拐されてからの後半は、今か今かと待ち構えていた爽快なバトルシーンや胸を打つ感情のやり取りシーンがなく、無駄に誘拐犯特定までの長く憂鬱な絵が展開され、退屈を覚えました。ラストシーンも自分好みではありません。

同じデンゼル・ワシントンなら、「イコライザー」のが面白かったです。

地に足をつけた暗い映画で、悪い映画ではないと思いますが、いい映画だったなという感慨もわきません。

せっかくのいい設定を生かしきれてない惜しい映画だなという感想です。

そういう意味では、見る前から覚悟はしていましたが戦争映画に自分が期待する要素がなく題名負けしていると感じた、去年公開された映画「ダンケルク」との類似性を覚えます。

ダコタ・ファニングの母親役(ラダ・ミッチェル)の妙な艶めかしさ(おそらく意図的にそう描いています)が1番心に残ります。

100点中60点です。

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