12月14日に持ち株の製薬最大手ファイザー(Pfizer)が増配を発表しました。
2019年第1四半期から四半期当たりの1株当たり配当金額を、0.34ドルから0.36ドルへと0.02ドル増額します。
増配率としては5.9%となり、これで2010年以来10年連続増配となります。
ファイザーは同時に、新たな100億ドルの自社株買いを発表しています。以前承認された自社株買いプログラムが並行して走っており、そのプログラムの下でまだ49億ドルの自社株買いが未実施ですので、併せて今後149億ドル規模の自社株買いが実施されることになります。
CEOのコメント和訳を載せます。
「当社は当社事業に自信を深めており、株主の総合的なリターンの最大化に注力する所存です。中でも、配当金による還元は重要要素であり続けます。」
【PFE】30年間(1990年~2019年)の配当金・増配率のデータ
1990年から2019年(2019年は今回の増配を反映した配当金と仮定)の1株当たりの配当金額と増配率を調べました。
増配率は当年の配当金額を前年の配当金額で割って算出していますので、必ずしも四半期ベースでの1株当たり配当金の増配率(減配率)と一致しない場合があります。
ファイザーは過去幾度か株式分割等を実施していますが、それらを調整済みの数字です。
以下データを羅列します。
西暦 | 1株当たり配当金 | 増配率 |
1990 | 0.1 | NA |
1991 | 0.11 | 10.0% |
1992 | 0.12 | 12.0% |
1993 | 0.14 | 13.6% |
1994 | 0.16 | 12.0% |
1995 | 0.17 | 10.5% |
1996 | 0.2 | 15.4% |
1997 | 0.23 | 13.4% |
1998 | 0.25 | 11.6% |
1999 | 0.31 | 21.1% |
2000 | 0.36 | 17.4% |
2001 | 0.44 | 22.2% |
2002 | 0.52 | 18.2% |
2003 | 0.6 | 15.4% |
2004 | 0.68 | 13.3% |
2005 | 0.76 | 11.8% |
2006 | 0.96 | 26.3% |
2007 | 1.16 | 20.8% |
2008 | 1.28 | 10.3% |
2009 | 0.8 | -37.5% |
2010 | 0.72 | -10.0% |
2011 | 0.8 | 11.1% |
2012 | 0.88 | 10.0% |
2013 | 0.96 | 9.1% |
2014 | 1.04 | 8.3% |
2015 | 1.12 | 7.7% |
2016 | 1.2 | 7.1% |
2017 | 1.28 | 6.7% |
2018 | 1.36 | 6.3% |
2019 | 1.44 | 5.9% |
【PFE】30年間(1990年~2019年)の配当金推移
1990年から2019年の30年間の1株当たり配当金額の推移をグラフにしました。
1990年当時0.1ドルだった配当金は、30年後の2019年には1.44ドルと14.4倍にまで増加しています。
ただグラフを見ればわかりますが、ファイザーは減配した歴史があります。
1990年から2008年まではずっと増配が続いていますが、2009年に配当金が減額されています。
年間ベースの金額だと2010年も減配です。
2011年からは再び配当金額は増額されています。
【PFE】29年間(1991年~2019年)の増配率(減配率)の推移
1991年から2019年の29年間の増配率(減配率)の推移のグラフです。
グラフを見ると、2009年の減配が殊更目立ちます。
1991年から減配前の2008年までの平均増配率は15.3%と非常に高い数値でした。すべて二桁増配を記録しています。
年間ベースでは2009年と2010年に減配していますが、四半期ベースの減配は2009年のみで、2010年は減配していません。
1991年から2019年の29年間の増配率の平均値は10.4%です。
1990年当時の配当金が、2019年には14.4倍になる計算です。
2010年から2019年の10年間の平均増配率は6.2%、2015年から2019年の直近5年の増配率は6.7%となります。
データを見るとわかるのですが、ファイザーは2011年の増配から最新の2019年増配まで、1株当たり年間配当金額を0.08ドル(四半期ベースだと0.02ドル)増配を続けています。
そのため、増配率は徐々に減少しています。
直近2019年の増配率は5.9%なので、過去29年平均・過去10年平均・過去5年平均増配率のいずれの数字も下回っています。
もう7年間二桁増配からは遠ざかっている状況です。
ワイス社の買収により50%減配の歴史
ファイザーは2009年に四半期ベースで50%の減配をしています。
グラフの増配率(減配率)の数字は当年の1年間の配当金額を前年の1年間の配当金額の数字で割って算出していますので、厳密に四半期配当金額ベースでの増配率(減配率)に一致しない場合があります。
2009年はグラフではマイナス37.5%という数字ですが、四半期ベースでの実際の減配率はマイナス50%となります。
減配の理由は、当時世界第9位の大手製薬会社だった米国ワイス社を680億ドル(当時のドル円レートで約6兆円)で買収したためです。
当時のファイザーの売上高が世界トップの444億ドル、9位のワイス社が186億ドルという規模でした。
高脂血症治療薬の大型新薬「リピトール」の特許切れが間近に迫っていることに加え、期待された「トルセトラビブ」が開発中止に追い込まれていた状態で、ワイス社買収によりバイオ医薬品市場のシェアを高め同時に新興国市場での売上を高めることが目的でした。
そのため、業績悪化による減配というよりは、買収による攻めの経営による減配という歴史になります。
配当金だけ増額して業績がジリ貧になって株価が下がるよりは、攻めの経営をしてもらって当たって砕けてもらったほうが後悔がないので、減配は痛いですが致し方ない理由なのかなと思います。
買収前の1株あたり年間配当金額1.28ドルに減配後並んだのが2017年、1.28ドルを超えたのが翌2018年ですから、減配前の元の金額に戻るまでに9年、減配前の配当金額を超えるのにちょうど10年かかったことになります。
株主としては、10年はとても長いですね。
買収当時圧倒的規模での世界第1位の製薬会社となったのですから、当時自分が株主だったらもう少し早く超えてもらう期待をしてしまうと思います。
製薬トップのファイザーでさえ減配するのですから、配当金狙いで投資をする場合には、少数特定の銘柄に配当金を依存せず分散投資を行い、各銘柄に配当金を分散させる重要性がわかります。
【PFE】10年間(2008年~2017年)の配当性向の推移
2008年から2017年の10年間の配当性向の推移グラフです。
数字はMorningstar社のHPからとっています。
配当性向の数字は安定していません。
60%くらいで安定してくれればよいのでしょうが、医薬セクターは業績の上下変動が激しいのでそんなに安定しているのはジョンソン・アンド・ジョンソンくらいでしょう。
2008年から2017年の10年間の配当性向の平均値は77.8%です。
直近10年で100%を超えたことが2回あります。
総じて配当性向に余裕があるとはいえないので、業績が伸びないことには増配余地は狭まっていく状態です。
【PFE】現在のバリュエーション
ファイザーの株価パフォーマンスは好調です。
2018年は年初来で20%株価が上昇しており、現在の株価は43.8ドル、配当利回りは3.29%となっています。
株価の上昇が続いていますが、配当利回りは3%以上を維持しており、まだまだ高配当銘柄です。
ヘルスケアセクターで投資を考える場合には、ジョンソン・アンド・ジョンソンと並んで筆頭候補に挙がる銘柄と思います。
僕はマイポートフォリオ全体の増配率5%は維持したいと考えており、ファイザーには最低ノルマとして5%の増配の維持を期待しています。とはいってもまた巨額買収を発表して50%減配になっても、売ることはないと思います。
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